第33話 最初で最後のラブレター
桜翔くんへ
あなたと出会ってちょうど1年ぐらいが経ちました。
今日も元気ですか?今年も桜は満開に咲いていますか?
黙ってあなたの前から姿を消してごめんなさい。悪気はないのです。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますね。そして、広い世界を知ってしまうとどうしても欲が出てきてしまうね。
あなたと出会って何もなかった私の世界がどんどん塗り足されていくような感覚でした。毎日が楽しくて、楽しくて仕方がありませんでした。きっと、今のあなたは“自分はなにもしてあげられなかった”と思っているのかな?私にとってあなたは“生きる意味”で生まれて初めて生きがいを感じた日々でした。
一緒に過ごしているときだけ現実から逃れられるような気がして現実から目を背けて、自分の意思で思いのまま過ごすことができていました。
会う回数を重ねるごとにあなたも変わった。よく笑うようになったし、大学で初めて友達ができたと言ってきたときは私も嬉しくてたまりませんでした。その一方で寂しさもこみ上げてきたのはここだけの話。
手帳とネックレスはあなたに残して行きます。大切にしてください。
その足でいろんな場所に行って、その目でいろんなものを見て、その口でいろんなものたくさん食べて、その心でいろんなことを感じて、次会うときは抱えきれないほどのお土産を持って会いましょう。
最後に一つ。私はあなたのことが好きでした。
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