第10話 依り代


 外に出て、神社の中にあるモノを座敷童が渡す。

正方形の小さな木箱だ。中身は確認しない方が身の為だと言われ、何があっても見ないようにしよう、と固く決心するのだった。

箱をなるべく揺らさないように慎重に持って帰る。帰ると言っても実家では無い。

自転車だから地形の凹凸で振動を直にもらうのでスピードを落として帰るのだった。



 実家から僕が住んでいる部屋に到着したのは五時過ぎだった。太陽が昇っていて、人間の営みが始めりだす。

無理して眠らずとも何とかなるのだが、疲れてしまっているので部屋に入るなるなり木箱を机の上に置き、布団で横になる。

色んなことがあり振り返る余裕なんて無い。

意識が朦朧としだし、夢の世界へとダイヴする。




「お、やっと起きよった。おーい友介が起きたぞ」

「おはようございます」

「ぉ、おはようございます……あっ!!」


 まずい…神棚を買ってない! 今から行っても間に合うか?!

ひとまず神様たちに説明をしよう、と思ったところで、神様が


「ここが友介の住んでおるところか…随分と狭いのぉ」

「一人で暮らすのであれば十分だと思います」

「そうじゃ友介、箱なんじゃが、棚の上に置いたからの。見たところきちんと清掃もされておったからの。」

「え、あ、はい」


 棚といのは部屋においてあるカラーボックスのことだ。棚の中には漫画や小説が仕舞われている。今はもう読んでいないのだが、捨てるのも勿体ないのでそのまま置いている。

そのカラーボックスの上にポツンと置かれている。

こんなところで良いか? と思ったが、神様も「書物の上に置いておくなんて、贅沢贅沢ー!!」と喜んでいたので、何も言わないっでおこう。


 ふと思う。神様達はに居ればいいのに、どうしてに来たのだろうか、と。

その疑問に答えたのは、座敷童だ。


「依り代となる場所、物が気になりに来たのです。さすがに机の上に、という訳にはいきませんので、比較的に高い場所に置いておきました」


 僕が寝ている間に、そんなことが…

申し訳ない気持ちがあるのと同時に尊敬の念が湧いてくる。

神様が何かを頬張りながら


「ふむ。話が終わった様だのー、ふむ…なかなか甘露だの」

「え…神様、それどこから」

「どこって、そのの中からよ。中は冷やされておってなかなか気持ちよさげだが、どうやって入るのか?」


 、つまり冷蔵庫だ、しかも開けっ放しだ…

どうしよう、相手が相手なだけあって怒るに怒れない…いや、怒ろうとするのが間違いなのか?

そこでハッとする。座敷童は思考が読めるので、僕が怒ろうとしていたことに気付いているだろう

恐る恐る座敷童の表情を確かめると、座敷童はワナワナとしていた。

どうしたのか、と思っていたら


「も、申し訳ございません、友介様! 主様、そちらの箱の中の食べ物は友介様の物らしいです…」

「ほう、それは悪いことをしたなぁ…友介よ、詫びよう」

「あ、いえ大丈夫ですよ、食べ物はまた買えばいいですし、それにお口に合って良かったです」


 こんなに大事になるとは思ってもいなかった。神様や座敷童に謝らせてしまったことを反省する。


「そうじゃ、詫びといってはなんじゃ、わたし達の前でも普段のように過ごしてもらっても良いぞ。言葉遣いも気にする必要もない。」

「で、ですが…僕は人間で、神様は神様ですから…」

「友介様、主様はそのようなことを気にするお方ではございません。友介様程ではございませんが寛容なお方です」

「む?どこか馬鹿にしたかの?」


 いえ、と頭を横に振る座敷童。神様と二人でいる時とか、こんな感じなのかな、と思った

言葉遣いを楽にする、か…今すぐには難しい。社長や学園長とかに、同じことを言われても楽にできる気がしない。相手が神様だからなおのこと。

 おいおい直していく、直すというか楽にできるようにする、とやんわり伝えた。

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