第4話

 それから10年の時が過ぎた。勇者アレフはどうやら地球という星の日本という国で産まれた。


 現在の名前は十六夜勇者いざよいブレイブ。俗に言うキラキラネームを付けられた子どもだ。両親はファンタジー系のRPGが好きなようで子どもの名前には勇者とつけたいと思い立ったそうだ。


(...この世界の常識を知ってしまうと少々恥ずかしいが、両親から貰った大切な名だ。奇しくも前世では勇者と呼ばれた身だ。名に恥じない行動を取らなければ)


 この世界の常識を知って尚、アレフ。否、ブレイブは真面目なので周りからの冷ややかな目から負けずに真っ当に生きようと誓っていた。


 だが、少しばかり彼には抜けているところがある。それ故に学校などでやらかしてしまうのだ。


「50m走をい、1秒...?」


「おい!走り高跳びなんて測りきれないぞ!」


 身体テストでうっかり力を使ってしまい、周りをどよめかせてしまう事が多々あった。運動をする時につい前世の感覚でやってしまう。


「あのー無かったことに...できますか?」


 メディアへの露出などは絶対にしたくないので先生などに直接進言して誤魔化してもらうのが常だった。


「いやー、今日も凄いなブレイブは。実は人間じゃなくて宇宙人だったりしない?」


 そんな軽口を叩いてくるのは幼馴染の三ヶ島怜みかじまれい。保育園の頃からの中だ。家が隣同士ということもあり、毎日のように遊んでいる。


「...そんな訳ないだろ。俺はちょっとばかし力強いだけの一般人だよ」


「でた!一般人宣言。ま、力をひけらかしたく無いのはわかるけどー。もうちょっと上手くやったら」


 ニヤリと笑いながら図星を突かれて言葉に詰まる。


「わかってるよ。じゃ、また明日な」


「うん!また明日!寝坊するなよー」


 前世が勇者であった彼はその戦いに身を置いていた日々を忘れることにした。もはや自分は元いた世界の住民ではない。日本に在住する小学生なのだ。転移も転生も使えなければ元の世界に干渉などできない。苦しかった日常を忘れるようにブレイブは日本での暮らしを楽しく過ごしていた。

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