006 穀物畑 岩塩

九日目

 明るくなる。朝だ。霧は薄い。食事をして水を飲む。


 「アカ、先に進んで、2泊して帰ろう。食料が手に入れば進んでもいいかな。じゃ行こう」

 「ワン」返事はいつもいいね。

 「今日もゆっくりだよ」


 何事もなく夕方になった。野宿する。


十日目

 朝、谷を見る。朝日に照らされて谷川の水が煌めく。谷はもう深くはならない様だ。幅も広がらない。耳を澄ます。なんの気配もない。ただ水音と木々を渡って行く風の音が聞こえるだけ。とりあえず今日一日は先に進むことにする。


 昨日に続き今日も何もなく一日が終わった。野宿する。


11日目

 朝起きて良く周りを見渡す。巨木が細くなって森が明るくなった気がする。あと何日かで森を抜けられるかも知らない。


 帰りの食料しか残ってないので、今日は帰途に着く。袋の中のリンゴもトマトも水も新鮮なままなので、戻ったらたくさん収穫しよう。一度に取ると可哀想だから何日かけて収穫しよう。そうすれば収穫したところが復活するからね。


 「アカ、今日は戻るよ。帰りだ」

 アカが尻尾をブンブン振る。寝慣れたところはいいね。野宿はやっぱり気を使う。


 「じゃ帰ろう」

 アカが伏せをする。あれ、乗せてくれるの?そういえばアカはライオンくらいになった。アカに跨り首に抱きつく。


 「ワオン」と鳴いて出発だ。最初はゆっくりだけどだんだん早く駆ける。下草も枝もアカを避ける。風も当たらない。ほとんど揺れない。駆けているのかな、飛んでいるのかな。アカの前に前方に向かって尖った三角錐の盾がある様だ。前日泊まった場所ももう過ぎ去った。今は谷川から登った場所を目指している。


 「アカ、この前谷川から上がったところで休憩しよう」

 「ワン」

 昼頃、着いてしまった。昼食にする。一時間ほど休憩する。


 「じゃ行くか」

 アカは当然の様に伏せをして乗せてくれる。

 駆け出して谷川に向かってジャンプだ。うわあ、落ちる。けど風が来ないから落ちている感覚がない。スタッと着地した。衝撃がない。すぐに駆け出す。


 「アカ、泉まで行こう」


 果樹園に寄る。袋から桃を出し、もぎたての桃と比べてみる。外観、味とも全く同じ。もしかして時間が進んでいないのかも知れない。


 あっという間に泉まで着いた。水筒の水と目の前の泉の水を飲み比べしてみる。全く同じ温度、味だ。水筒の性能だろうか、袋の性能だろうか。袋は収納袋と呼ぼう。


 沐浴して

 「アカ、里芋畑に帰ろう。走って行くよ」

 アカと走る。楽しいな。


 里芋畑に着く。安心だ。里芋を食べて横になったアカに寄りかかった。尻尾をお腹の上に毛布の様にかけてくれる。すぐに眠った。


12日目

 朝になった。今日は里芋畑からみて東側に行ってみることにする。


 アカと探索に行く。しばらく行くと開けた場所に着く。やっぱりあった。穀物畑だ。


 拳くらいある実の一粒一粒に棘のようなものがある植物が生えている。一粒とって皮を剥いてみる。外側の皮の下に薄い膜がある。爪を立てると中から白い粉が出てきた。舐めてみる。小麦粉だ。


 米がある。二種類あるね。うるち米と餅米のようだ。

 とうもろこしもある。そば、大豆、小豆、胡麻もある。大麦もある。ビール麦だな。お茶の木がある。


 みな収穫しよう。半日収穫した。それでも収穫できたのは畑のごく一部だけだった。


 「アカここから果樹園まで行きたいけどわかる?」

 「ワン」

 わかるらしい。

 「じゃ行こう」


 アカが先頭に立ってかけて行く。迷いはない。しばらく行くと果樹園に着いた。リンゴを収穫してからアカに先導してもらって泉まで行く。沐浴等して里芋畑に戻って食事して眠る。その前に里芋の葉をうまく丸めて皿を作る。笹舟みたいな要領だ。いくつか形を変えて作って収納袋に入れてから寝た。


13日目

 相変わらず霧が巻いている。朝だ。さてと昨日里芋の葉で作った皿を出してみる。あ、やっぱり立派な皿になっている。緑色した皿だ。叩いてみる。柔らかい音がしたが丈夫そうだ。今日からは皿を使って食事ができる。ちゃんとアカの皿もあるしね。また文明度が上がった。


 今日は北へ行って見よう。白っぽい所に着いた。


 透明なもの、薄いピンク、黒っぽいもの色々な塊がたくさんある。サラサラなものもある。舐めて見る。塩っぱい。でも塩っぱいだけじゃない。豊かな味だ。ミネラルをたくさん含んでいるのだろう。


 森の恵みを食べている限り塩が欲しいと思ったことはない。何でも含まれているスーパー完全食なんだろう。森の外に出ると塩は必要だろう。採取しよう。相棒で掘って大量に採取した。売れそうなくらいだよ。満足満足。里芋畑に戻って夕食にした。

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