第61話 ヒポポ爆走

 沢山出てきた蝶々さん。しかし、飛び方にまだ元気がない。フワリフワリとハルのそばへと移動しようとしている。

 その前のひよこさんと比べると全然元気がないぞ。


「ハル、ヒールなのれす」

「よしッ、ひーりゅ」


 ハルが両手を挙げてヒールと唱える。白い光がヴェールの様に降りて来る。

 蝶々さんも精霊樹も心なしか元気になった様な気がする。

 ヒラヒラとハルに群がる蝶々さん。


「ちょっとは元気になったか?」

「じーちゃんがヒールしたのにたりゃなかったんらな」

「それだけ、弱っていたのだろう」


「なあなあ、シュシュ。また蝶々なん?」

「そうよ。カラフルな蝶々だわ。みんなハルに群がっているわね」

「おう、ハルが光っている様に見えるぞ」

「本当だわ。綺麗ね」

「あの光が蝶の精霊獣なのですね」


 精霊獣に聞くのを忘れてはいけない。


「ひぽ」

「ぶもぶも」


 カバさんのヒポポが精霊獣に聞いている。蝶々さんがヒポポの周りに集まっている。


「ぶも」

「しょっかぁ」

「ハル、ヒポポは何と言っているんだ?」

「しぇいりぇいじょうおーは来てねーって」

「そうか。次に行こうか」

「しょーらな」


 残念ながら、今回も手掛かりはなかった。精霊女王は一体どこに行ったのだろう。


「じーちゃんちゅぎは……」

「ああ、見てみなさい」

「ん、わーりゅろまっぷらな」


 ハルはお手々を揃えて胸におき、そして目を閉じる。お決まりのポーズになってしまった。


「ちゅぎはねーな」

「ハル、ないのか?」

「この層にはねーな」

「そうだな、4層に行くか」

「じーちゃん、にーくしゃんに会っていこうな」

「おう、そうだな」


 ニークはアヴィー先生が育てた孤児で、今は立派に薬師をしてアヴィー先生の跡を継いでいる。


「ニークは久しぶりじゃないか?」

「らな。りゅしか、りゅしか」

「はい、どうしました?」

「はりゃへったじょ」

「そうですね。お昼にしましょうか」

「おう!」

「ルシカ兄さん、手伝うわ」


 ルシカとカエデが昼食の準備をする。ハルはコハルと一緒にヒポポに乗っている。


「ひぽ、だっしゅら」

「ぶもッ」


 ハルを背中に乗せて、ヒポポが走りだした。巨体なのにフットワークは軽い。なんせ、地面から少し浮いている。6本の足を器用に動かし尻尾もフリフリしながら背中の羽根をパタパタと動かして浮いている。そして、爆走だ。


「ハルちゃぁ~ん! あたしが乗せてあげるわ~!」


 ヒポポの後ろをシュシュが走る。一体何をしているんだ。


「アハハハ、シュシュの奴懲りねーな」

「ハルは何をやっとるんだ」

「しゅしゅ、おせー」

「遅いなのれす!」

「待ってぇ、ハルちゃ~ん!」


 只々、ヒポポとシュシュが爆走している。ずっと不憫だったからストレス発散には良いのかも。ハルはそこまで考えていないだろうが。


「じゅっと出てこりぇなかったかりゃな。たいくちゅらったよな」


 おや、少しは考えていたらしい。


「一緒に遊んでいたなのれす」

「しょっか」

「あたしはずっと小さくなってミーレに抱っこされてんのよ。ほんと、この国って面倒だわ」

「しゅしゅ、しゃーねー」

「ハルちゃん、だから今度はあたしが乗せてあげるわッ!」

「ハル、出来ましたよ。食べましょう」

「おう!」

「えぇーッ! 折角あたしの番だったのにぃ!」


 シュシュ、ご飯だ。


「あたしも食べるわ! こうなったらやけ食いよ!」


 意味が分からない。


「しゅしゅ、食べたりゃあしょぼな」

「ハルちゃん!」


 ハルは優しいね。美味しくルシカの作った昼食を食べた。ミネストローネ風のスープと、ハルの好きなとろけるチーズとスライスしたトマトが入ったホットサンドだ。

 あ~んと齧り付くハル。もうほっぺにチーズがついている。


「んめー」

「ほんと、美味しいわね」

「長老、次は4層のどの辺りなんだ?」

「今度は街中だ。どうやって目立たず精霊獣を呼び出すかだ」

「本当だな。今までは偶々人気がなかったからな」

「長老、夜にしますか?」

「そうだな。しかしハルが寝てしまうとな」

「らいじょぶら。飯食べてしゅぐらったら平気ら」

「そうか?」

「しょうら」


 両手でホットサンドを持って、モグモグとお口を動かしている。ほっぺにトマトスープが付いてるぞ。そのハルのそばではコハルがほっぺを膨らませて食べている。

 ああ、シュシュのお口の周りの白い毛が赤くなっているぞ。

 やはりそれらを拭くのはルシカだ。揺るぎないオカン位置だ。


「なら、それでいくか?」

「それしかないな。真昼間にヒポポやコハルは出せないだろう」


 食事も終え、パカパカと来た道を戻る一行。すると前から領民達が数人駆けつけてきた。


「なんだ?」

「リヒト、一応止まろうか」

「おう」


 リヒト達に用があるのか、片手を挙げている。待ってほしいのだろう。


「すみません! エルフ族の方々とお見受け致しました!」


 代表らしき男性が話しかけてきた。肩で息をしている。急いで走ってきたのだろう。


「突然申し訳ありません。エルフの方々をお見かけしたと聞いたもので!」

「まあ、落ち着くと良い。確かにエルヒューレからきたのだが」


 長老が対応をしている。なんとか呼吸を整え、男性が言った。


「お願いです! 助けてくださいませんか? 私共ではどうにも太刀打ちできないのです」


 また、何かに巻き込まれる様だ。

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