第9話 使い方


の使い方を教えてやろう…と思ったが説明するのは苦手だからあの子に任せるとしようかの。おーい」

「はい。承りました。それでは外へ出ましょう」

「わかりました。それでは失礼します」


 この座敷童は思考を読むのだそうだから、失礼なことを考えないように努める。

座敷童が襖を開けてくれているので、神様に頭を下げ立ち上がり部屋から出る。

するとに来た時の感覚がした。それと同時に外に出ていた。

真っ暗で明かり一つない森の中。懐中電灯を取り出そうか、と思ったところで背後から声が掛かる。


「それは出さなくても大丈夫です」

「!! あ、あぁ、はい」

「それでは使い方を教えます。と、言っても思うだけですので簡単です」

「それだけですか? もっと、こう…不思議な力を籠めるモノかと…」

「あなたが簡単に使えるようになっておりますので、どのような力かは分かりませんが、そのような力は要らないです。それではやってみてください」


 そういわれたので勾玉を握り、目を瞑りあの場所を想像する。

するとあの場所に行った時の感覚がする。そして目を開けるとあの場所の玄関にいた。


「成功ですね。それでは主様のもとへ行きましょう」

「わかりました」


 座敷童の後を付いていき、部屋に入る。


「ちゃんとできたようだのぉ。まぁ座らんか」

「それでは、お言葉に甘えさせていただきます……あれ、服が変わってます? 」


 神様の前の席、座布団のあることろを座る。神様の衣服が変わっていた。

女雛の衣装から浴衣のような衣服に変わっていたのだ。


「主様…!」

「良いではないか。先ほどまで湯浴みしておったのだ。それにこっちの方が楽だしのぉー」

「お客人の前ですよ…はしたないです」

「ははは! 友介は気にしてはおらんようだからよいではないか」

「はぁ…」


 湯浴みをしていた…? ほんの数十秒しか経っていないと思うのだが…

恐らくここと外とでは時間の流れが違うのだろうか? だとしたら僕は一体外の時間でどのくらいの時間を過ごしたんだろうか、と思っていると


「ご安心ください。ここでの時間の流れは主様がある程度操れます。外では一刻(二時間)ほどしか経っていないでしょう」

「なるほど。ありがとうございます」


 ひとまずは安心できた。これがもしも十日過ぎてたなんて言われたら眩暈を起こしていただろう。


 それより、湯浴みにいっていたので髪の艶が増し、頬は紅潮しているので艶めかしい。

あまり見続けるのも失礼だろう。女性はそういう視線には敏感だと聞く。その証拠に座敷童に睨まれている。無表情なので分かりにくいが、視線に棘がある感じがある。思わず目を逸らすのだった。


「そこまでにしてやったれ。わたしに見惚れておったのだから誇らしいことだろう。それで本題に戻そう。友介に頼みがあるのだ」


 神様からの頼み…人間の僕ができることなんだろうか、と思い思わず固唾を呑む。

一体なんだ…信者を集めるのか、神社の再建、復興か? 貢物だろうか…

色んな思考を巡らせながら神様からの言葉を待つ


「安心せい。無茶なとこは頼まん。頼みというのは新たな住処を用意してほしいのだ」

「住処? ここじゃない場所ですか…?」

「ここ、というより外の建物の変わりです。あのような建物ではなく代わりの依り代となる物が必要ということです」

「なるほど…」


依り代となる物…神棚とか? いや、小さいか…もっと立派なところがいいのか? なにがいいのか分からない。そもそも依り代に適した物は何なんだ?

と考えていると、助け舟を出すように座敷童が


「友介様、物の大きさや形は問いません。お考えになられている神棚が最適かと思います」

「そうなんですか。でしたら買うことができると思うのでそれにしましょうか」


 そう答えると神様から嬉しそうな声が挙がる。


「おお! 用意できるのだな!」


 はい、と頷く

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