第11話

 幻燈は学校からは遠い場所に住んでいるので通学はバスなので玄関でお別れとなった。


 喧嘩の騒動で帰りがすっかり遅くなってしまったが新たな友人が出来るキッカケになったとポジティブに捉えて自転車に跨る。


「明日からも楽しみだなっと!」


 立ち漕ぎをしながら意気揚々と帰っていった。



 家に着くと偶然か必然か、怜が同じ時間帯に帰宅をしていた。幼馴染の怜は同じ高校には通わずに甲府の高校に通っている。


 曰く、「近いからって理由で適当な高校に行って将来の選択肢を狭めたく無い」だそうだ。


 彼女は宣言通りに偏差値の高い普通科高校に合格をして、何かやりたい事が決まったらその道に進める為の準備段階。


 明確な将来は決めていないが決まった時にその道が険しくならないように努力をしている。


「っよ!帰宅時間が同じなんて奇遇だねー」


「初日から色々あって下校時間が遅れてしまったん。その分友人が多くできたから儲け物だけどね」


 いろいろ合ってとは、と首を傾げて不思議そうに見つめてくるので校舎裏での経緯を軽く話した。


 すると玲は腹を抱えて笑い出した。


「あははは!そりゃあ初日から災難だったね。それにしても相変わらずのポジティブシンキングだね。普通そんなことあったら落ち込むよ」


 ブレイブは思考の切り替えが早い。というのもいつまでも落ち込んでいるよりも良い方向に考えて次に活かしていけば良いと考えているからだ。前世では暗い出来事ばかりだったのでそれと比較すれば些細な事だと言い聞かせている。


 暗いままいてはその思考に引き摺り込まれて沼にハマっていく。ネガティヴに捉えていてはどんどんと沈んでいき負の思考が連鎖し続けて良い方向に転ぶことは無い。何処かで折り合いをつけて次に活かすことが大事なのだ。


「入学式から悪い出来事が起きたって思うと幸先悪いだろ?だったら友人ができたキッカケって思った方がお得じゃないか」


「まあそうかもね」


 ニヤニヤと笑いながら脇腹を肘でつついてくるのでやめろと引き剥がす。


「そのポジティブシンキング嫌いじゃないよーってね。じゃあ私はもう家に帰るからお互い余裕できたら遊ぼうねー!」


「おう!またな!」


 隣の家で窓を開ければすぐに会えるのだが、挨拶は欠かさない。ブンブンと大きく手を振り上げてジェスチャーをしているので笑顔で手を振りかえす。


(怜にも会えたし、やっぱり今日は運が良い日だな)


 今日は運がいい日だと結論付けて家に入る。明日から本格的に始まる学園生活に胸を弾ませながら。


「ただいまー」

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