冒険者は、我が道を行く
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学園編
第1話 異質な者
僕の目に彼は異質な存在として飛び込んできた。
世界最高峰の学園と言われ、厳しい試験を潜り抜けて世界各国から毎年精鋭50名だけが入学することのできる、アセント王国立高等学園。
卒業生にはその後の成功と名誉が確約されるとまで言われ、各国の天才達が集結する。
当然ながら、幼い頃から英才教育を施された貴族や大商人の子供達が受験し、死に物狂いでこの学園への切符を掴みに来る。
そして今日は夢にまで見た、アセント王国立高等学園の入学式。
入学生達の中に、この学園に入っただけで満足して燃え尽きるような凡才などいるはずもなく、これからのさらなる飛躍を各々誓い、皆目をギラギラとさせながら学園長の話を聞いている。
そんな中、1人欠伸をしながら外の雲を眺める入学生がいた。
この緊張感の中、あれほどまでに自然体でいられる人間など余程の馬鹿か、常軌を逸した天才だろう。
そして、この学園に入れている時点で答えは一択。
僕は天才だ。自分で言うのもなんだが天才だ。なんらなら、周りにいる各国の天才達から見た天才だという自覚もある。
同級生の半数以上は、貴族達が集まる上流階級のパーティなどで幾度となく顔を合わせてきた存在故に、自分の立ち位置も理解できている。
物心ついた時から、一度見たものは大抵理解できたし、一度覚えたことを忘れることはなかった。
加えて家の爵位は王族に次ぐ、公爵。対等に話せる友達など今まで出来なかった。
不本意にも『孤高』などと呼ばれ、どんどん周りとの距離は離れていき、いつも1人で行動していた。
寂しさを感じることはなかったが、ただただ退屈だった。
友人と笑い合う同年代を見ていると、誇れるはずの自分の才能を少し疎ましく感じる時もあった。
そしていつしか、対等に話せる友人が欲しいと言うのが僕の夢になっていた。
外を眺めている彼は、貴族のパーティでも会ったことが無いし、平民なのかな?
それとも遠い他国の出身なのかな?
この場において異質な存在ということを抜きにしても、不思議と彼にはとても興味を惹かれる。
この入学式が終わったら早速話しかけてみよう。もしかしたら、僕の退屈な日々に彩りをもたらしてくれる存在なのかもしれない。そんな気がしてならない。
もはや、学園長の長ったらしい話など聞いてもいない。彼から目が離せない。
あれ、いつの間にか入学式の全行程が終わっていたようだ。
教室に移動か。よし、話しかけに行こう。これほど胸が躍ることなど今まで無かった。
彼まで後5メートルほどまで近づき、声をかけようとしたその時、
「よっ!俺はレイっていうんだ。これからよろしく!」
彼は、いやレイはまるで僕が来ることがわかっていたかのようにくるりと振り返り、爽やかな笑顔でそう言った。
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