第35話 「ビーチバレー」と書いて......②
「……」
……よし、決めた!!
昼休憩が終わるまでの時間、常に思考を巡らせ、導き出した答えは......
うん、誘いに乗ろう!!
やはり、ここは行くことにした。メリットとデメリットだけで言えば、これが罰ゲームによるものだったとしても正直学校での扱いとほとんど変わらないのだから、そんなにダメージを負うことがないのに気づいてしまったからだ。だが、それでも万が一があるので...
「僕は用事があるのでこれで。」
優たちは連れてかないことにした。これが罰ゲームであった場合には極力被害は少ない方がいいし、違ったとしても彼女たちの練習時間を無駄にはさせたくない。
そう自分に言い聞かせ、いつもより軽い足取りで約束の地へ向かう。
これから、僕の青春の1ページが始まる......
〜〜〜
「……」
「……」
「……」
「これは何ですか!?」
僕の青春は1ページにして幕を閉じた。というか、始まってすらいなかった。
「あはは......ごめんね、連君。」
横には少し申し訳なさそうに謝る二階堂さんの姿がある。そして目の前には、
「やはり、身体を動かすなら全身運動に限るな。」
「うぉ〜、燃えてきたデ〜ス!!」
先程話しかけてきた女性のうちの一人と雄二君の姿があった。
とりあえず、罰ゲームじゃなかったことはいい。それはともかく、
「何で僕らはビーチボールをやることになったんですか?」
「あぁー、それはね...」
〜〜〜
要約すると、こうである、
雄二君がクラス内で面白いやつがいると言う話をしたところ、それはどんなやつだとか、何がすごいのだとか言う話になったらしく、その際に二階堂さんが海の家で僕らが働いていると言う話をし、ならみんなで行こうと言う話になってしまったらしい。
そこまではまぁいい。問題はそこからだ。
「何で実力を見るためにビーチバレーやることになったんですか!!」
「あはは...ちょっと分からないかな。」
「…まぁ、それもまだいいです。それよりも......」
「何で相手が彼らなんですか。」
そう、そうなのだ。最大の問題とは彼らを相手にしないといけないということだ。
この前のボウリング後に気になってしまったので彼らのことを調べさせてもらった。
正直、才能学園と呼ばれるほど才能に重きを置く学校ではあるが、全員が全員、卓越した才能を持ってるというわけでないと考えていたのだが.......実際はそうでなかった。
目の前の右側に見えるは早乙女雄二、水泳の才の持ち主である。彼は自由形の選手として有名らしく、中学時代は距離に関係なく、自由形の全種目で3連覇をしているらしい。要するに、化け物だ、
さらに、その左側に見えますは、ミラ・ノイン・アルサークと言い、プロレスラーの才の持ち主である。
見た目は透明感のある長い銀髪をたなびかせ、プロレスラーとしての才の持ち主であることがわかるほどに引き締まった身体。
そして、何よりもでかい!!
……いや、でかいとは言っても...あの...身長の話なのだからね、身長の!!
僕自身、それほど身長が高くないが、それでも頭一つは差がありそうなほとに高身長なのだ。だが、何よりも目立つのはその実績である。
レスリングを始めたのは中学校に上がる3ヶ月前ほどからで、それにも関わらず、才栄学園からのスカウトを受け、才栄学園の付属中学に入学したと言う。そして、その後も素晴らしく、中学時代は出場した競技の多くで結果を出しており、結果を出せなかった試合の方が少ないと言う。
加えて、彼女と戦った相手方からは『飢えた獣の女王』という異名で呼ばれてるらしい。本人がそれを良しとしているかどうかはわからないが、それだけの実力者だと言うことだ。
そして、それを踏まえてこれを見て欲しい。
「ミラ、上げるぞ。」
「OKネ。いくデ〜ス!!」
ボンッ!
いや、だから何でそんな音が鳴るんだ!?
今はただ雄二君が高く上げたボールをミラさんがただ打つという当たり前の光景だったが、放たれたボールは叩きつけられたのが砂浜だとは思えないほど異様な音を出しながら跳ねた。・・・・・・いや、ここふかふかな砂浜なのに跳ねるのもおかしいだろ!
「あはは....頑張ろうか。」
虚空を見つめながらどこか渇いた声で笑う二階堂さん。彼女も現実を理解しているのか、僕には勝つために頑張ろうと言っているのではなく、生き残るために頑張ろうというふうに聞こえた。
これはビーチバレーとは名ばかりの当たったら死ぬというデスドッジボールの間違いではないのだろうか。
そう思わせてくる現実から逃げ出したくなる。
これならまだ罰ゲームの方が良かったな。
「…でも、安心して!!」
「これでも、一応は作戦考えてきたから!!」
「本当ですか!」
これは不幸中の幸いだ。まだ、生き残るという選択肢があるかもしれない。
「それは一体どういう?」
「その作戦って言うのはね...,..」
この死地へと赴かれた戦士たちを救う女神の一手とは。
「…私がどんなボールでもトスを上げるから連君はどんな形でもいいからボールを上げるっていう作戦!!」
「それ、僕だけ大変じゃないですか!!」
まさか、女神からの救いの一手ではなく、地獄へと誘う悪魔の手だったとは。
う~ん…………………………でも。
この作戦に頭を働かせるほどにその合理性に感化されてしまう。
あのボールを取るとしか選択肢がないのであれば、適任なのは僕のほうだろう。
彼女の才能に見た目から判別できる身体能力的差。そして、何よりも、昨日から止むことのない闘争心と言う名の炎。それらが僕を地獄へと誘ってくる。
「……わかりました。それでいきましょう。」
「えっ!? 本当に良いの? 自分で言うのもアレだけど、これって結構連君の負担大きいよ。」
「そこは大丈夫です。もう覚悟を決めましたから。その代わり、しっかりボールは上げてくださいよ。」
「…うん、わかった。じゃ、頑張ろうね。」
突き出された拳を突き合わせる。
もう、これで逃げれなくなってしまったと、些か後悔が残るものの、しょつがない。
「よし、そちらも準備が出来たようだな。」
「まぁ、心だけなら出来ましたかね。身体がどうなるかは分からないですけど。」
「ハハハ!! たかが、ビーチバレーで大袈裟だな!! やっぱり、お前は面白いやつだな。」
いや、冗談とかではなく、ガチだから、ガチ。と言っても、彼らは信じなさそうなものだが...
「では、いくぞ!!」
一瞬にして身体に緊張がはし..ドンッ!!
「ふむ、外してしまったか。」
いやいやいや。今どこ狙ってた!?
これ、僕が狙われているとかじゃないよね。
ボールはコートを大きく外れてはいたが、ボールは僕の顔すれすれの弾道で通り抜けっていった。
ある意味、先ほどよりもさらに緊張感が身体を覆うようになった。でも、これはこれで集中力が高まって良かったのかもしれない、と思うことにした。
…やるからには全力だ!
「では、もう一回だ。」
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