第13話 初めて知ったこと

6月16日

発作を起こしていろいろ大変な日々でした。何度も起きているのに慣れません。

体も重くて辛い。苦しい。

今回で最後になってほしかったな。

生きてるってことはまたあの苦しみに怯えなきゃいけない。そんなの嫌だな。

面会できないようにしてもらったけど、本当は会いたかったな。

でも、こんな姿早々に見せたくない。お願いだからキレイなところだけを見てほしいし、そこだけを覚えていてほしいから。ごめんね。

会えもしないのに、浴衣を持ってきてくれたんだよね。悪いことしちゃったかな。


「発作―。」

 急に面会を断られ続けた日々。そして、この続いていた空白のページ。理由が嫌でも理解できた。会いたくないのではなく会えない。日記が書かれていないのではなく書けないということ。

 半分ほどを読み進めて僕は薄々と桜夢の状況がわかり始めた。

 マグカップのコーヒーをひと口すすって読み進める。


7月7日

七夕で小児科にある短冊にちゃっかりお願い事書いてきた

叶うかわからないけど、まあ気休め程度かな

ここ数年では珍しく晴れてたから織り姫と彦星もちゃんと会えた。


7月11日

苦手な血液検査。やっぱり血取られると頭からすっと血の気が引いてく感じがもう嫌で仕方ない。

それでも、浴衣を着る練習!動画を見ながらなんとか着られたかな?

意外と着るの難しくて大変だな。


 6月、7月は数行のみ書かれた日、空白のページもちょこちょこあってなんだかもどかしい。それだけ僕には見えない何かと戦っていたという証だ。

 僕の手元にある手帳のなかは夏になっていた。

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