第1話
ある日の朝。
いつもと変わらず、
希和子が来るまでは、医師という仕事柄、栄養などには気を付けていたものの
なので、彼女との
最初に、同居を始めたときは全く心を開かなかった希和子だが、ピエールの料理下手を見てやむを得ず食事担当となり、それを通じて心を開くことができた。
「希和ちゃん」
「なんですか、そんな人にお金を要求するような目を送って。医者なんですから、いくら大学付属の医師でもある程度もらってるでしょ」
「お金のことじゃなくてさ~~。今日は何だと思う?」
「さぁ~、なんでしょう。学校の登校日? それとも、ピエールの出勤日? 後は、ワープロ記念日ですか?」
「自分のことなのに、分からないの?」
「朝からイライラするので、顔を近づけるのをやめてください」
「はいはい。まぁ、今日はちょっと遅くなるからってことで。あっ! でも、夕飯の用意はいいからね」
「珍しいですね。ピエールにも、添い遂げる女でも出来ましたか」
「とりあえず、今日は楽しい日になるね」
今日は
希和子は陰光大学のリベラルアーツ
「ピエール先生!」
後ろからピエールの名前を呼ぶ若い女性の声がした。
「おはようございます! 希和ちゃんも」
「おっ、おはよう……、ございます……」
希和子は小さい声ながらも挨拶をした。
彼女はナタリア・フョードロヴナ。陰光大学大学院医学系研究科・
「先生、論文でちょっと見てほしいところがあるので、後で見ていただけますか?」
「お昼だったらいいよ」
「ありがとうございます! それじゃあ、また後で! 希和ちゃんも、またね~」
ナタリアは足早に大学へ向かった。
「
「え~、そんなことないよ。僕は
「それが、
「まぁ、そんなこと言わずに、恋愛とか限らず、友達として付き合うっていうのはとても大事なことだよ。人見知りの傾向は仕方がないけど、もう少し人を信頼してもいいかもね」
希和子は日常的にピエールをからかっているけれども、その言葉への反抗的な反応をできなかった。
大学の敷地内へ入ったところで二人は各所属の場所、教室へ向かった。
希和子は人見知りのため、友達を作りにくい。なので、学校にいるときも基本的には一人っきりでいる。
最初の授業から次の授業まではお昼休みをまたいだ空き時間が数時間ある。一時限の授業終了後に 普段いる図書館の最も静かな個別室にて、教養科目や三年次以降に学習予定の医学に関する本を読み漁っていた。
お昼は同じ場所で手作りのお弁当を食べた。
図書館での学習も終わり、数分だけ外の空気を吸うために、校内を散歩した。
スマホの通知音が鳴った。
時間もあるので、画面を見てみると、
(五時から指定の広場まで来て)
下へスクロールをし、マップで詳しく場所を確認した。
場所は医学部付属病院近くの公園だ。そこでは、飲食やバーベキューなどが楽しめる施設がある。
それは、ピエール・ド・アズナヴール。希和子の同居者。
しかし、今朝もそうだが、一体何を目的にしているのか。お昼過ぎの今も希和子は分からない。
次の授業も近いので、希和子は教室へ向かった。
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