第30話 「カラオケ」と書いて「才能」と読む④

「お〜弟さんかいな。えらい別品さんやないの。飴ちゃんいる?」

「そんなことないですって!!....飴はもらいますけど。」


「へ〜杏奈ちゃんも音楽系のことやっているんだ。いいね。」

「しー!! 大きな声で言わないでくださいよ!」


「……」

「……」


 三者三様ならぬ、三組三様の反応が見られる。

 先程の展開からみんながこうもすぐに切り替えられるのはすごい。と言うか、何でできるんだ?


〜〜〜


「では、俺から失礼しよう。俺も同じく才栄学園1年で水泳の才、名を早乙女雄二さおとめゆうじと言う。よろしく頼む。」

「…特に、レディの2人とは仲良くしたいから、よろしく。」


「…げっ。」


 1番目からキャラ濃すぎだろ!!

 というか、最後のイケメンポーズは何だ!!……決まりすぎだろ、この野郎!!


「ごめんな。雄二は女の子に会ったら、誰にでもこれを最初に言うから気にせんといて。」


 いや、さらにタチが悪いだろ!!


「で、ウチな。ウチは竺間陽葵ちくまひなた言います。こう見えてマジシャンやらせてもらってます。おおきに。」


 お――――普通だ。

 正直、一番個性が強そうだと思っていたから安心する。


「……俺は橘勇翔たちばなゆうひと言います。一応、空手を得意としています。よろしくお願いします。」


 ……うん。何がすごく親近感が湧く。彼となら親友になれそうだ。


「じゃ、向こう側の紹介も終わったし、次は僕からやろうかな。」

「才栄学園のみんなとはさっきまで行動していたよね。名前は二階堂優樹って言います。一応、おね...美樹の弟です。そうだな、あとは……才能って程じゃないけど、変装みたいなことが得意かな。よろしくね。」


「あ〜なるほどね。才能というか特技も言う感じね。」

「ふぅ〜それなら、……私、音無杏里って言います。特技は………まぁ。そうですね、音楽関係です。よろしくお願いします。」


「……私は金剛沙耶って言います。剣道やっています。よろしくお願いします。」


 ドクン

 

 順々に自己紹介をしていき、自分の番が近づいていく。その度に心臓の鼓動が高まるが、表情には出さないようしっかりと自分を繕う。

 ここ最近、何回と自己紹介をしていることもあって、テンプレートは出来上がっているのだか......


「…えっと、僕は佐藤連って言います。特技は………………これと言ってはないですね。」


 …………やっぱり、だめか。


 普通に自己紹介をする分には問題がなかったかもしれない。 

 それでも、特技や個性に……才能ということになると......僕にはまだ分からない。


 ――あの時から、僕にはやっぱり分からない。


「よし、みんなの自己紹介も終わったことだし。……うん、遊ぼうか。」


〜〜〜


 そんな感じで、まず初めに音楽関係で気の合った音無さんと二階堂さんが仲良く先ほどのリベンジバトルを始め、優が竺間さんに捕まり、いじられ続けている。

 そして、武道関係で何かを感じ取り合った金剛さんと勇翔君がぼんやりとみんなの姿を眺めている。ということはだ......


「ふふっ、まさか最初に君と話すことになるなんて想像もしてなかったよ。」


 いや、こっちも考えてなかったよ!


「…あぁ。普段、初めて会う人たちとは女性から話そうと決めているからね。それで驚いただけで、君に対して負の感情を持っているという訳ではないから、気にしないでくれ。」


 人から言われるほどに自分のこと卑下してなですから!


 次々と繰り出される言葉の波に疲労感だけが積もっていく。

 

 …会話もしてないのに疲れるってどういうことだ?


「それで時に連よ。」

「はい。」

「好きな女性のタイプはどのようなものだろう?」


 ぶっー!!


 急に何を言っているんだ? 思わず、飲み物を吹き出してしまった。


「お〜その反応。好きな子でもいるのかい。誰にも言わないから話してみてくれ。」

「いや、何で急にこんな話になったんですか! いきなり過ぎません? というか話しませんよ!!」


「ハハハ。そんなことはないだろう。」

「男同士好きな女性の名前を言う。修学旅行の夜の宿だったら普通のことだろう。」


「今は修学旅行でも、宿の中でも、夜ですらないですよ。」

「そうだろう。ここは昼間のボウリング場だぞ。」


 そう言うことじゃないんだ。そう言うことじゃ。


「…それにしても、君ば面白い男だな。」

「そ、そうですか?」

「ああ。俺は人との会話を通して、その人自身を知るようにしていてね。」

「そうやって互いに言葉のキャッチボールを行うことで、相手の魅力に気づき、そこからさらに相手を知ろうと思う。」

「そうすれば、勝手に仲良くなっていくものさ。…レディと恋に落ちる時も大抵こういうものだ。」



 第一印象ば女性好きなのだろうなくらぃだったが、想像以上に話しやすかった彼は男女の差はあれど、誰とも壁を作らないタイプのようだ。


 ……だが、それでも、言葉のキャッチボールをする気があるのか疑わしくなるほどの変化球はやめてほしい。

 僕のストライクゾーンの狭さを舐めるなよ!


「……本当に、みたいだな。」


 ……?


「…それで好きな女性のタイプは何なんだい?」


 いや、まだ聞くのかい!!


「…あ〜、なるほど。君のことを知ろうとしたばかりに自分の話はしてなかったね。僕の好きな女性のタイプは全部だ。」


 そういうことでもない!! と言うか全部かよ!!


「お〜お〜。お二人さん。楽しい会話中、ごめんな。集合やで。」

「ふむ、そうか、もう少しで聞けそうだったのだがな...」


そんなに僕の女性のタイプって気になるものか?


 僕の危機を察知したかのようにされた招集によって難を逃れることができた。


「よし、みんな集まったね。それじゃ、4人ずついることだし、チームで勝負してみない?」

「ちょうど学校別で男女2人ずついるし、いいんじゃない。」

「そうだな。俺も少し体を動かしたいと思っていたところだ。」

「……そうか。やっぱり男なのか。」

「……全然見えないよね。」


 ……団体戦か。


 チーム内だと僕が一番下手だろうから、足を引っ張らないように頑張ろう。


「ほな、ウチからやらせてもらうで。」

「なら、こっちは僕からやろうかな。」


 僕たちが挑もうとしている才栄学園。その実力、そして僕たちがどこまで戦えるのか……今がそれを知るチャンスだ。


 心なしか音無さんを筆頭に僕ら全員の目にはやる気の炎が灯った気がした。


〜〜〜


「452対437で……」

「榊ヶ原高校チームの勝利!!」


 か、勝った。

 抜きつ抜かれつの勝負を繰り返し、僅差だが勝つことができた。


「あちゃ〜負けちゃったか。みんな上手いね。」

「ほんまやで。ウチら結構自信あったんやけどな。」

「……残念だ。」


 負けたことに落ち込んでいる才栄学園の生徒たちがいる一方、僕らのチームは口に端ないものの誰もが少しにやけていた。

 だが、それもそうだろうと思ってしまう。僕らはあの才栄学園に勝てたのだから、嬉しさで表情を隠せなくても無理はない。


「あ〜悔しいから、もう一回して。というか3回勝負にしよう。」

「も〜う〜しょうがないな。もう一回やろうか。」


 すごく機嫌いいな、音無さん。そんなに勝てたのが嬉しかったのか?……いやでもうれしいか。


 まぁ、何はともあれ、ここで才栄学園の生徒たちに勝てたのは大きい。

 あくまで自論ではあるが、こう言う経験が自分の自信につながって、さらにより良い結果を出すための糧となる


 ……だが、なぜだろう。

 彼らの表情に負けた悔しさ以上の何か強い感情を感じる。


 ……ニヤっ


〜〜〜


「457対477で……」

「才栄学園チームの勝利!!」


「…くっ。」


 ……負けた。圧倒的に負けた。


 点数だけで見れば先ほどのゲームと同じ程度の点差ではある。

 だか、僕らのチームの点数はあまり変化がないから、実質的に向こう側が頑張ったことによる結果である。

それだけ、彼らとの間には大きな差があったのだと思う。それは........

 

「…………集中力すご過ぎでしょ。」


 心という器から溢れ、漏れ出るれるようにして言った優の言葉。その言葉に僕らのチームメンバー全員が納得してしまう。


 そう。今回の敗因は彼ら彼女らが持つ異常なまでの集中力だと思う。


 結局その後も、集中力を切らすことなく、才栄学園チームが勝利を決め、幕を閉じた。


〜〜〜


「あ〜、もう終わりか。でも、本気で遊べて楽しかったよ。また、やろうね。」

「……そうね。あんたたちとはまたやりたいね。」


 互いに別れを告げ、帰路へと着く。 


「……」

「……」

「……」

「……」


 行きとは違い、誰も何も発さない重い雰囲気が流れる。

 優はもしかしたらここで才栄学園の生徒と関わることでいい効果が与えられるのではと思って、僕たちを結びつけてくれたのかもしれない。

 実際、僕たちが今から挑もうとしている壁の高さを知り、明確な目標を見つけられたというメリットはある。それでも、その目標の高さに自信を失い、挑戦を諦めてしまっては本末転倒だ。


 彼女たちは大丈夫だろ......


「あ〜!! また負けた!!」


 しかし、僕の心配をよそに音無さんが子供みたく声を上げる。


「何で2回も連続で負けたのよ。別にあっちボウリングの才能があったやつもいなかったし。何で他のことでも才能あるのよ。ズル過ぎでしょ。」


 子供のように地団駄を踏みそうなほどの勢いで捲し立てる彼女にここにいる誰もが反応できずにいた。


「マジで悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて……だから、決めた。」


 先ほどとは異なり、静かではあるが、強い言葉となる。


「絶対に今度の試験で受かって、才栄学園の生徒になって、その中でも私はトップを目指すよ。」


 ただ純粋に、ただ真剣に、ただ当然のように。彼女は言葉にする。


 大丈夫だ。


 彼女の言葉を聞き、彼女の表情を見て、そう思う。どこまでもまっすぐな彼女に今まで悩んでいたことがバカらしくなる。

 そんな彼女の姿は僕だけでなく、周りの不安をも取り去ってくれる。


……これならもう心配はない。


「…よし、そうと決まったら。罰ゲーム代わりに家まで走って帰ろうか。」

「いいよ。」

「…うん、私も問題ない。」


 ……嘘、これは心配だ。考えが体育会系すぎないか。


「お〜い、連。早くしないと置いてくよ。」

「あっ。…え〜と…待ってください。」


 何故か、乗り気な3人に急かされるようにして後を追う。

 ボウリングもして、走りもして、今日は運動尽くしだと言うのにみんなどんな体力をしているんだ?


 …………でも。


 これってちょっと青春ぽいかも。


 僕自身が求めていた普通とは少し違うが、これはこれもいいなと思ってしまう。

 結局、一番家が遠かった僕は音無さんの倍の距離を走り、次の日は筋肉痛になったのだった。


◇◇◇


「何や、やけに機嫌よさそうやな、雄二。」

「ふふっ、女性と初めて会う瞬間というのは何物にも変え難い幸福だからな。」

「それ、毎回言うとるやん。…それにしても、えらい元気な気がしはっんやがな。」

「……少し、面白い男にあったからか、な。」

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