第32話 一言の真実
結局、これを僕に渡して何を伝えたかったのか僕には理解できたような、できないようなそんな感じでもどかしい。ただ、求めていた彼女の体温を感じられたような気がした。
めくったページを見ればそこにはたった一言。
死にたくない。
そのページを境に更新されていることはなく、その一言と同じページにできたシミが彼女の胸の内を全て物語っているようだった。彼女の最後の最後の思いを僕はどうにもしてあげられる訳もなく、無能な自分に悔しくなってしまう。
もう一度会いたい。あの優しい温もりを感じたい。もっと言えばこれからも横にいて欲しい。
外の空気が吸いたくなって、完全に中身が水になってしまったグラスをよそに店をあとにする。
ひたすらに考えを巡らせた。どこに行ってしまったのか。もう二度と会えないのか。僕はどうしてこんなにも桜夢のことを思ってしまうのか。そんなことを考えていたら無意識にあれだけ通った病院の最寄りまで来てしまった。
近くの公園まで歩き、初めて会った日もここで桜を見たなと思い出す。
そして、コートに入れてあった手紙を取り出し一文字ずつ噛みしめるように読んだ。
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