第9話
「なあなあ、名前がブレイブってマジか?」
「本当だよ。勇者って書いてブレイブって読むんだ」
「へぇーキラキラネームか。子どもの頃とか大変じゃなかったか?」
「割と平気だったよ」
HRも終わって放課後。ブレイブの周りには多くのクラスメイトたち(主に男)が集まってきた。キラキラネームが物珍しいようで興味津々といった感じだ。この歳にもなれば名前について馬鹿にしてくるような人間もおらず、快適に過ごせる環境になってきた。小学校の頃は少なからず馬鹿にしてくるような連中はいる。そこまで気にしてなかったが、両親がくれた大切な名前だ。相手にしなかったがブレイブにとって良い気分ではなかった。
「それじゃあまた明日!」
十数分も話せば自然と人は離れていって解散する。充実をした高校の初日を迎えられたと心の中で安堵する。駐輪場に自転車を取りに行くと校舎の裏側から物騒な声が聞こえてきた。
「なんだぁその髪色は!?テメェ一年の癖に調子乗ってんなぁオイ!?」
「校則って読めないんですかぁ?染髪はいけませんーって書いてあるよなぁ?」
「じ、地毛ですってば...何度説明すればいいんですか」
どうやら髪色が目立っている新入生を不良崩れの先輩がいびっているようだ。地毛と誤解を解こうとしているが聞く耳を持たずにオラついている。
「謝れや、ボケェ!」
「ご、ごめんなさい。これでいいですか?俺はもう帰るんで...」
「あぁん?テメェ、そんな態度で帰れると思ってんのか?」
暴力沙汰になる前に教師を呼ぼうとしたがこれでは間に合わないと判断してブレイブは直ぐに駆け出す。
(そこの曲がり角の奥か!?)
駐輪場から真っ直ぐ走って校舎の曲がった裏側。そこから音が発せられている。突っ走っていくが時は既に遅かった。
ッパン!と乾いた拳の音が鳴り響き、赤く染まった髪色の男の頬を打ち抜く。二人の不良崩れはそれをニタニタと笑っている。
「お「オイ!テメェ!なんで殴りやがった!」
声を出して注意しようとしたが殴られた赤髪の怒声によって遮られた。
「なぁ、オイ。謝ればいいってテメェ言ったよな?言ったよな?その癖になんで殴ってんだ?あ゛ぁ゛!?」
先程までの腰が低い男の声とは思えないほどにドスが効いた声を腹から捻り出している。優男の印象も完全に崩れ青筋が立っている。余りの変わりようにブレイブはポカンと口を開けてしまう。
「はぁ?急にイキりはじめてんじゃねぇよ。御堂、シメてやろうぜ」
「あたぼーよ。舐めた後輩のじづっぼげぇ!!」
御堂と呼ばれた先輩はペラペラと喋っている最中に赤髪の拳を顔面に受けて地面へと叩きつけられた。
「は?おい!御堂ぉぉぉぉぐっあぁぁ!」
もう一人の男は倒れた御堂に近づいたところを鳩尾に蹴りを入れられた。嗚咽しながらその場に倒れ込んだ。赤髪はその二人に痰を吐き捨てると悪態をつけながらこちら側に向かってきた。
「二度と俺に喧嘩売ってくんなよ。で、テメェもコイツらの仲間か?弱い奴は群れて煽ってきやがってムカつくんだよ!」
「ちょっ!待っ!ちが!」
まるで聞く耳を持たない。先程とは一変して今度はこの男が怒り狂って人の話を聞かずに暴力に訴えてきた。
「逃げやなゴラァ!」
「はぁ、仕方ない。ちょっと痛いかもしれないけど我慢しろよ!」
大きく振りかぶってストレートで殴りかかってきた所を躱して、懐に入り腹部に重い一撃を与える。
「ぐはぁ!?」
ブレイブの拳は深く刺さり、赤髪を一瞬で気絶させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます