第18話 飯食べに行かね?


 のほほん、と時間を過ごしていると突然携帯の着信が流れてきた。

相手は僕の友人。偶に遊びに行ったり、ご飯を食べに行ったりする程度の仲だ。

僕は着信に出る。


「もしもし?」

『あ、もすもす~。今日暇? 飯食べに行かね? こないだ勝ったから俺の奢りでいいで?』

「懲りないヤツだなぁ、この間ボロボロに負けて生活すら危うかったクセに」

『それは過去のことだからいいの! で、どうする? 飯行く?』


 僕は二人に目配せする。二人のジェスチャーは違うけどOKのサインが出ている。二人には後で説明をしておく。

 今電話している相手、もとい僕の友人は『露石紀一つゆいし のりかず

絶賛ギャンブル中毒だ。ただギャンブルを友人を誘わない良識はある人間だ。

バイトで資金を集め、それを元手に投資している、とのことだ。


「行くよ。何を奢ってくれるん?」

『あー、お前んちから近いところが良いだろうし、あの焼き肉屋でいい?』

「もちろん」

『ほな、三十分後に現地集合ってことで、あ、あとアイツも呼んどいたから』

「アイツ? 誰? お前のアイツは多いんだよ」

『まぁ来たらわかるからー、バーイ』…ッーッ―ッ―


 会話だけでも何となくどんな人間か分かるだろう。気遣いできてるようで出来てない人間、それが紀一だ。

紀一が奢りだ、と言っていても財布は持っていく。


 二人に今から外食する、と伝えた。すると、柚月はズルい! と言わんばかりに駄々をこねだした。別に一緒に外食するのは問題ないのだが、そこに友人が絡んでいるのであれば少し遠慮して貰いたい。

 二人と外食はしたことがある。たまには手を抜きたい時だってある。配達を頼んだりすることもあるが、いつも家の中で食べるだけじゃ飽きるだろう、と思って今月一回二人を連れて外食をしたのだ。

 家の中じゃなかなか手の込んだ料理は出ないので、二人には良い物を食べさせられたと思う。


「また、別の日に行こうよ。今日は僕の友人も居るわけだし」

「うぅむ…友介だけ美味しいものを食べるのはズルいぞ」

「柚月様…友介様も別の日に機会を設けて下さられますから、ここは我慢を…」

「…菊璃、お主も美味しいものを食べたいであろう?」

「耐えた先にある景色ほど美しいものはあありませんよ」


 菊璃の説得が功をなしたのか、柚月が納得した。

…いや、あれは別のことを考えているな。


「ぬぅ…仕方あるまい、だが友介、見に行くだけならいいであろう?」

「……見るだけならいいですけど、見られないでくださいよ」


 任せておけ、と胸を張って言っているのだが、やはり心配だ。

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