010 下界に降り下界の森を行く

 巨樹の森を見ると霧に覆われた巨樹の森の外側を普通の木が緩衝地帯のように丸く取り囲んで生えているのがわかる。


 崖下を見ると昨日同様、はるか下に雲が浮かび翼竜が飛んでいる。ここは雲も翼竜も上がってこられない高さなのだろう。テーブルマウンテンの超高地版か。


 雲が上がってこられないのに霧が発生するのは不思議だが世界樹さんが調整したそういう世界なのだろう。


 勝手に納得して崖を降りることにする。どうするかね。少し凸凹があるからうまく手足を使って降りられるだろう。アカは爪があるからね。アカは少し大きくなった。崖をアカと降り始める。ボルタリングの崖降りだ。指を崖に叩きつけると岩に穴が開くことがわかった。柔かいのかな。わからん。


 翼竜が飛んでいる高さまで降りて来た。おっと翼竜が近づいてくる。これに乗って降りるかな。翼竜がギエーと鳴きながら近づいてくる。餌だと思ったのか。


 こんなろうと睨みつけ、アカがウーー、ワンと吠えると目を回して落ちてゆく。あれまずい。もっと優しくしなければいけない。アカと反省する。


 墜落翼竜の隣にいた翼竜が逃げようとしているよ。アカ飛び移るよと言ってアカと飛び移った。


 翼竜はびっくり仰天したみたい。アクロバット飛行を始めた。しっかり捕まっているから落ちないんだけど。アカも落ちない。爪を立てている様には見えないけど余裕で乗っている。不思議だ。これ顎の下を掻くんじゃない。ちゃんとつかまってね。え、くっつけと念じればいいの?どれ、くっつけ。なるほど手を離しても落ちないね。リンゴでも食べる?アカと半分ずつ食べる。あれ翼竜さん、そんな恨みがましい目で見なくともいいじゃないか。前を見てないと危ないよ。


 翼竜はアクロバット飛行をしていたが息が荒くなって来た。下まで降りれば何もしないよと首筋を撫でてなる。なんとなく通じたみたい。


 こんな変な客は早く下ろして逃げるほうが良いと思ったのか下の森目指して下降して行く。木が近くなったのでアカ飛び降りるよと言って二人で飛び降りた。飛び降りる時ありがとうと翼竜を撫でた。翼竜は涙目で震えていた。そしてギャーと泣いて全速力で逃げていった。ヒトゴロシーだって。ひどいね、でも乗車賃はいらないみたい。許そう。


 木はそんなに高くなかった。100メートルはなかったようだ。地上に無事降り立った。ポンと飛び跳ねて着地したような感触だ。こんなことなら崖の上から飛び降りても大丈夫だったんじゃないかと思った。今度やってみよう。アカがウンウンと言っている。


 崖の反対側に進めば良いんだね。初めての下界の森だから、ゆっくり行こう。何か襲って来たら捕まえて食べるか収納しよう。街で売れるかも知れないからね。おっとさっき落ちた翼竜がお陀仏している。収納しておこう。


 ドカドカと足音が聞こえる。トカゲだね。だけどデカい。全長20メートルくらいかね。顔つきが悪い。俺の翼竜がとか思っているらしい。違うだろう。


 アカが飛びついて前足で頭を叩いた。崖にぶつかってドウと倒れてしまった。痙攣しているよ。弱い。あ、死んだ。解体するのが面倒。しまっておこう。アカ収納して。アカは器用に牙で収納袋の口を開け収納する。


 あれ、オオトカゲがぶつかった崖がキラキラ光っている。なんだろう。よく見るとダイヤモンドだとわかった。アカと二人で掘ってみる。大きいな。人間の頭くらいだよ。どうするんだこれ。指輪にも出来ない。いくつも出てくるよ。困ったね。一応収納した。収納袋の肥やしだな。


 あんまり大きいのばかりでも困るから脇を掘ってみる。


 赤ちゃんの握り拳くらいのダイヤモンドがゴロゴロしている。まあ使えるか。収納した。


 アカの方は色々な石が出てきた。宝石だね。宝石だけでダンプカーそれも鉱山で使うようなダンプ何台分もある。


 その隣を掘ると鉄や銅、錫、亜鉛、マンガン、クロム、ニッケル、モリブデン、タングステン、コバルトなどなど、なんでも出てくる。これも収納する。


 しれっと金、銀、オリハルコン、ヒヒイロカネも続々出てくる。


 金属は宝石よりずっと多い。収納した分で鉱山ダンプ十数台あるだろう。それも純度100%だ。不純物を取り除く必要もない。わからないが精製が必要な鉱石にするとダンプ数千台分じゃないか。


 宝石も鉱石もまだまだ埋蔵されているけど飽きたね。必要ならまた掘りに来よう。アカと半分こしたいな。アカの収納袋と自分の収納袋を触って、今日掘ったもの半分こと願ったら、鉱石が行ったり来たりして半分こになった。便利。


 一泊して出発する。崖は元に戻ってたよ。アカ、ここを覚えておこうね。ワンと答えた。

 

 しばらく行くとドカドカ足音が聞こえて来た。またオオトカゲだ。アカ今度はやらせてねと言ってアカの真似をして、頭に飛びかかってパンチする。ドコーーンと音がして倒れた。こいつも痙攣している。すぐ死んだ。全く根性がない。収納する。


 少し歩みを早める。何かいるのはわかるが寄ってこない。そうか戦闘モードになったから怖いのか。よし、平常心、平常心。アカも平常心だよ。うん、気配も薄くなった様だ。何か来るかな。


 ほら来た。今度はなんだ。四つ足のでかいのだ。猪かね。三頭向かって突進して来た。足で蹴飛ばしてみる。頭が爆散した。汚い。


 アカ、手加減、手加減。アカが軽く前足を出す。ゴーーンと頭が鳴りバタッと倒れた。上手だね。


 おっと残りの一頭が後退り始めた。ダメだよお友達を残して逃げちゃ。ポンと頭を手で叩く。バタッと倒れる。上手くいった。爆散しなかった。それぞれ収納する。


 頭が爆散した猪は、ささっと解体して美味しそうな肉をしまい、残りはアカに穴を掘ってもらって埋めた。


 狩れるものはみんな狩っていこうとアカと狩をしながら駆けて行く。


 おっとでかい狼だ。群れている。面倒になったから駆け足で突っ切ろうと突っ込んでいくと与しやすしとみたか襲ってくる。


 そうかいそうかい。雉も鳴かずば撃たれまいだよとアカと倒して回って収納した。爆散させずに倒すのが上手になった。


 二匹しっぽを股の間に挟んで腹を上に向けて降参のポーズをした。降参したものをいたぶる趣味はない。よしよしと腹を撫ぜるとジョロジョロと失禁した。


 可哀想になったね。谷川の水を振る舞ってやろう。水筒から口に数滴垂らしてやる。おお、二匹とも光って少し大きくなった。オスとメスか。番だろうな。起き上がりクーーンクーーンと鳴きながら体を自分とアカに擦り付ける。そうかよしよしと撫でてやる。アカはペロペロしてやる。嬉しそうだ。


 「じゃ元気でな」と言って先に進む。あれ後をついてくる。まあいいかそのうち去って行くだろう。出てくる獣を倒して収納、倒して収納して行くと泉があった。今日はここで野宿することにした。


 泉で沐浴して、いつもの様に服を洗った。アカも飛び込んだ。


 そうだ。普通の水も必要かもね。空の水筒を出して泉の水を汲む。水筒が渦を巻いて水を吸い込む。いつもの通り吸い込みっぱなしだ。


 今日の夕食は猪にするかな。最初に倒した猪は大きすぎるから、後に倒した小さい猪を出す。蔦で足を縛り木に吊るし、首を切り血抜きをする。血の流れが止まったので木からおろして解体だ。腹を裂き内臓を取り出す。


 あれさっきの狼が欲しそうな顔をしてこっちを見ている。欲しいかと言うとしっぽを振り近づいて来たので内臓を進呈する。二匹でバクバク食べているよ。


 アカは文化度が違うので欲しそうにしない。早く焼けって。待ってろ。枝を集めてまた串焼きだと思ったら、思い出した。フライパンを出す。


 肉を1センチ厚くらいに切って岩塩を振りかけフライパンで焼く。焼き上がったので皿を出し、アカと食べる。まずまずだね。


 え、狼くん、君たちも欲しいの?待ってろ今焼いてやる。こっちは塩はいらないだろう。肉を2枚焼いて、草の葉の上に乗せてやる。あっという間に食べ終わった。え、まだ食べるの?少し厚めに2枚焼いて葉の上に乗せてやる。自分とアカはトマトだ。


 食べ終わって寝ることにする。いつもの様にアカが横になってアカにくるまって眠る。狼は少し離れたところで寝る様だ。丸くなる。


 夜中に狼が動き出す。近寄って来た獣を倒しにいったみたいだ。狼の圧勝だね。心配ない様だ。あれ、狼を飼っているわけじゃないけど。多少気にしながら眠る。アカは何にも言わないので狼に任せておけば良いんだろう。

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