第14話 憑依


 憑かれる。オカルト板で何度か見たことがあるモノだ。

幽霊に、怨霊に、浮遊霊に。対象は様々だが、大抵精気が抜けていくような感じがする、と書き込まれている。

 だが、僕に憑くのは神様だ。神格を持っているのだ。一体どうなるのか?

精気が抜ける速さが幽霊の比でないほど速いのか。はたまた精気が抜けないのか。どうなるのか非常に気になる所だ。

 僕の身体で試すのか…危険なこと極まりないのだが…

まぁ、いいか! ものは試しってことで二つ返事でとり憑くことを了承した。

バッチこい! と身構えるが、何もしてこない。


「で、いつ憑くんですか?」

「何を言っておる。もう憑いておるぞ。わたし達は滅多なことが無い限り他の人間には見えんと思うぞ」

「相当強い人間には見えると思いますが…、それでもはっきり見えるまでにはいかないと思われます」


 そうなのか…、恐らく見える人間なんていないだろう…見えたところで、どうこうできないだろうし


 僕はドアノブに手を掛けドアを開ける。

外はまだ日が昇っている。太陽が燦々と地上を照らしている。温度も適温で散歩も気持ちよくできそうだ。


「ほう…今の時代はこんなになっているのか… 友介アレはなんだ! 箱がもの凄い速さで走っておったぞ! 飛脚なんておらんかったよな?!」

「はい、確かにおられませんでしたね…! 他の箱も同じくらい早く走っていますね…見たところ、底についている輪っかが転がって上の箱を運んでいるようですね」


 外に出た瞬間二人がはしゃいでいた。初めて見る車を箱と呼んでいる。

昔の人が今の日本を見たらこんな感想なんだな、と思った。

自動車免許を取ったら二人を乗せて走らせてみたいな、どんな感想が出るのだろうか、早くてびくっりするだろうな


「アレは車です。駕籠かごの人力じゃない物です。あ、他の人が近くにいるときはお二人に話すことができないのでご理解お願いしますね」

「あい分かった。それにしても小屋のような建物すらないのか…寂しさすら感じるな」

「そうですね。昔の面影を思わせるようなところも残っていないのも寂しいですね」


 二人が感慨深そうに街を見ている。二人の心情は分かる。地元が見ないうちに別の場所のようになっていたら、昔の面影が残るところを探してみたくなるような感じだ。今度昔の建物が残っている場所を調べてみよう。あったら二人に話してみよう


 コンビニは徒歩で十分位で着く。

人通りも来客人数もそこそこ少ないので少しだけ安心しながら来店できる。

ちなみに、今の神様達は僕に憑依しているので、物を触れることができないのだとか。相当力を使わないといけないらしいので、やらないだけ、と座敷童が補足してくれた。

僕はコンビニのドアを開けて入店する。コンビニの入店音がそれと同時に鳴った。神様達は鳴った音にビックリしてしまい、周りをきょろきょろしている。


「いらっしゃいませー」


 レジからコンビニ店員の声が掛かる。

僕は買い物カゴを持ち、まずはまっすぐにドリンクコーナーに向かう。向こうで座敷童が出してくれたお茶と比較すると、断然落ちるがお茶を一つ入れる。

 こういうのを飲んでいる、と神様達にも教えられるだろう、ということで一つカゴに、あとはスポーツドリンクや、炭酸飲料とかも入れていく。その後に、パンコーナーで菓子パンや惣菜パンをカゴに入れる。対面のコーナーのデザートを何個か入れる。その間も神様達はコンビニの商品を物珍しく見ていた。



 袋がずっしりと重い。会計もかなり高くついた。まぁ…神様達の歓迎会だ、と思えばいいや。それにしてはかなり質素だけど

家が近いというのはこういう時に便利なものだ。やや多く買い物をしても苦が少ないのだから。、まぁ就職したら変わるだろうし、今のうちだ。



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