第45話 え? 寝ちゃった?
ハルの周りをヒラヒラと飛ぶ精霊獣達。ハルが光って見える。
「アハハハ! ハルが光って見えるぞ」
「本当ね、ハルちゃん可愛いわ」
「もう、ハルったら」
ハルちゃんご機嫌にお手々をヒラヒラさせながら踊っているけどね、それよりも精霊獣に聞かなければいけない事があるだろう? ハルちゃん、また忘れちゃってるか?
「ひぽー!」
「ぶもぉ〜」
おやおや、ヒポポも一緒に踊っているつもりらしい。尻尾の葉っぱをヒョコヒョコと動かしている。6本の脚でステップを踏んでいるのか? カバさんなのに、身軽だ。
「ハル、ヒポポに聞いてもらわないといかんぞ」
「あ、しょうらった。ひぽ、しぇいりぇいじょうおーが来たか聞いて欲しいじょ」
「ぶもぶも」
やっと話が進む。脱線が多いな。今日はとうとう蝶々のお歌で踊ってしまった。
「しかし、蝶か。パーピより小さいな」
「リヒト様、そうなのですか?」
「ああ、パーピより2回りは小さな蝶だ」
エルフ達が連絡手段に使うパーピ。蝶の精霊の一種だ。七色の翅を持つ。そのパーピよりもずっと小さい精霊獣。
心なしか頼りなく見えてしまう。どうか、元気でいてほしい。
「ぶもッ!」
「しょっか!」
お? 今までとヒポポとハルの反応が違うぞ? 心なしかヒポポの小さくてつびらな瞳が大きく見開いている様に見えてしまう。
「ハル、ヒポポは何と言っている?」
「じーちゃん、じゅっと前にしぇいれいじょうおーが来たんらって」
「そうか。で、どこに行ったのか分からないのか?」
「ひぽ」
「ぶもぶも」
「しょっか」
「ハル?」
ヒポポが話している事をハルが通訳しないといけないのはとっても不便だ。おまけに分り辛い。
「随分前だって言ってるからまた何百年も前かも知れないわね」
ああ、奴もヒポポの話している事が分かるんだった。
「シュシュ、そうなのか?」
「だって、精霊樹と精霊獣の時間の感覚って普通じゃないじゃない?」
「まあ、そうだな」
「れもじーちゃん、そん時しぇいれいじょうおーがあんしゅてぃのしゅをまわりゅって言ってたって」
「そうか」
「あんだって?」
やはり、ハルの長文はリヒトには理解できないらしい。長文って程でもない。リヒト、前回の旅はそんな事はなかっただろう?
「いや、ハル。前の方がちゃんと喋っていたぞ」
「しょっか?」
「おう、そうだよ。俺、理解できてたし」
「しょりぇはりひとがちょっとおバカになったんら」
「おバカじゃねーよ」
おや、それは分かるんだ。
「しかし、それならこの国で精霊女王は帰れなくなっているのかも知れんな」
「な、じーちゃん。しょうらよな!」
元々、その可能性が高いと思っていた国だ。どの国よりも自然が少ない。どの国よりも精霊がいない。どの国よりも浄化が出来ていないだろうアンスティノス大公国だ。
「よし、なら早くこの国の精霊樹を回らんとな」
「ん、じーちゃんちゅぎら!」
「ハル、分かるか?」
「わーりゅどまっぷらなッ!」
ハルはそう言ってまたお手々を胸に当てて目を閉じる。
次に向かうらしい。馬に乗って皆待機だ。ハル待ちだ。ハルはリヒトの前にチョコンと乗っている。ワールドマップをちゃんと見られるのかな?
「ハルちゃん、可愛いッ」
白いのがまた何か言ってるぞ。
「シュシュ、何言うてんの?」
「だってカエデ、あのハルちゃんのポーズよ。超可愛いじゃないぃ」
「そうか?」
「そうよぅ」
まあ、可愛いだろう。エクボのできるお手々を両手揃えて胸に当てて目を瞑っているんだ。可愛いか可愛くないかといえば、超可愛い。
え? ちょっと待て。長くないか? ハルちゃん手を胸に当てたまま眠っていないか? とうとうリヒトにコテンと凭れてしまった。ちょっといつもよりテンションが高いなぁと思っていたら眠かったのか。
「あぁー、忘れてた。ハルはお昼寝だ」
「アハハハ、そのまま寝てしもうたか?」
「無理をさせてしまったのでしょうか?」
「忘れておったの」
「ハルちゃん、変にテンション高かったもんな」
「やだ、可愛いッ」
白い奴はハルが何をしても可愛いらしい。
「今日はもう宿を取るか」
「そうだな」
結局、次の精霊樹のそばへ転移してから宿に入る事にしたらしい。いつもの様に長老が転移する。そして、イオスが先行して宿を探す。
もうパターンになりそうだ。
その間もハルはリヒトの腕の中でスヤスヤと眠っていた。
「宿、取れましたよ」
イオスが戻ってきた。なんだ、カエデも疲れたか? 大人しいな。
「カエデ、大丈夫?」
「うん、ミーレ姉さん。宿に入ったらちょっとだけ寝るわ」
おやおや、カエデも疲れたらしい。ハルちゃんに無理矢理付き合わされて蝶々を踊っていたからか?
そして、一行は宿に入る。ハルとカエデはベッドでお休みだ。
「長老、次はどんなとこなんだ?」
「ここからはまだ少しあるな。ここはまた獣人が領主をしている場所だと思うぞ」
「長老、来た事があるのか?」
「ああ、昔な」
長老は行った事がない場所の方が少ないのではないだろうか?
「この国で1番広い湿地帯なんだ」
「湿地帯か。さっきも湖だったろう」
「そうだな。しかし、また全然違うぞ。まあ、行けば分かるさ」
その日は宿でユックリする事にした一行。もう近くまで来ている。
明日はまた精霊樹を探しに出発だ。
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