第44話 ちょうちょう
「うわ……マジか、そうなっていたのか」
「どうした、リヒト」
「初めて木が育つのが見えたぞ」
「やっとか。リヒトの魔力量ならもっと早くに見えていても良いもんだ」
「アハハハ、やっとだ。スゲーな、コハル」
「こはりゅもしゅごいんら」
「ああ、そうだな」
「ひぽ、しぇいれいじゅうを呼び出してくりぇ」
「ぶも」
やっと自分の出番かと言いたげに、ヒポポが数歩前に出る。そして、一鳴きした。
「ぶもぉッ」
するとワラワラと精霊獣が現れた。小さな精霊獣がフワリフワリと飛んでいる。
「おー、きりぇーら!」
「スゲーな!」
「リヒトも見える様になったか?」
「ああ、長老。なんて神秘的なんだ」
「リヒト様、見えるのですか?」
「ああ、ルシカ。ハッキリと見えるぞ。沢山の精霊獣が出てきた。ハルの周りに集まっているぞ」
「ああ、自分も見てみたいわぁ~」
「本当ね」
「あたしは最初から見えているわよ。ハルちゃんは本当に愛されているのよ」
「シュシュ、精霊獣からなんか?」
「精霊獣だけじゃなくて、精霊そのものから愛されているわ。みんなハルちゃんの側に飛んでいくもの」
「そうなんや、ハルちゃん凄いねんなぁ」
さて、この地の精霊獣はどんなのかな? ハルちゃん。
「めちゃ、きりぇーら!」
そういって人差し指を出す。そこにフワリと止まった。
ヒポポが一鳴きすると、一斉に飛び出してきた精霊獣。
エメラルドグリーンの翅に、翅脈が淡いピンクで可愛らしい模様になっている蝶だ。アゲハ蝶位の大きさだろうか。しかし、精霊獣だ。よく見ると、細い触覚の先に小さな小さな葉っぱがついていて、お尻の部分にも小さな葉っぱが3枚付いている。
ハルの手にとまり足をヒクヒクと動かしている。
「ひぽ、何て言ってんら?」
「ぶもぶも」
「しょっか、どーてことねーよ」
「ハル、何て言ってんだ?」
「ありがちょって」
「そうか、良かったな」
「ん、りひともしゃわりぇりゅじょ」
「そうか? 俺もできるか?」
「ん。りひとら。いいやちゅらから、らいじょぶらじょ」
ハルがそう精霊樹に言うと、ヒラヒラと飛びリヒトの肩に止まった。
「アハハハ、ありがとうな」
リヒトも精霊樹と精霊獣に関わってきて慣れたのだろう。やっと見えるようになっただけでなく、精霊獣を触れるようになった。
「リヒト、進歩だな」
「長老、これで精霊が見える様になればな」
「ああ、そうだな。ワシも見たい」
エルフは精霊を大事にしていきた種族だ。エルフは精霊魔法を使う。遥か昔に精霊の姿を見る事が出来なくなってしまったが、それでも精霊はいると大事にしてきた。精霊が嫌がりそうな事はしない。精霊が棲みよい環境を作る。そんな事を続けてきた種族だ。
そりゃあ、精霊を見たいだろう。今は、ハルしか見る事ができないのだから。
「ハル、ヒールなのれす」
「コハル、俺がしても構わないか?」
「大丈夫なのれす」
「よし。じゃあ、俺がする。ヒール」
リヒトがそう詠唱すると、辺り一帯に白い光が下りてきた。
「リヒト、お前もじゃねーか。加減しろ」
「アハハハ。長老の気持ちが分かったよ」
そうだろう。出来るだけ多くのものに届く様にと思ってしまうんだ。それだけ、エルヒューレと比べると木々が弱々しい。
リヒトのヒールで元気になった精霊獣達がフワフワとハル達の周りを飛ぶ。
「本当に綺麗だな」
「らろ? めっちゃきりぇーら」
「ああ、そうだな」
「なあ、シュシュ。どうなってるか教えてや」
「そうね。リヒトがヒールをしたから精霊獣達が皆元気になってこの辺をフワフワと飛んでいるわ」
「どんな精霊獣なんや?」
「アゲハ蝶みたいね。お尻に葉っぱが付いているかしら」
「アハハハ、また葉っぱか?」
「そうね、イオス。精霊獣ってみんな葉っぱが付いているみたいね」
「そうなの? 見てみたいわね」
「な、ミーレ姉さん。見たいよな」
リヒト以外はまだ見えないらしい。魔力量がそう多くない獣人のカエデには無理なのだろう。なんとか、見せてやりたいものだ。ハルだけでなく、カエデ達だって精霊樹を探して旅をしているのだから。
「ちょうちょ〜ちょうちょ〜なのはにちょまれぇ〜♪」
「ハル、蝶の歌か?」
「しょうら」
「ハルがいた世界には色んな歌があるんだな」
「おりぇが覚えていりゅのはちびっ子が習う歌ら」
「そうなのか」
「ん。大人が歌う様な歌は知りゃねーんら。しんろかったから歌どこりょじゃなかったんら」
ハルの前世の話だ。20歳まで生きたんだ。普通、その年頃なら推しの1人はいてもおかしくないだろうに。歌も知らないと言うハル。本当に身体が辛かったのだろう。
「ハルちゃんが歌うのは全部可愛いで」
「かえれ、覚えて一緒に歌うんら!」
「えぇ〜! 恥ずかしいにゃぁ〜」
「らいじょぶら! 最初は蝶々ら!」
あらら、何故かハルちゃんが張り切っているぞ。
「ここれ、お手々をこうッ!」
シュバッとお手々を出すハル。その手をヒラヒラさせている。蝶の翅の動きを真似ているのだろう。なのに何故かお尻をちょっぴり突き出している。それは何だ?
「えぇー!」
「アハハハ! カエデ、可愛いぞ」
「イオス兄さん、やめてや。恥ずかしいにゃぁ」
「かえれ、お手々をこうら!」
「ええー!」
ハルのお陰で笑顔が溢れている。小さなお手々をヒラヒラとさせて蝶々のつもりらしい。そんな振り付けあったのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます