第68話 病
「りひと、あの鳥しゃん早かったな」
「鳥か?」
「あんしゅいーりゅの鳥しゃん」
「ああ、レイクバードか」
「しょうしょう。超早かった」
「アハハハ、湿地帯でも関係なしに走るからな」
アンスイールの養殖をしている湿地帯にいたレイクバードという鳥さんだ。湿地帯であろうと湖の上であろうと関係なく爆走する。
「なあに? 鳥さん?」
「ばーちゃん、りぇいくばーろら」
「アヴィー先生、レイクバードっていってアンスイールが名産の湿地帯にいる鳥なんだ」
「まあ、その鳥さんに乗ったの?」
「しょう! みじゅうみの上れもびゅんびゅん走りゅんら」
「まあ、凄いわね。私も乗ってみたかったわ」
アヴィー先生、やはりお転婆さんだ。
そんな話をしている内にイオスが戻ってきた。
「長老、アヴィー先生、大変です」
「イオス、どうした?」
「この領地で病が出ているそうです」
イオスが調べた結果だ。この領地の中で病が蔓延しているそうだ。
皆、同じ症状だ。高熱が出て、体の節々が痛み出す。その内、ベッドから起き上がれなくなり寝たきりになってしまう。食事もだんだん摂れなくなりどんどん衰弱していく。
最初は1人だった。その内、あっという間に領地に広まったそうだ。
「それは、空気感染かしら」
「食べ物ではないそうです。1人を看病したらその人が移って、また次の人が移ってという具合にあっという間だったそうです。人手が足らなくて畑にも出られないそうですよ」
「ばーちゃん」
「ハルちゃん、放っておけないわね」
「ん、診てみてーな」
「そうね、長老」
「ああ、行ってみるか」
「長老、先ずは領主様にお会いしておく方が良いわ」
アヴィー先生の提案通り、領主邸へとやってきた。この辺りで1番大きな屋敷だ。
広い敷地の大きな家で、見るからに農家の家と行った感じだ。隣には小屋もある。収穫した物を保存しておくのだろう。
大きな屋根の3階建ての家。鉱石を切り出したレンガの様な同じ大きさの物を積み上げてある。
庭には薬草と、ここにも野菜が植えてある。普段の食事に使うのだろう。
大き目の窓が作ってあり、1階にはサンルームの様な場所もある。
その屋敷の前には農機具が沢山並べてある。
屋敷の前には門弟があり、そこに門番の様な人物が立っていた。
「領主様にご挨拶できないかしら。私はアヴィー・エタンルフレというの」
「え、アヴィー先生ですか?」
「あら、知っているの? そうよ」
「ああ、良いところに来て下さいました! 直ぐにご案内します!」
中に確認もせずに門を開けて案内してくれるらしい。
そして、屋敷の木でできた大きなドアをあけ、大声で領主を呼んだ。
「領主様! 領主様!」
「どうした、騒がしい」
「アヴィー先生です! アヴィー先生が来られました!」
「な、なんだと!? アヴィー先生だと!?」
屋敷の奥からドタドタと足音が聞こえてきた。出てきたのはシルバーグレーの髪に狼の耳があり、豊かな尻尾のある狼獣人の領主だ。頑丈そうな体形をしている。が、少し顔が赤いか? 発熱しているのではないか?
「アヴィー先生!」
「あら、領主様。ご無沙汰してますわね」
「良いところに来て下さった!」
「病ですか?」
「ご存知なのですかッ!?」
応接室に通され、アヴィー先生が状況を説明した。そして、領主は……
「医師に診てもらったのですが、一向に治らんのです。薬師殿が頑張ってくれていたのですが、その薬師殿も病に倒れてしまってどうにもならんのです!」
「領主様、あなたもじゃないの?」
「私はまだ軽い。症状の重い者は寝たきりになっておるのです」
やはり領主も病に侵されているらしい。
「アヴィー」
「長老、分かる?」
「ああ。ハル」
「じーちゃん、根っこがいりゅな」
「そうだな」
「ハル、私が持っている薬草では駄目なのですか?」
「りゅしか、この病に必要な根っこはとくべちゅなんら」
「長老、この病は何なの?」
「この領地に生えているのだろう。毒草の所為だな」
「毒草ですか!?」
「ああ。細い花弁で赤色の大きな花が咲くのだが」
「赤い花……」
「領主様、あの花ですよ。今まで見た事のない花が咲いていると言っていた」
「あれか!?」
今まで見た事のない花が咲いていたらしい。その花が長老の言う赤くて細い花びらを持つ花だ。
その花の花粉には毒が含まれる。1つ咲いている程度なら影響はない。だが、この時の気候だろうか。それとも花粉が飛んできていたのだろうか。
まとまった数の花が咲いたんだ。それが人体に影響しているらしい。
「珍しいんだ。こんなに影響が出る程咲く花ではないからな」
「そうなのですか? あなたは?」
「私の夫よ。エルヒューレの長老なの」
「あなたが長老殿! お噂は聞いております! 我が国に大変尽力して頂いたと」
「いや、まあ。大公と話す機会があったのでな」
この夫婦はやはり色んな意味で最強だ。
「この子は曾孫のハルなの」
「ひ、曾孫ですか!?」
一体、アヴィー先生は何歳なのだろう? と、きっと思っているぞ。アヴィー先生、美魔女だ。
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