第2話 聞いてた話と違うな

「君達は大陸最高峰とも称される、このアセント王国立高等学園への入学を果たした。これまでの努力と己の才覚が実を結んだ結果を、まずは誇って欲しい!

しかし、未来ある君達にはこれからの3年間をどう過ごすかが最も重要と言えるだろう!!」



眠い・・・眠すぎる。多分偉いであろう人の、長ったらしい話に加えて、ぽかぽかの日差しが睡魔と化して俺の瞼を下げようとしてくる。


断じて俺が悪いのではない。環境が悪い。


というかこのアセント王国立高等学園は、在学中の費用が全て学園持ちでお金がかからないことに加えて、自由な校風で他の学園より講義の必要出席日数も少ない、ってうちの村に偶然通りかかった旅の冒険者に聞いたから来たんだけどなぁ。


あの未だに壇上で熱弁してる偉そうなおじさんの話聞く感じ、かなり名門っぽいんだけど。なんかすごい厳しそうなんだけど。もう帰りたいんだけど。


あの冒険者、まさか騙したか?


おかしいと思ったんだよ。凄まじく辺鄙なところにある上に何の特徴もないうちの村なんかに、「旅をしてるんだ。」とか言って来るやつなんて変なやつに決まってるよなぁ。


13歳からは大人として扱われて働かされそうだったから、これ幸いと置き手紙して逃げてきたけど、大丈夫かこの学園。ちゃんと俺のだらける時間、もとい自分を見つめ直す時間を確保出来るのか?


初日にしてもう不安しかないです。誰か助けてください。朝食作ったらあとは寝てても良い職場とかないですか?料理には多少の自信があります。


・・・まあ、無理か。


でも幸いにして名門っぽいところになんでかは分からないけど入れたから、3年間だけ頑張って後はめちゃくちゃ楽そうな職場でも探そう。


はぁ・・・。気が重くなるから先のこと考えるのはやめよ。


てか、まだ喋ってたのかよあのじじぃは。誰なんだよ。名を名乗らんかい。俺が聞いてなかっただけな気もするけど。


こんなん欠伸もでるわけだよ。皆も眠いだろ?眠いよな?・・・周りの気配でも探っとくか。


・・・え、なんでこいつらこんな目ガンギまりで話聞いてんの?怖っ・・・。


あと、1人俺の方ガン見してるのは何なの?こいつに関しては気配探るまでもなくさっきから気になってたけど。怖いって。


俺みたいな田舎者にはわからないけど、王都だと危ない薬が今年のトレンドです、みたいなことある?


こいつらなんなのぉ。友達も出来なさそ〜。村でもいなかったから、せめてこっちでは同世代の話し相手が欲しかったのに。


・・・この目ガンギまり集団よりは、ずっと俺のこと見てるヤバそうなやつの方がまだましか?


とりあえずこの、睡眠導入式が終わったら一旦教室行かないといけないらしいし、あいつに話しかけてみるか。意外に良いやつなのかもしれない。


なんならあいつくらいしか話しかけられそうなのいないしな。


あんまり馴れ馴れしいのもあれだけど、同級生になるわけだしなぁ。気楽に行くか。


・・・あれ?話終わったみたいだな。本格的に寝てやろうかと思ったのに。まったく、年寄りは話が長いんだよ。貴重な若者の時間をなんだと思ってるんだ。


皆席を立ち始めたし、多分教室に向かうんだろうから、教室の場所がわからない俺もこの人波に乗っかっていくとするか。


・・・なんかさっきから俺のこと見てたやつが後ろから近付いてきてるな。ちょっと怖いけど、後回しにしてもしょうがないし話しかけてみるか。


「よっ!俺はレイっていうんだ。これからよろしくな!」


やっぱ初対面は元気よく笑顔で爽やかにだよな。


・・・にしてもこいつめっちゃイケメンだなぁ。

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