第12話 エンブリオ_2



「しい君、ちょっと息を止めて」

「うん」

「……うん、はい。息吸って……」

「ん」

「吐いて」

「はあぁ」

「……はい、よし。耐衝撃ゴム手袋、もっと薄くならないかしらね」

「聴診器で聞こえないの?」

「一緒に肺のふくらみとかしっかり感じたいの。脈も」

「騎士は病気にならないから平気だよ」

「そうだけど……しい君の世話係としてちゃんと知っておきたいでしょ。しい君が強いのは知っていても」

「キュレネラ?」

「動かないでね」

「うん」

「……普通の子はこうやって、頭を撫でてもらうものなのよ。こんなゴム手袋なんかしないで、素肌で」

「キュレネラが死んじゃったら困る」

「しい君に心配してもらうなんて光栄ね」

「僕はエオトニアの騎士だから。キュレネラも僕が守らなきゃいけないエオトニアの一人だよ」



  ◆   ◇   ◆

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