第5話 邂逅
影が引っ込んだ、神社の石階段の先を見つめながら足を進める。
一段、また一段と上るたびに、草木のざわめきが強くなっているような気がする。雰囲気でそう感じているだけなのかもしれないけども…
最上段を上ると神社の全容が分かる。
木製の神社、いや、ぱっと見だと祠に見える。中に入れるだろうし、何より扉が若干開いているのだ。
凝った飾りもなく、木でできたそれは、ボロボロで蜘蛛の巣が張っている。
中は埃や虫でいっぱいなんだろう、と思っていると、ガタッ、と音が鳴る。
草木から出る音では無い。明らかに木材の音だ。
一瞬、黒い影が動いたようにも見えた。雰囲気が作り出した幻影かもしれない。今のが猫で、「なんだ、猫かぁ」で終わればそこまでだけど、それでも神社の中は覗くつもりでいる。
そろりと近づいていき、建物に接近する。
周囲を見渡し、照らし、誰もいないことを確認する。意を決し神社の戸に手をかける。
「何奴だ!」
時代劇もびっくりの掛け声が僕に掛かる。懐中電灯を声の出た方へ向け確認するも、誰もいない。
自作の笑い袋、いや声袋かがあって、なにかの拍子に起動したのだろう、と思いそれを探す。イタズラにしてはネタが古臭い。
「驚くではないか!」
また違う方向から声が掛かる。若干上擦った声が聞こえ、また懐中電灯を向け確認するも、誰もいない。
また笑い袋の一種かぁと思い探しだす。最近は笑い袋でも遠隔で操作できるんだろうな、どういう仕組みなんだろう、と考えているとまた声が掛かる。
「その光るモノを向けるでない! 眩しいではないか!」
これまた違う方向から声が掛かる。今度は懐中電灯を向けずに振り向き、声の正体を確認する。光っていた場所を見ていたので、目が暗闇に慣れるのに少し時間がかかったが、確認できた。
雛人形の女雛が着ている装束――
そこまではただコスプレしている変な人で済む話だが、事はそれでは済まない。
宙に浮いているのだ。数センチ浮いてるのではなく、僕を見下ろす形で浮いているのだ。
後ろにワイヤーとかも見当たらない。本当に目を疑う光景だ。これが怪奇現象かと感心していた。
すると女性は徐々に宙から降りてきて、目の前にやってきた。
女性はふるふると震えて俯きざまにこう言い放った。
「眩しくて目が焼けた! 暫し待たれ!」
「あ、はい」
幽霊に返事してしまった。
あ、目頭を押さえてる。目が疲れた時によくやるアレをしてる。
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