第11話 準備でルシカは忙しい
リヒトの実家に1泊し、ベースに戻ってきたハル達。早速、ルシカは旅に出る準備を始めた。
なんせ、ルシカは食事担当、製薬担当だ。持って行く物が1番多い。尚且つ、リヒトの補佐としての仕事の申し送り等々。忙しく動いている。
「リヒト様、準備しなくて大丈夫なのですか?」
のんびりといつも通り書類に目を通しているリヒトにルシカが聞いた。
「ん? 準備も何もなぁ」
リヒトは身体ひとつで良いらしい。
「ルシカ、こっちは構わねーぞ。準備を進めてくれ」
「はい、では」
そんなルシカの準備の一環でハルとミーレ、それにイオスとカエデは薬草採取に出ていた。
大森林は雨季の真っ最中だ、雨季といっても1日中シトシトと降ったりする事はなく、夕方にザッと降る程度だ。それでも湿度も高く気温が上がっているのでジメジメしているが日本の梅雨ほどではない。
大森林の草木もまだ葉に雨水が残っていたりする。大森林の緑の匂いが濃くなる季節だ。この雨季が過ぎると本格的に夏になる。雨季の間に水を蓄えた樹々が青々と茂る季節になる。だが、日本の様な大きな気温の変化はなく比較的1年中過ごしやすい。
「ハル、どこら辺にあるの?」
「ミーレ、あっちら」
ハルの精霊眼を頼りに薬草を探しているらしい。大森林の中をハルはシュシュに乗って進む。やはりシュシュに乗っている。
森の中は歩き難いから仕方がないか?
「ハル、最近本当によくシュシュに乗ってるわね」
「らって森は歩き難いんら」
「ベースの中でも乗ってるじゃない」
「らって階段があるんら」
「ちょっと太ったわよね」
「そうやな、特にお腹の辺りやな」
「みーりぇ、かえれ、らからこりぇは幼児体型なんら」
「そう?」
「しょうら」
「で、ハルちゃん薬草はどこなん?」
「あ、わしゅれてた」
おいおい、ハルちゃんしっかりしよう。
「カエデ、お前索敵もしろよ」
「イオス兄さん、してるって」
「嘘つけよ、右前方からくるぞ」
「え!? ほんま!?」
イオスが言った通り右側前方から魔物が出てきた。まだベース近辺ではそう大型の魔物は出てこない。今出てきたのも中型よりの小型だ。見た目はイノシシの様だが角がある。それが3頭突進してきた。
「全然分からんかった!」
「おらおら! しっかりしろよ!」
イオスの言葉がちょっと悪くなっている。カエデを煽っているのかの様だ。
「俺は手を貸さねーぞ!」
「当たり前や! 自分1日人で十分や!」
そう言いながらカエデが魔物に向かって行く。すれ違いざまに1頭、振り返って1頭、そして最後の1頭を正面から迎え撃ち仕留める。危なげなく魔物3頭をあっという間に仕留めたカエデ。カエデも強くなった。
「これ位どうってことないわ!」
「今日の晩飯だッ!」
「ここりゃ辺にありゅはじゅら」
ハルはマイペースに薬草を探している。多少魔物が出て来た位なら気にも掛けていない。それだけ、イオスとカエデを信頼しているのだろう。
「ハルちゃん、あれじゃないかしら?」
「しゅしゅ、どりぇら?」
と、まあ1人と1頭は相変わらずだ。
無事に薬草も採取してベースに戻ってきたハル達。夕飯のオカズもゲットできて良かったね。
「りゅしか、こりぇ食べれゆ?」
「ええ、食べられますよ。美味しいですよ。兎よりは歯応えがありますね」
「うしゃぎは超美味い」
「ハルは好きですね」
「うん、しゅき。らいしゅき」
「ふふふ。また道中で出しましょう」
「やっちゃ!」
ハルが好きと言っている兎。ドラゴシオン王国で退治したヒュージラビットだ。超足癖の悪い巨大な兎だ。
ドラゴシオン王国の遺跡を調査した時に沢山出て来た。その時に持って帰って来ている。あれからずっと好きらしい。ハルに言わせると……
「脂もありゅのにあっさりしていてやわりゃかい」
だ、そうだ。食レポありがとう。
「ハルは準備は良いのですか?」
「おりぇ、なんもねー」
「そうですか。では、夕食にしましょうか?」
「ん、やっちゃ」
ハルはもう既に自分用の椅子に座ってスタンバイ完了だ。いつでもどうぞ状態だ。
そこにリヒトが顔を出した。
「ハル、もう食堂にいるのか?」
「りひと、りゅしかにたのまりぇた薬草を採ってきたんら」
「て、なんでフォークを持ってんだ?」
「もう、夕飯ら」
「まだ少し早いだろう?」
「え……しょう?」
「ああ、そうだな。風呂行かねーか?」
「風呂かぁ……」
「ハル、そうしてください。森に入っていたから汚れているでしょうし」
「ん、わかっちゃ」
「よし、行くぞ」
リヒトに椅子から降ろされそのまま抱っこで連れて行かれるハル。
知らん顔をしてそぅ~と出て行こうとしている奴がいる。シュシュだ。
「シュシュも入ってきてください」
「えぇぇ……」
「シュシュも森に入ったでしょう?」
「あたしはクリーンで良いわよ」
「ヨシッ。シュシュ、入ろうなッ」
ああ、イオスに捕まってしまった。首に腕を回されている。
「イオス! あたしはいいわよ!」
「はいはい、入らねーと晩飯抜きだぞ」
「えぇ~! それは嫌よ!」
「カエデ、私達も入りましょう」
「はいな、ミーレ姉さん」
みんな揃って風呂へと出ていった。
その間にもルシカはせっせと皆の夕食を作る。ルシカ、おかんだね。
そして、風呂場からシュシュの叫び声が聞こえてくる。
「だぁかぁらぁ~!! お湯をかける時は言ってよッ! ブブフッ!!」
イオスに洗われているらしい。
「しゅしゅ、気持ちいーじょ」
相変わらず丸いフォルムのハルが椅子にチョコンと座って頭がアワアワだ。リヒトに髪を洗われている。何故かお手々は揃えてお膝の上だ。
「ハルちゃん! かわいいぃ!」
「シュシュ、流すぞー」
――バッシャーンッ!!
「ぶへッ! イオス! 態とよね!? 何で顔面にかけるのよッ!」
相変わらずだ。変わらない。賑やかでどこかお惚けなメンバーだ。
やる時はやると信じよう。
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