第4話 で…出ぇたぁ?


 実家を出て、自転車で目的地の神社へと向かう。

自転車は折り畳み式で、リュックの中に入るヤツで、ぱっと見普通のリュックと変わらない…むしろ普通のリュックだ。

 実家へはこのリュックとお土産だけ持って行ったので、今はリュックだけと身軽になっている。






 自転車で片道一時間、坂道もあってかなり疲労が溜まっている。

道は舗装されているといっても、かなりガタガタだ。車の通りが少ないので舗装する必要がそこまで無いのだと思う。事実行きがけで見かけた車は農作物を乗せた軽トラ一台だけだったし……


 実家あたりはかなり過疎化しているのは目に見えてわかる。コンビニまで車で三十分もかかるのだ。僕の向かう方向と反対で、この距離は隣の町まで行くのと変わらない。


 道中なんかほぼ森の中みたいなもんだ。某有名ジ〇リ映画で家族が車で山道に入っていくシーンが一番似ていると思う。

……まぁあそこまで舗装されていないわけではないのだが、気持ちは似ていると思う。




 自転車を折りたたんで、リュックに入れて、懐中電灯を片手に神社への道を歩いていく。日が暮れ、空が茜色になっている。暗くなる空を見て、いよいよか、と期待に胸躍る。

 今から向かう神社は、よくある神社のような石階段があるわけじゃなく、山の中にポツリとある。

かなり仰々しい祠みたいなものか、と思っていた。

神社までは昔の感覚で、山の入り口――自転車をリュックに仕舞った地点――から二十分くらいにあったと思う、まぁ小さいころの感覚なのでもう少し早く着くだろう。




 小学生のころ、ドングリを植えたら木が生えると聞き、ずっとドングリを植えたプランター――授業で花とかを植えるやつ――を見ていたことがあった。

先生やクラスメイトから、十何年もかかるから、と止めさせられたことがあった。

それでも、諦めず世話をしていたのだが、プランターがひっくり返されてたことがあった。その後しばらくはやる気にもなれず、そこからはどこか諦め癖が付いていた。

 それもこれまで…どうして僕は心霊スポットに行くのか…


「決まってるだろ…! 限界を超えるためだ!」


自分に喝を入れるためか、過去と決別するためか、はたまたカッコつけるためかそう声を大にして発したのだが、その後すぐ恥ずかしくなりそそくさと山に入っていった




 神社までの道中は完全に森なので、周りは木々に囲まれているし、何年も人が入ってなかったので草が生い茂っていて来た道、行く道を見失いがちになる。

現状草を踏んでいて靴に千切れた草や草の汁、泥が付いている。登山用の靴で来たら良かった、と後悔していたりするのは内緒だ




 神社まであと半分の地点で足を止めた

。異様な雰囲気が周囲を覆うのが感じられる。

心スポで恐怖を感じる現象の一つだ。(オカルト板調べ)

ということは、次に起こることは怪奇現象、もしくはか、だ。

自分の目で霊を確認できる、好奇心が僕を突き動かす。山道を進む足取りが軽やかになった気がした。




 進んでいくと木製の鳥居が見えた。不自然な場所に石階段がある。

一段目がやや高い不規則に整えられた石階段だ。

 近くに行くと鳥居のサイズが良くわかる。ぬきと呼ばれる柱の上と真ん中に乗っている(中間に貫いて入っている)板の下の方が、頭にぶつかるくらいの大きさだ。額束がくつか――鳥居の真ん中にある柱――がない。


 鳥居をくぐる前に一礼しておく、神社なのだから神を奉っているのだろうから

そして階段の一段目に足を踏み出した時に上に影があるのに気付いた。

懐中電灯を向けると影が引っ込んでいった。


「で、出ぇたぁ?」


 気の抜ける声が出てしまった。

心臓の鼓動が速くなるのが分かった

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