【番外編】3.11

先週からNetflixで公開されてるドラマ「The day」を見たので

あの日の記憶がふと頭に浮かんだのでここに記す。


当時の僕は高校2年、実家には僕と母と妹3人で父は単身赴任で岐阜にいました。

その日は、学校ではは新入生の合格発表日。

僕の学校が少子化の影響で女子校から共学になる時で

その時の新入生は第1期生というところだろうか。

教室の外からは受験に合格し喜ぶ声で溢れていた。


彼らが帰った後、5時限目「英語の授業」だったが

担任の教師が10分以上来なかった。

僕はクラスメートに「今日自習なんじゃないか?」と

笑いながら呑気にしていた時に最初の揺れが来た。


机の下に入って今まで体験したことのない揺れだった。

一旦揺れが収まった時、僕は教室の窓を見た。

向かいの棟には職員室の廊下があって15人くらいの先生たちが

何やら話し合っていた。僕はそれを見て話し合ってる暇があるなら

教室こっちに来いよって思った。


同時に僕は「死にたくない。」と思っていた。

学校は老朽化していて僕がいた教室は3階立ての2階

揺れで上の階が崩壊し潰されて死ぬのではないかと思った。

僕は揺れが収まっているうちに少しでも現実逃避がしたく

隣のクラスの様子を見たり反対側の住宅地が見える窓を除いた。


異様なことに隣のクラスは、普通に生徒同士で話していたりと平然であった。

僕と目があった生徒が「あれ?松原じゃん。どうしたの?」と声をかけてきたが

返事はできなかった、こいつらどんだけ肝が据わってんだよって思った。

うちのクラスじゃ泣き喚いてるのもいれば僕みたいに顔には出さないが

恐怖で怯えてたり不安な奴だっているんだぞって思った。

彼女らは地震をアトラクション感覚で味わっているのではないかと思った。


それと反対側の住宅地を窓から覗いた時、すぐに見えたのは

平屋の一軒家の瓦が揺れでところどころ落ちていたのと

3月の寒い時期だっていうのに、初老の家主の白のタンクトップで

半パン姿で外でぼーっと立ち尽くしていた姿を今でも覚えている。


しばらくして英語の担任の教師が来て校庭へ移動。

校長先生からの指導があり解散、そのまま学校は1、2か月くらい休みになった。

僕は真っ先に近く住んでいる父方の祖母の家に向かった。

30年以上前に夫に先立たれ、一人で暮らしている。

家はものやたんすが多く、僕は祖母が下敷きになってないか心配だった。


余震で揺れる道を僕はひたすら早歩きで歩いた。

途中、工事現場の見知らぬおっさんに

「いやー、さっきは揺れがすごかったね。」なんて声かけられた。

僕はそうですねと軽く返事をして数分後、祖母の家に着いた。

祖母はいつも通り二階でこたつに入っていて無事だった。


祖母の家に僕はいたが携帯の充電が切れそうになり

近くのセブンイレブンに行って充電器を買おうとしたら

店内は暗いが非常用の灯りはついており、運よく充電器を買えた。

そのまま祖母の家に戻り、母とメールで連絡が取れ迎えを待った。


祖母の家の家具は多少揺れたが倒れてこなかった。

それどころか、祖母はいつも通り僕と会話をした。

長生きしてる人間はどこか平常心が鍛えられているかと思った。

それ以上に祖母自身が父曰く、全盛期がダブルワーク

祖父の亡き後の自営業の切り盛り、嫁姑(僕からして父方の曽祖母)問題に

耐えてきたという波乱な人生を送ってきた人だったらしい。


話が脱線してしまったので戻ろう。

しばらくして母が迎えに来た、祖母は大丈夫だと言い家に残った。

僕と母は帰る際に向かいにあった仏具屋で蝋燭を買った。

そのまま中学校にいる妹を迎えに行き帰宅。

電気は使えなかったが、ガスはプロパンだったので使えた。

この事があってせいか、オール電化にするとまた

こんな災害があったら将来的にやばいのではと僕は思った。


夜は寒く暗かったが蝋燭の灯りがとても暖かく感じた。

それと少しだけ心に安心感ができた。

翌日には電気は戻り、テレビを付けたら東北の被害

津波と原発の映像、ACのCMが延々流れていた。


この経験から僕は生きてるうちに

もう一度くらいはあの揺れに出会うかもしれないと思った。

いや、その覚悟はいつもしている。

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