第21話 


「悪い悪い、久しぶりに肉食べるからじっくり味わいたかったんだよ、で? なんだっけ?」

「どんな集中力だよ…ちゃんと食べてんのか? そんなことより、友介お前、進路どうすんの?って話」

「あー…、まぁぼちぼち考えるさ。お前こそどうなんだよ」

「んあー…俺も一応考えてるわ」

「おいおい、自分で聞いておいて自分のは話さないのかよー」

「秘密だよーん」


 紀一はこういうところがあるが、憎めないやつだ


「……やっぱり、いやでも…」

「こっちのごにょごにょ言ってるのはっといてだな、就職とかはどっちでもいいんだ。友介が心スポ行くのは何か言いようのない不安があるからなのかと、思ってさ。もしかしたら就職とか将来に不安でもあるんじゃないかと思って」

「それはないかな。シンプルな好奇心だよ」

「そうだったらいいんだけど」


 納得したような顔ではないが、これ以上は深く立ち入れない、と判断したのかそこで切り上げた。別に大した理由ではないので聞かれても困らないが…




 そうして時間を過ごしていた。きちんと菊璃にも肉と酒を飲み食いさせることもできた。感想としては、肉はとても美味しい、お酒はあまり好きではない、とのことだ。

二人の一面を見られて満足だが、僕の身体には日本酒のアルコールが入っているので、千鳥足とまではいかなくとも、もつれる感じがする。

僕は二日酔い予防のためにご飯系のメニューを注文するのだった。




「いやー楽しかったー! 友介は飯ちゃんと食えよ! あんなにがっつくなんてなぁ」

「ははは…そうするよ」

「…」


 紀一の妹の樹奈はいまだに僕を見ている。まるで観察者のような目付きだ。なんというか僕のような、そんな感覚がした。


「歩いて帰れるのかよ? 足取りも覚束ないし…」

「すぐだし大丈夫だよ、それに酔いも大分冷めてきてるから、もうしばらくしたら完全に冷めると思うし」

「ならいいけどよ。ほら樹奈、いつまで友介見てんだよ。惚れたのは分かったから」

「んもー! 違うよー! …って言っても分かってくれなさそうだからいいや。友介さん、困ったことがあったら兄ちゃん越しにでもいいんで連絡くださいね! …絶対にですよ!」

「は、…はい」


 彼女の圧に気圧されてしまった。

…それでも連絡はしないと思うけど。




「はぁー、良う呑んだ! 次も行きたい!」


 僕たちは何事もなく家に着き、部屋でゆっくりと過ごしていた。

当然のごとく、柚月は僕のベッドに腰掛けるの何なんだ?


「柚月様…もう少し自重してください。私と友介様は心底肝を冷やしましたよ」

「本当にな………それより、紀一の妹、樹奈についてどう思う?」

「なんだ?恋愛相談か?」

「違うわ! 二人共あの子に見られてしまっていた可能性があるんだけど」


 樹奈は幽霊が視えるのだと言っていた。事実霊体の状態の二人をうっすら視れるだけの力がある。最近視えるようになった樹奈でもうっすら視えるのなら、高位の霊能力者ははっきり視える可能性がある。そうなると『悪霊退散!』とか言って二人が祓われる恐れがある。


「確かに…わたし達の姿がうっすらだけでも視えるというのは、少し危うい。人間一人消してしまうと混乱を招く。昔に比べ、人の繋がりが広いように思えるな。学校にも通っているのならば猶更だな…」

「対策しないわけにもいきませんね。あの人間のことですから、ここにも来そうではありますね…」

「いやいや、それは言いすぎでしょ…」


 とは言ったが、実際家に突撃してきそうではある。

その様子が想像できるのだから。三人はうなり声を上げるしかできなかった。

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