第6話 心霊スポット?いいえ神霊スポットです
女性の幽霊が目が見えるようになるまで待った。見た目は艶のある長い黒髪の若い女性だ。身長は僕よりも少し低い位だ。
目をこしこしと擦って目をしぱしぱとさせている。その間、懐中電灯の光は消しておいた。
そこそこ光量の強い懐中電灯だから眩しかっただろうなぁ、と思うが、そんなに驚くことか、と思ったりもする。
「ひどい目にあった。其方、名を何という」
「あ、僕は大垣 友介といいます。 あの…幽霊さんの名前は?」
「誰が幽霊じゃ! わたしは…わたしは……… なんていうんだ?」
知らんがな。
名前を忘れたのだろう。幽霊って名前を忘れるのか。かなりのご高齢? なんだろう。幽霊に年齢があるか定かでないが。
「まぁ、兎も角! わたしは幽霊ではない! 名は忘れたが、神霊ではあるな」
「心霊?じゃぁ幽霊じゃ…」
「神霊だ! 神の霊と書いて神霊だ! 文字に起こさねば分からぬか?」
「あぁ、神霊 ……神霊? え、神様なんですか?」
「まーのぉ~」
満更でもない様子だ。
「して、おぬし、何用でここに参った?」
「特に理由はないんですけど、強いて言えば心霊スポット巡りですね」
「おぬし…あまり褒められたことではないの…それは」
神様からも心スポ巡りは良くないと太鼓判を押される。
実際良くないのだから反論しようもない。
「生憎とここは心霊すぽっとなる所ではないな。言うなりゃ神霊すぽっと? かの~…まぁ立ち話もなんだ、ウチで話さんか」
「えっ…ウチってまさかアレですか?」
僕がアレと言ったのは目の前にあるボロボロの神社である。蜘蛛の巣も張られているし虫もウヨウヨいるであろうあの神社だ。
「ま、まぁ見て呉れは悪いが中は最高じゃよ? どうだ?」
「え、えぇー…な、ナンカワルイシ、イイデスヨー」
「どうしてそう片言なのかはわからぬが、遠慮するでない。ほれほれ」
と、僕の背後に回って背中をグイグイ押してくる。触れるのか、なんて考える間もなく僕は神社に近づいていく。
すると、生暖かい空気が肌をなでる感覚がすると、視界が別の世界を映し出していた。
いや、正確には別の世界に入っていたのだ。
『神隠し』
これが神隠しか、と感心する。
先ほどの神社の中身を想像できない、きれいな部屋がそこにあった。
和風の家の内装と言えばいいのか、お座敷のような内装だ。
座敷童が出てきそうな雰囲気だ。実際いそうだし。
「主様、お帰りなさいませ。何か変わりありましたか?」
「うむ。外でこ奴がおってな。連れてきた」
黒色の薔薇模様が入っている振袖を着ている、おかっぱ頭の似合う、まさに座敷童そのもの、ってな感じの子が背筋を伸ばした小さな女の子が出迎えてくれた。
あー、こんなことなら和菓子か何か持ってくるんだったな、と思ったが、こんなことになるなんて想像つかなかったのでしかたない、と諦めることにした。またの機会…こんな機会がまたあるのかだが。
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