第123話 似たもの夫婦
「りゅしか、ツヴェルカーン王国はどうなんら?」
「あそこはどうなんでしょう? 強いて言えば、エルダードワーフかそうでないかでしょうか? 鍛治の才に長けているかどうかになりますからね」
「おやかちゃらな」
「そうですね。エルダードワーフとそうでないかだと、能力の差が大きいと聞きましたね」
「ほぉ〜」
「ツヴェルカーン王国も貴族とかいないからな」
「そうなんや」
「おう。職業で差は出るだろうけどな」
「おやかちゃはえらいんら?」
「そうですよ。王の候補になっていた方だそうです」
「えぇー、しょうなんら」
ハルとカエデが双剣を作ってもらった親方だ。エルダードワーフの親方、ヴェルカーさんだ。
リヒトやルシカ、イオスの剣もメンテナンスしてもらった。今は、国を通して技術交流をする為のリーダーを務めてくれている。
「しょういえば……」
ハルが思い出した様に無限収納から双剣を出した。双剣といってもハル仕様だ。ちびっ子のハルに合わせてある。大人が見ると、短剣みたいなものだ。
「ハルちゃん、久しぶりにそれ出したな」
「ん、やっぱかっちょいいな」
ハルが双剣を見ながら、しみじみと言っている。普段、全く使わないのに。
「ずっと仕舞ったまんまで使えへんもんな」
「らってもっちゃいねーし」
「ハルちゃん、前もそう言ってたわね」
ハルは剣を使うのが、勿体無いという。せっかく作ってもらったのに。
「全然使えへんかったら余計に勿体無いで」
「ん、しょうらった」
そう言いながら、また無限収納に仕舞うハル。
「アハハハ。ハルには必要ないだろう」
「ハルちゃん、強いもんなぁ」
「あたしが守るから必要ないわよぅ」
シュシュとハルだと、どちらが強いのだろう?
「シュシュの方が守られてんじゃねーのか?」
「リヒトったらホントにデリカシーがないわ」
ほら、またリヒトは余計な事を言っている。
「ハルはあたちが守るなのれす!」
コハルだ。シュシュには任せておけないらしい。
「シュシュはまだまだピヨピヨなのれす!」
ヒポポの頭の上に乗って胸を張っている。コハルの方が断然強い。
ハルとコハルは最強のちびっ子コンビだ。
「ぶもッ」
ヒポポも負けじと一鳴きする。
「コハル先輩、お願いだからピヨピヨは止めて」
コハルには敵わないシュシュだ。
平和なティータイムを過ごし、もう直お昼だという頃に長老とアヴィー先生が戻ってきた。
「待たせたな」
「じーちゃん、ばーちゃん。もう昼飯らじょ」
「ハルちゃん、お腹空いたの?」
「ばーちゃん待ってたんら」
いやいや、ルシカに強請ってクッキーを食べていたじゃないか。
「長老、アヴィー先生、どうだったんだ?」
「おう、無事に許可を貰えたぞ」
「本当、長老って突拍子もないわ」
「アヴィーに言われたくないぞ」
「あら、あたし以上よ」
ああ、やはり何かやらかしたらしいぞ。
「いきなり大公のところに転移するのよ。驚いたわ」
「アハハハ、やっぱそうなんだ」
「リヒト、笑い事じゃないわよ」
「そんな事だろうと思ったよ」
「なんだ? 1番手っ取り早いだろうが」
「そうだけど。私は宰相位だと思っていたのよ」
どちらにしても、いきなりだ。突然行く事には変わりない。似たもの夫婦だ。同じような事を考えていたらしい。大公はもちろん、宰相であっても突然行くなんて普通は思いつかないだろう。当然、突然会おうと思っても会える人ではない。
「どっちも変わりねーだろ?」
「あら、リヒト。全然違うわよ」
違うらしいよ。どっちにしろ、突然転移で行くのは止めておこう。
「びっくりしてらしたわ。もう、目を大きくしてね。お口までポカーンと開けてらしたもの」
「ワハハハ」
「長老、笑い事じゃないわよ」
「だが、1番確実だろうが」
そりゃそうだ。この国で1番の権力者の許可だ。誰も文句は言えないだろう。
「しかし、大公は精霊樹の事をすんなりと信じたな」
「瘴気を浄化する魔石を設置する時に、精霊の話をしたからじゃないかしら?」
「なるほどな。重要な事だと分かってもらえて良かった」
アヴィー先生が説明していたのであろう。瘴気を浄化する魔石が必要だ。他国には幾つもあるが、この国には一つもないと。
「最初は精霊なんて、誰も信じてくれなかったのよ。私も見えないんだから仕方ないんだけど」
学園長でさえ、おとぎ話の中の事だと思っていた。この国では忘れ去られているんだ。
本当に存在して、色んな物に影響を与えているし守ってもいる。
太古のエルフは精霊が見えていた。意思疎通も出来ていた。しかし、瘴気を長期間に渡り浴びた事で意思疎通どころか見る事も出来なくなってしまった。
だが、ハルは見える。話も出来る。
最近では、そのハルの影響か長老も見える様になってきたらしい。
「『アヴィー先生は、おとぎ話を信じておられるのですか?』なんて、鼻で笑いながら言われたのよ。ほんっとムカつくわ。だから、あなた方は魔法もおとぎ話だと言うの? って言って、目の前に炎を出してやったのよ」
アヴィー先生もやはり突拍子もないと思うぞ。そこで、炎を出すという勝気さ。流石、アヴィー先生だとも言える。
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