第3話 行ってきます
実家の生活二日目を終え、夕方頃神社へと向かおうとしているところだった。
自室から荷物を持ち、音を立てないように忍び足で玄関へと向かう。
玄関に着き、靴を履こうとしたあところで背後から声が掛かる。
「…友介」
「なに?父さん」
声の主は父さん『大垣 耕介』だった
真剣な表情で話しかけるので、思わず姿勢を正してしまった。
「お前が今からあそこに行こうとしちょることに関しては何も言わん。お前が行きたいけん行くんやろう?」
「……うん」
「母さんが知れば、本気で止めてくるやろうけん、黙っとくけど……」
父さんは再び真剣な表情なまま一呼吸間を開ける
確かに母さんは心配性なところがあるから、それとなく神社のことを聞いて、興味がない風に装ったのだ。
だけど父さんにはバレていた
そのあとに何を言われるのか、不安になってきた。
「じゃけど、絶対失礼なことだけはすんなよ。幽霊やって元は生きちょった、思えも馬鹿にされちょったら腹立つやろ」
「うん」
「でも、十分気ぃ付けて行くんやぞ、さすがに幽霊になったら何するか分からんけんの」
「わかった、ありがとう、父さん」
靴を履き、荷物を持って振り返る。
母さんが後からバタバタとやってきた
「友ちゃん、向こうでも頑張るのよ。偶には帰ってくるのよ。それとご飯はちゃんと食べるのよ? あと部屋の掃除もちゃんとすること」
「わかってる、わかってるよ」
「時間も時間だから電車来なくならない?もう一日泊まってもいいのよ?」
「友介もそろそろ行かないかんけんもうええんちゃうか?」
「うーん、それもそうね…友ちゃん体には気を付けるのよ?」
「うん、それじゃ行ってきます」
「いってらっしゃい」
本来なら止めさせるところだろうけど、父さんも分かっているんだろう
興味が湧いたことに対して止まらないことを、止めても無駄なことも
僕は玄関の戸を静かに開け、神社へ向かうのだった
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