011 狼くん二頭が仲間になった

 朝起きてみると何匹か獣が献上されている。首を噛んで完全ではないが一応血抜きはした様だ。


 献上されたら誉めねばならない。よしよしと撫でてやる。今朝はお前たちがとったものを食べよう。えらいえらい。


 昨日と同じ。解体して内臓は狼に与える。美味しいのかね。喜んで食べているよ。その間にフライパンで肉を焼く。血抜きが不完全で少し血が残っていたので、血は飛んで行けというと血がなくなった。ええ、これはどうなっているんか。まあいいか。お、焼けた。今日は最初に4枚焼いたよ。2枚は狼くん、あとはアカと自分。今日もまずまずの味。狼くんは美味しそうに食べている。


 今日は森を抜けたいね。アカがワンと返事する。狼くんはしっぽを振っている。困ったね。ついてくる気満々だ。


 泉で口を濯いで、さて今日も駆け足。今日は少しスピードを上げる。進路にいた獣は倒して収納していく。


 お、狼くんは見えなくなった。さすがについてこられない様だ。昼までかけ通した。


 川を探し昼食にする。フライパンで今朝解体した残りを焼く。狼くんの献上品だ。


 アカと食べているとハッハッと息を荒げ狼くんがやって来た。なにか咥えているよ。お土産か。誉めてやらねばなるまい。


 お疲れの様だ。しょうがない。谷川の水を数滴やろう。水筒を出すと、あれ覚えているよ。口を上に向けて待っている。ポタポタと数滴ずつ二匹に垂らしてやる。あれまた光って少し大きくなった。色も真っ白になった。荒い息も治った。


 肉食べるの?そうかい。じゃ焼いてやろう。肉を厚切りにして2枚焼く。献上品の鶏の様なものは収納しておく。


 少し休んで出発する。午前と同じスピードだ。しばらくして振り返るとあれ狼くんがついて来る。息も切らさない。ううむ谷川の水で進化したのか。これではうっかり谷川の水も出せないな。


 世界樹さんの話では谷川の水はエリクサー並みと言う事であったが、並の範囲が広すぎるのかも知れない。ひょっとして狼くんは強エリクサーに耐えられるほど強かったのかね。生き残ったんだから判断力は他の狼よりも良かったとは言えるけど。


 考えながら走っていると突然明るくなった。森から出た。目の前に草原が広がる。意外と早かったね。


 これから人でもいるといけないからアカに小さくなってもらった。いつもの柴犬サイズだ。あれ、狼くんが二頭とも一生懸命小さくなろうとしているよ。親分より大きいとまずいみたいだ。いいとこあるね。


 アカがポンと狼くんに飛び乗った。狼くん嬉しそう。いいの?馬は主人より大きいって。狼くんはアカの馬なの。そうなの。アカ親分なの?貢物を貰ったしうい奴だって。それはそうだな。


 え、狼くん俺が大親分なの?尻尾を振っているよ。そうなの。それじゃ名前をつけようかい。シロでどう?親分と同じような名付けで遠慮したいってか。律儀だね。じゃブランコはどう。良いって。よしよし君は今日からブランコだ。光ったね。

 

 奥さんの方はエスポーサだ。お、"奥さん"てブランコが照れてる。あ、エスポーサに頭をポンされた。尻に敷かれるのね。家内安全だろう。よしよし、奥さん、君はエスポーサだ。奥さんも光った。名付けると光るらしい。


 え、アカと同じ様な首輪が欲しいの?アンクレットも?それじゃ蔦を探してくれる?バビューーンと二頭が森へと走って行った。

 

 ここの蔦でもできるかな。あ、とってきた。口一杯に咥えているよ。欲しかったのね。作ってみよう。二頭は番のようだから一本の蔦から首輪を作ろう。アカの時の経験があるから簡単。作って伸び縮みするよう願ってアカの収納袋に入れる。

 

 アンクレットの収納袋は出来るかな。一応作って伸び縮みするよう願ってアカに預かってもらう。明日が楽しみだ。なんとなく出来そうな気がする。


 じゃ行こう。あれ、アカが拗ねてる。一番初めに名付けただろうに。収納袋とアンクレットだって神具と言っていい出来なのに。うーーん。じゃ大きくなって乗せてくれる。機嫌が直った。レッツゴー。


 アカより半馬身下がって両脇をブランコとエスポーサが走る。鉄壁のフォーメーションだね。負ける気がしない。アカの上は眺めがいいし両脇にはブランコとエスポーサ。安定している陣形だな。走るのは楽しいね。


 街道に突き当たった。東西に走る街道だ。東に行ってみよう。三頭で街道を爆走する。街道は草原と違って狭いから、ブランコが前、次はアカ、殿はエスポーサだ。


 遠くに馬車が一台見える。みるみる近づく。あれ、護衛の人がこっちを向いて盾を構えているよ。獣が突進してきて突っ込まれると思っているんだろう。馬車を飛び越すよ。いけーー。三頭とも軽々と馬車を飛び越した。


 アカは当然だけど、ブランコとエスポーサもすごいね。後は二頭の戦闘力を確かめる必要があるね。何かいないかな。


 しばらく走ると馬車が獣に襲われているのが見えてきた。馬車の周りの護衛の人が苦戦しているようだ。20数頭の人型の獣、熊より少し小さいが武器を持っているよ。


 護衛だろうか。馬車の周りに4人いる。一人腕を押さえて倒れているね。3人が獣と切り結んでいるが護衛のほうが少数で劣勢だ。数頭で一人を取り囲んで攻撃している。少しは知恵があるみたいだ。


 近づいて行く。おっと、獣も護衛の人もびっくりして手が止まっている。聞いてみよう。

 「手助け要りますか?」

 「頼む」

 「承知。ブランコ、エスポーサ、獣をやってしまえ。人間はやったらだめだよ」


 ウォーンと吠えて獣に向け走っていく。


 ブランコが獣の首に噛みついて頭を振る。あれ首がちぎれ頭が飛んだ。


 エスポーサが腕に嚙みついてグルグルと振りまわす。獣が武器を持っているから武器付きの風車だ。周りの獣は振り回された仲間の武器に切り飛ばされ、武器が壊れた後は振り回された胴体にぶつかり飛んでいく。最後は腕が抜けて飛んでった。ペッと腕を吐き出した。グロいね。あっという間に獣は全滅した。


 ブランコとエスポーサは仲良く毛づくろい始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る