033 世界樹との対話
翌朝、毛布はかかってない。アカ、マリアさん、エスポーサは寝る前と同じ位置。アカが起きた?ってペロペロしてくる。ブランコはまたまた少し離れたところで寝ている。また邪険にされたのかね。ドラちゃんはヘソ天でお腹の上だ。
「起きるよ。今日は朝食後、果樹園まで歩いて行くよ」
アカが先頭で道案内だ。ブランコとドラちゃんが追っかけっこ始めた。昨日は緊張して離れなかったのだけど、今日は巨樹の森が安全だと分かったみたいだ。あんまり離れるんじゃないよ。迷子になるよ。巨樹の森は慣れないと全く同じに見えるからね。
一時間ほど歩いて振り返るとブランコとドラちゃんがいない。呼んでも来ない。迷子になったようだ。やれやれと言う顔をしてエスポーサが探しに行く。しばらく待っているとエスポーサを先頭にブランコとドラちゃんがしおしおとやって来る。お説教されたようだ。よしよししてやると少し持ち直す。ブランコに、なんで匂いを辿ってこなかったのと聞くと、あっと言う顔をして萎れる。可愛いね。撫でてやるよ。もちろん。
「さて揃ったからまた歩いて行くよ」
ドラちゃんはアカの背中に乗っている。安全地帯を見つけたようだ。中々要領がいい。ブランコはエスポーサの監視下だよ。頭を下げ、尻尾を垂れて歩っている。時々瀬音が聞こえる。生き物がいないから聞こえるのは、木々のそよめきと瀬音だけだ。時々空が見えたり、谷川が見える。
途中昼食を挟んで果樹園に着いた。今日は15キロ歩いたかな。みんなに好きなものを食べてもらう。高い所はドラちゃんが取ってやっている。
お腹一杯になった所でお風呂に入って横になる。今日はテント無し。みんなで月が出ている満天の星空を眺める。小さい宝石をばら撒いたような空だ。
あ、ブランコ、手を伸ばしても取れないからね。流石にドラちゃんもあきれている。キラキラが好きみたいだから、宝石をブランコ、エスポーサ、ドラちゃんのアンクレットに入れておこう。エチゼンヤさんに見せたキラキラクズ石でいいね。小さいと扱いが面倒そうだから少し大きいのにしてやろう。マリアさんには各種詰め合わせ宝石セットだ。
ブランコ、アンクレットにキラキラ石をいれたよ。見てごらん。人に見せちゃダメだよ。みんなにも入れておいたよ。
みんな出しているね。三人で交換会を始めた。好みがあるみたいだ。
「マリアさんにも入れておきました」
マリアさん、宝石を出して固まっているよ。
「こんな、これでは国がいくつも買えてしまいます。とても貰えません」
「いいの、いいの。たくさんあるんだから。使わなくたっていいんだから」
「じゃ預かっておきます」
交換会はまだやってるね。アカとマリアさんと先に寝てしまおう。今日も頭の中はピンクなのだけど、11歳に足を引っ張られてすぐ寝落ちしてしまう。
朝になった。三人は眠そうだよ。遅くまで交換会をやっていたの?そう。足らなかったらやるけど。十分だって。じゃリンゴを食べ泉まで行くよ。少しランニングして行こうか。
「マリアさん、今日は泉に寄って中心まで行きたいので少しランニングして行きます」
アカがゆっくりかけ始める。ランニングも楽しいね。ブランコも今日はエスポーサと一緒だ。ドラちゃんはアカの背中、エスポーサの背中と交代で乗っている。世渡り上手だ。
程なく泉に着いた。10キロくらいあったかな。
みんな、あと少しだから沐浴していこう。
ブランコが飛び込んだ。こら、小さくなるんだよ。エスポーサはそつなく小さくなって泉に入った。ドラちゃんは頭からザブンだ。服を脱いでトランクスを履いたよ。マリアさんがいるからね。マリアさんも服を脱いで下着姿になってニコニコと近づいてくる。あれは水着だ。水着と35歳に言い聞かせる。
泉の縁にそってソロソロと距離を取る。
「大きくなってもいいんですよ」
マリアさんの後ろではドラちゃんとブランコがいつもの通りザバザバザブンとやってるね。あ、ドラちゃんがマリアさんの背中にぶつかった。ハズレた。
白い胸がぶっつかって来た。目がまわるーー。
「ごめんなさいね」
ゆっくりとブラをつける。残念な気持ちが顔に出ていたのだろう。
アカが頑張ればいいのにと言っている。エスポーサよ、それはブランコを見る目付きだよ。ブランコとドラちゃんは何?って言う顔をしている。お前たちはいい子だ。
「先があるからもう上がるよ」
服をじゃぶじゃぶと洗ってパッパと振ると乾く。優秀だね。世界樹製は。
マリアさんが濡れた下着をゆっくりと、見ませんよ。見ないよ。トランクスだけ汚れ飛んでけ、水分飛んでけ。乾いた。
「私のもやってもらえます?」
マリアさんが服を差し出す。
「もちろん」
汚れ飛んでけ、水分飛んでけ。乾きましたよ。マリアさん見せびらかす様にゆっくり畳まないでください。
みんなに汚れ飛んでけ、水分とんでけとやる。綺麗になったよ。マリアさんにもやったよ。
「それじゃ、アカ、世界樹のところまでゆっくり走っていこう」
すぐ巨樹が切れ里芋畑になる。葉っぱをかき分けて世界樹の元へ。
ここに初めてきたマリアさん、ブランコ、エスポーサ、ドラちゃんは世界樹を見上げて呆然としている。梢が見えないもんね。
「ここが僕とアカがこの世界に出現した場所だよ」
ブランコは地面の匂いをかいているよ。ちょっとおバカだけど鋭いところもあるからね。何か感じるものがあるのかもしれない。
『シン、皆んなに触ってもらって』
「マリアさん、ブランコ、エスポーサ、ドラちゃん、世界樹に触って。世界樹が話をしたいそうだよ」
皆んな緊張して世界樹に触れた。
『マリア、ブランコ、エスポーサ、ハイヤーはドラちゃんね。いつもシンとアカと一緒にいてくれてありがとう。シンとアカは私が外の世界から呼んだの。これから数万年は私と共に生きるわ。シンとアカは、私と違いこの巨樹の森がある大地の外に出るわ。外の世界に出た時、友達ができても長くて5、60年しか一緒にいられない。数々の別れに耐えられなくなってしまう。みんなはもし良かったらシンとアカと一緒にいてくれない?シンとアカが寂しくない様に。勝手なお願いだけどどうかしら?』
「私はシン様とアカ様が良いなら、もとよりずっと一緒の気持ちでした。そんなに長いとは思いもしませんでしたが」
「ウオン」、「ウオン」、「キュ」
『ありがとうね。あなたたちのバングルやアンクレットの内側には、“世界樹とシンとアカと共に生きん”と彫ってあるのよ。だからそれをつけた時には承諾ということになっているのよ。ごめんね、言わなくって』
「やっぱり。何か彫ってあると思っていました。でも“世界樹とシンとアカと共に生きん”て書いてあってとても嬉しいです」
「ウオン」、「ウオン」、「キュ」
『ブランコ、エスポーサ、ドラちゃんもありがとうね。お礼をしましょうね。』
マリアさん、ブランコ、エスポーサ、ドラちゃんの体が輝いた。
『この森の食べ物は完全食よ。ただ外の世界の生き物には強すぎて死の食べ物だわ。あなたたちの体の組成を今変えたから外で食べても大丈夫よ。シンとアカに聞いて収納して行きなさい。ただ泉の水だけはシンとアカ以外、外の世界に持ち出せないし使えないわ』
「わかりました。ありがとうございます」、「ウオン」、「ウオン」、「キュ」
『もう一つお礼をしましょうね。これはブランコ、エスポーサ、ドラちゃんね。外の世界に戻ったら「人化」と心の中で唱えてみてね』
「ウオン」、「ウオン」、「キュ」
『今日は私の元で泊まって行ってね。じゃみんなの幸せを願っているわ』
マリアさんとブランコ、エスポーサ、ドラちゃんは座り込んだ。世界樹との接続が切れた様だ。
「私たちは数万年シン様とアカ様と一緒にいられるってこと?」
「そうだね。お願いできる?」
「それはもちろん喜んで。ブランコもエスポーサもドラちゃんもそうよ」
ウオン、ウオン、キュ。
「よかった」
みんながアカと僕に抱きついてきた。頭も体も芯から疲れた様だ。数万年の話だもんね。ゆっくり休もうね。アカが大きくなってみんなを包んだ。おやすみ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます