034 森の恵みの収穫
朝霧が辺りを包んでいる。懐かしいな。そんなに経っていないのに。アカ、もう少し霧が薄れるまで待とう。
霧が霽れてきて日が射してきた。
「皆んな朝だよ」
アカが小さくなる。皆んなの顔に朝霧が触れ、びっくりして起きた。
皆んな世界樹に朝の挨拶をしている。
「マリアさん、この世界に来て、初めてこの里芋の葉っぱに溜まった朝霧の水を飲んだんです。美味しいですよ」
「本当だ。冷たいし美味しい」
皆んなも飲んでいる。
「今日はこの森の恵みをいただこうね。果樹園、野菜畑、岩塩、穀物畑があるから、回って収納させてもらおうね。まず里芋を掘っていこう。それから果樹園で朝食にしよう」
「はい」
もうブランコもエスポーサもドラちゃんも掘っているよ。前足で土を掻き分け、里芋を収納してゆく。上手だね。株は少し残しておくんだよ。残しておけばすぐ復活するからね。
さて掘るか。相棒の出番だよ。マリアさん用にはクワを作った。使ってもらう。
一時間くらい掘ったよ。十分だろう。
「みんな次行くよ。昨日の果樹園だよ。ヨーイドンだよ」
速いね。あっという間に見えなくなった。アカとゆっくり走ってゆく。
果樹園に着いた。みんな待っててくれた。
「じゃ収穫しようね。高いところは飛びつくかドラちゃんに落としてもらいな。柔らかい実もあるからね。気をつけてね。木は丸坊主にしないでね。実は少し残しておくんだよ」
ここも一時間。
「みんな収穫したかい。次行くよ。足らなかったらまた来ようね。アカ、野菜畑に案内してね」
アカを先頭に野菜畑に向かう。
野菜、えーーー。ブランコが言っている。好き嫌いしないのとエスポーサに怒られた。奥さんじゃなくてまるで母親だね。もう反抗できないんじゃないか。
野菜畑に着いた。
「ブランコもちゃんと収穫するんだよ。初め」
小言を言われながらブランコが収穫している。
ここも一時間。
「アカ、次は岩塩だよ」
岩塩?とブランコが言う。
「しょっぱい塩が塊になってあるんだよ。たまにしょっぱいものを舐めたくなるだろう。あれが塩だよ。もっと美味しい」
岩塩の鉱脈?についた。薄いピンク色、透明なもの、黒っぽいもの、色々ある。サラサラなものもある。
「そんなに多くなくてもいいから収納しておいてね。人は必要としているから売れるし、美味しいものと交換もできるよ」
俄然ブランコがやる気になった。
ここも一時間。
「次は穀物畑だよ」
穀物?ブランコが聞いて来る。
小麦とかお米とかとうもろこしとかだよ。
ふうん。ブランコはまたまた乗り気ではない様だ。
パンは好きかい?肉が挟んであったりして美味しいね。その材料などだよ。
あ、またやる気になった。面白い。
ここも1時間。
「さて、森の恵みの収穫は終わったので世界樹に挨拶して出ようね」
「アカ、世界樹まで頼む」
アカは迷わず歩いて行くね。みんなも迷わない様についてきてね。
世界樹の広場に戻って世界樹に触って出発の挨拶だ。
「行ってきます」
『いつでも戻ってらっしゃい。良い旅を!』
「ありがとうね。またね」、「ワン」、「行って参ります」、「ウオン」、「ウオン」、「キュ」。
里芋広場を出るところで振り返って手を振る。枝葉がさやさやと揺れている。
「よし、泉まで行くよ。駆け足」
思いっきり駆ける。風が気持ちいい、巨樹をステップしてかわして駆ける。あっという間に泉についた。アカと僕は泉の水を収納。使ってないからちっとも減っていないんだけど水筒に足しておく。皆んなは水を飲んでいる。随分日が経ったのでエチゼンヤさんが心配しているといけないね。気がせく。
果樹園まで走る。間もなく果樹園に着いた。みんなも早い。果樹を食べてすぐ出発。
「次は泉の末が森から出る寸前のところまで駆け足だ。アカについて行ってね。ヨーイドン」
やっぱりいいな。森の中の駆け足。アカ、ブランコ、エスポーサは四肢で地面をけって筋肉が躍動しているね。マリアさんも速い。全然遅れず余裕で走っている。あれちゃっかりアカに乗っている。ドラちゃんが。まあいいか。末っ子だし。
すぐ森を出る寸前の川岸まで着いた。
「じゃ森を出る前にこの川の水を水筒に収納して。ブランコとエスポーサは水筒に追加してね。マリアさんはこの水筒に水を汲んでください。ドラちゃんもね。この川の水は外の世界に持って行くとエリクサーという万能薬よりはるかに強力な万能薬になる。だからここにいる家族だけはそのまま使えるけど、外の世界の人にそのまま与えると死んでしまう。たまに死なないのもいるけど。ドラちゃんみたいにね。でもポタポタだったな」
この前刺した棒がまだ残っているね。みんなの水筒を縛り付けておいて休憩。お昼にしようかね。皿を出し買っておいたパンを出した。串焼きも出す。
「マリアさん、串焼きをバラしてパンに挟んでくれませんか」
マリアさんが手早く挟んでくれる。待て待てブランコ。よだれが垂れている。
「よし出来た。食べよう。いただきます」
美味しいかい。ブランコ、このパンの材料が小麦だよ。今朝収穫しただろう。
収穫して良かったって、そうだよね。料理すれば美味しくなるんだ。
どれ、川の中の水筒を引き上げようかね。まだ吸い込んでいるけど、大量に入っただろう。また次回だ。みんなに水筒を渡して出発。
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