第34話 エーデルワイスの天使
一緒に入っていた小包を開けるとそこには大事にしていたエーデルワイスのネックレスだ。何かを教えてもらった気がする。思い出せない。スマホを取り出して検索すると画面に表示された結果。
「大切な思い出―。」
スイスの天使に恋した登山家の言い伝えからできた花言葉のようだ。平和な暮らしに退屈した天使が地上に舞い降りて、人間の姿で人間界の苦労を味わっているときにそんなことを知らない登山家が天使に恋をする。叶わぬ恋に苦しんだ登山家が苦しみから逃れようと祈った結果、思いを受け入れた天使がエーデルワイスの花を地上に残して天へと帰る。
残されたエーデルワイスのネックレス。最後に更新された死にたくないという日記。ネックレスを買ったときエーデルワイスの言い伝えを話していたということは既に知っていた。日記を遡ればネックレスを買った日の日記にはもし、自分に何かあったらそれは桜翔くんに残していこうと思う。と書かれていた。
僕のなかでバラバラだったパズルが全部一つになった僕。は桜夢のことが好きだということ。その“もし”が起きてしまったということ。そして、彼女にはもう二度と会うことができないということ。わかっていたはずなのに、感じていたはずなのに僕はずっと気づかないふり、感じていたもにに蓋をして楽しいことだけに目を向け続けていたんだとこのとき突きつけられた。
涙が止まらなかった。後悔しかない。
まさに今この瞬間、僕は叶わぬ恋をした登山家で桜夢は地上にエーデルワイスを残した天使になった。そして、大切な思い出が詰まった手帳。それをわかっていて僕にこれを送りつけた。
失ってから気づくことが多すぎる。あの窓から何を見ていた。何を考えていた。今の僕には何もわからない。
もうすぐ春なのに冷たい風が吹き付けていた。
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