第25話 クリスマス
クリスマス当日。冬も本番でコートは手放せないほどになった。
こんな日に予定も特になくプレゼントを抱えてやって来た。来ることも慣れてしまったここ。本当は慣れてはいけないのかもしれない。
ノックをして中に入る。いつもは笑顔で迎えいれてくれるのに今日は違った。机に突っ伏して寝息をたててスヤスヤと夢のなか。起こしてしまうのも悪くて残念だがプレゼントだけ置いて今日のところは帰ろうと思い窓辺に紙袋からラッピングされたマフラーを置く。結局そのあとカードも追加したのでそれも近くに置いておく。そこには前にサンタさんに書くんだと言っていた手紙が封筒に入って置いてあって気になってなかを読んでしまった。
サンタさんへ
今年もこの日を迎えることができました。ありがとうございます。
今年は十分すぎるぐらいにいろんなものを手に入れられたので、今回でサンタさんへの手紙は最後にします。最後のお願いは時間がほしいです。いま私は人生で最大に楽しいので可能な限りの時間がほしいです。
来年も無事にこの日を迎えられることを祈っています。
桜夢より
今年まで書き続けていた手紙。最後のサンタへの手紙。今年は僕が桜夢にとってのサンタになってあげよう。付け足しでかったカードにサンタのふりをしてメッセージを書き残す。
桜夢ちゃんへ
メリークリスマス
プレゼントを持ってきたよ 大切に使ってね
そして、これまで手紙をくれてありがとう とても楽しかったよ
あなたが素敵な時間を過ごせることを祈っています
サンタより
「これでよし。」
お世辞にも綺麗な字とは言えないが仕方ないと、窓辺に手紙と差し替えておく。手紙は回収して僕はその場を去ることでサンタとしての任務は成功した。昼間にやって来るサンタも変だけど成功したので細かいことは気にしない。
それから大学も年末の最後の授業日が終わり、終わったその日に来ればとっても嬉しそうにクリスマスの報告をしてきた。
「見て。初めてサンタから返事来た。信じられない。最後って書いたから返事くれたんだね。」
「そうかもしれないね。」
嘘。本当は僕がやったことだから全部知ってる。でも、今はその流れに乗っておく。
「このマフラーも置いてあってね。凄く可愛いの。ブランケットの代わりにもなるし。」
ひたすらウキウキしていて、あのとき対応してくれた店員さんに感謝したい。
「もうすぐ年越しだね。ねえ、年賀状書きたいから住所教えて。」
「いいけど、僕年賀状出す予定ないから返せないかもよ。」
「いいよ。私が出したいだけだから。ここに書いて。」
そう差し出された真新しい手帳の余白ページに住所を書いていく。その横でクリスマスプレゼントのマフラーを肩からかけては肌触りを楽しんでいる。それを見れば僕のサンタとしての任務は大成功で同時にサプライズは大成功だと確信した。
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