008 アカが何かの実を植えたら木が生えた

23日目

 朝起きたら目の前に何かの実が転がっている。昨日はなかった。


 アカがクンクンする。起きたので柴犬サイズだ。あ、口に咥えた。トコトコと広場の中心に行った。


 何をするのか見ていると前足で穴を掘り始めた。少し掘ったら口に咥えた種を穴の中にポイして土をかけ始めた。植えたんだよね。じゃお水をかけよう。水筒を出して芽出ろ、芽出ろと言いながらたっぷり水をやる。


 朝のミーティングだ。アカとだけど。


 「今日は谷川の河原で厨房用品を作ります。それとアカ用の収納袋を作ります。水筒もね。巨樹の森からは出ないことにします。まず巨樹の森を探検します。意義ありませんか?」

 「ワン」

 「意義ないようですので方針は決定しました。では早速河原まで行きましょう」

 アカに大きくなってもらって谷川までかけてもらう。少し遠いからね。


 河原について鍋を収納袋から出す。ステンレスのような光沢を持った鍋に仕上がっている。ツルも金属になっている。


 ええっと何だか違和感がある。あ、蓋がない。鍋は蓋がおさまるように縁に近いところに段がある。急いで昨日切った石をスライスして蓋を作る。ツマミは水筒の栓の様に蓋に穴を開けて棒状に作った石材を嵌め込んだ。つまみがポコっと出ている。鍋に出来た蓋をして収納する。


 次はアカの収納袋を作ろう。前と同じ。ざっくり編んだ。これを首に吊るすとぶらぶらするね。失敗。自分の予備にしよう。予備をいくつか作っておこう。


 アカの収納袋は細長く作って前脚に巻くようにしよう。ぶらぶらしないし口を横につければ牙で引っ掛けて開けられるだろう。自分で出し入れできるね。


 ついでに首輪を作ろう。乗せてもらう時掴まれるようにしよう。痛くないように前の部分は幅広にしよう。蔦を編んでざっくりと作る。袋も首輪もアカの変身に合わせて伸縮できる様にと念じながら収納袋に収納する。明日が楽しみだ。


 次はフライパン。鍋もいくつかサイズを変えて作っておこう。うんできた。だんだん手際が良くなる。ボウルも何種類か作る。トレーも作ろう。四角いのや丸いのをサイズを変えて幾つか作る。ザルはどうしようか。針金のメッシュのザルを作るのはちと難しい。パンチングボールにしよう。それからおたまを作る。杓子は竹で作ろう。箸も竹だ。スプーン、フォーク、ナイフなども作る。カトラリー一式だ。カップも作ろう。コップ、グラスも何種類か作ろう。多分頼めば透明になりそうな気がする。慣れて来たので作業効率が上がってほぼ思いつくものは作った。まな板は竹を接いで作ろう。


 次は包丁か、あれ相棒がぶるぶるして嫌がっている。だって包丁だよ。お前さんでは台所で使うには長すぎないかい?え、やだって、短くなれるってか。ほんとだ。短くなった。自分が料理する時はお前さんを使う。他の人に使われるのはやだろう?「うん」て言っている。相棒も可愛い。お、照れた。じゃ他人用の包丁を作るけど協力してくれる?「うん」だそうだ。包丁も各種作る。


 全部収納した。今日の作業は終わり。遊びに行っているアカを呼ぶ。

 「アカ、帰るよ」

 すぐ飛んできた。


 ずっと座って作業していたからね、今日は泉までアカとかけっこだ。アカは柴犬サイズになってかけて行く。戻って来たり先に行ったりわんわんと楽しそうだ。


 泉によって沐浴して里芋畑に帰る。おや、今朝タネを埋めたところから芽が出ている。水をかけておこう。大きくなれ、大きくなれ。


24日目+3日

 朝になって昨日の作品を取り出してみる。うん、なかなか良い出来上がりだ。


 数日かけて足りないものを作り、また数を増やす。リンゴなども毎日収穫したよ。アカの収納袋にも収穫物を入れた。水筒も入れたよ。アカの収納袋だけでも当分生きていける。アカの首輪も収納袋も首と前足にふんわりとフィットした。アカの大きさに合わせて伸縮してくれた。


 そうそう、アカが植えた実だけど、ぐんぐん育つ。3日の間にもう20メートルくらいになっている。幹の太さも抱えきれなくなってきた。なんの木だろうね。木肌も巨木と違って優しいさわり心地だ。


28日目

 今日からこの森が切れるところまで行って、森に沿って探検だ。森がどのくらいの広さかわからないので一応アカの木に挨拶していこう。アカが植えた木だからアカの木だよ。


 「森の広さの確認に行ってくるね。何日かかるかわからないけど待っててね」

 アカも頭を木に擦り付けている。

 サワサワと枝葉が揺れる。返事しているみたいだ。

 

 「アカ、この前行った森が切れるところまで載せてって」

 ワンと答え、大きくなって伏せをしてくれる。首輪をつかんでレッツゴー。しっかりつかまれるからアカも安心してスピードを出す。早いんだよね。あっという間に森の切れ目までついてしまった。一時間もかからないよ。本当はもっと早いのかもしれないけど。


 「アカ、ここからは二人で周りに気を付けながらランニングして行こう」


 左の方へ、森から出ないように森の際をアカと走る。アカは柴犬サイズだ。二人で走る。疲れないよ。大体正午ごろまで走った。


 アカが方向音痴でなく良かった。森の様子に変わりはないけどややカーブしているみたいだ。円周に沿って走っているのかもしれない。


 お昼にする。そして夕方まで走る。夕食にする。野宿する。大きくなったアカにくるまれて寝る。天国天国。

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