相部屋回避
「ありがとう!!キミがいなければ作物への被害がもっとすごいことになっていた!」
二匹目のペガサスを退治してから数分後、この村の駐在騎士が俺たちに暑苦しく感謝の念を伝えてきた。
彼の名はベテル。
俺より7歳ほど年上の同期で、金棒を使った戦闘と暑苦しさに定評がある男だ。
「……もしかして、ベテルもペガサスと戦っていたのか?」
彼の左手に握られていた白い翼を見て俺は即座に事実確認をする。
「その通り!!すっごく大変だったが、なんとか頭を叩き潰して倒せたぞ!」
「ペガサスが、一度に3体も……ありえない……」
俺もベガと同意見だった。
ペガサスが希少な魔物とされる理由、それはめったに人里に現れないというのもあるがそれだけではない。
「ペガサスは10年に一度しか生殖行為を行わなくて全体数が少ないとされているのに、ここ二日で4体も人里に現れるとは……」
「違和感はそれだけじゃないよアル君。そもそもペガサスは本能的に群れないんだ」
やはり、今回の件はあまりにも異常すぎる。
頻繁に人里に出てくる件なら偶然で済ませられるが、群れていることに関しては偶然では説明できない。
「つまり、この異常現象はいったいどういうことなんだぜ……?!」
「……わからない。でも、今回の件を首都の騎士団本部に伝えてしばらくは警戒した方がいいと思う」
「……了解!!」
それからベテルはすぐさまこの村の駐在所へと駆け出していった。
おそらく、本部に今回の件を伝えるために電報を打っているのだろう。
そして、ベテルと入れ替わるように先ほどまで避難していたであろう村長のタイオウさんが出てきた。
「この度は私たちの村を助けていただきありがとうございます!本当に、本当に本当にありがとうございます!」
「いえいえ、魔物駆除は騎士として当然の責務ですから」
「同じく、魔物駆除の援護は魔物学者として当然の責務ですので」
「まあまあ、それはそうと今夜はうちの村で泊っていきませんか?もちろんタダで一番いい部屋に案内しますよ!」
「では、お言葉に甘えさせてもらいます」
こうして、俺たちの財布に3人分の宿泊費用分の余裕ができた。
その後、俺達はアンドロと合流し、村長が無料宿泊券を発行してくれた宿に泊まった。
なのだが……
「あっ、私とアル君が相部屋になっている……」
教授の催眠も解いたベガが宿泊券を見てとんでもないことに気付く。
タイオウさんは自分の妹でベガの師匠でもあるツキカから俺たちが婚約者であることを聞いていたらしく、気を利かせてくれたようだ。
「で、でも護衛対象のアンドロさんと違う部屋なのはまずい……よね」
「……そうだな」
正直、お互いのカッコいいところも見たあとで二人きりになったりなんかしたら俺たちの理性が持たない。
俺たちはなんとか合理的な思考を行い、相部屋を回避した。
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