4〜5歳・その1

4後半と5歳くらいの記憶の話。

祖父はセミリアタイヤではあったが大工の仕事をしていた。

今はない工場には当時の祖父と同年代の職人さんが2、3人出入りしていた。

僕は預けられていた時、祖父と職人さんたちに休憩するように声をかけるのが

習慣、ルーティーンに近かった。


僕とって工場は祖父の家で好きな場所だった。

入ってすぐ横に小さな冷凍庫がありそこには

アイスがたくさん入っていた。一番よく入っていたのは

祖父のお気に入りの赤城のいちごのかき氷とサクレという

レモンの効いたシャーベットだった。


その工場で僕は一度だけ祖父に怒られた事がある。

夕方一人で工場に入り、近くになった祖父の名前の一文字が入った

金槌を持ち、名前は分からないが木材を固定する機材を

それで軽く叩いた瞬間とき近くに祖父がいて一発怒鳴られた。

何て言ったか僕はもう覚えてないがいつも温厚な祖父が怒った。

それが僕が受けた祖父の最初で最後の叱責だった。


祖父は僕に唯一残酷な遊びを教えてくれた。

工場には沢山の木材が置いてある。

その塵が溜まる場所にはウスバカゲロウ

アリジゴクの幼虫が住んでいて所々

巣特有のくぼみがあった。


祖父はよくそこにアリを入れて僕に見せてくれた。

僕も一緒にやっていたが結構面白かった。

穴の中で踠き引き摺り込まれていくアリの姿をよく覚えている。

そういえば、祖父の家で生き物の話がもう一つある。

飼い犬の話だ。


僕が保育園を卒業する少し前までいた。

番犬「ケンちゃん」という白い雑種犬がいた。

祖父はよく知り合いから犬をもらっては飼うことが多かった。

僕が知るケンちゃんは母曰く「3代目」で他にもいろんな犬を飼っていたらしい。


番犬というよりかなりの確率でかまってちゃんな

バカ犬だったのはよく覚えてる。

僕がおやつをあげようとするとすぐに飛びつく。

そのせいか小学生になってからは正直

僕は犬が嫌いまでは行かないが苦手だった。

野良犬に何度か追いかけ回されたのもあったせいだろう。


話は戻るがケンちゃんの話だ。

ケンちゃんの散歩はよく祖父と行っていたが

もうすぐで家に着く時に、近くのクリーニング屋の隣の田んぼに

向かっていきなり吠えた後、目の前にあった田んぼに自ら落ちた。

僕と祖父で引っ張り上げるとびしゃびしゃ泥まみれだった。

祖父が「このバカ犬!」と一発喝を入れたのはよく覚えている。





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