第4話 記憶【玲】

 計画の第1段階である告白から何時間か経ち夜になったので私は寝ることにしました。


「ふふふ、計画が完成に一歩近づきました」


 そう言いながら私はベットに入るのでした。


「今日は私と海渡くんの記念日と言っても過言ではないので出会ったときの夢を見れるように写真を枕の下に置いてねましょうか」


 置く写真はもちろん、海渡くんともう6月に会った時のです。


「いい夢が見れそうです。おやすみなさい海渡くん♥」


 壁一面の海渡くんの写真にお休みを言って私は寝るのでした。


 ◇


 私が海渡くんと初めて会ったのはでした。

 家族と旅行で自然の豊かな田舎へ行った時に私は迷子になってしまいました。いえ、迷子というのは違いますね。誘拐されました。

 当時の私は都会では見慣れない景色に興奮して人を疑うことをしなかったのが原因で誰かに眠らされて誘拐されました。

 目が覚めると私はどこかわからない古ぼけた倉庫の壁際に手足を手錠で拘束されて転がされていました。誘拐犯はやはりというかなんというか、私を誘拐した理由は身代金の要求を父にするためでした。


「ええ、早く身代金を渡してくださいしてください」


 目が覚めた私は辺りを見回してみました。どうやら私を誘拐したのはスマホで電話をしている痩せた男と一本のナイフをお手玉のように投げて暇潰しをしているガタイのいい男のようです。


「ふが〜!ふふん〜!」


 私は恐怖に駆られて助けを呼ぶために声を上げました。しかしながら先程まで気づかなかったのですが私は口をガムテープで塞がれていようなので。私は助けを呼ぶために声を出そうにも『ふがふが』と言うだけで何もできませんでした。


「早く身代金を俺達に渡してください。でなければ娘さんがどうにかなりますよ?」


『っ!――――!』


 そして誘拐犯がお父様に電話をしている時に、電話をしていないガタイのいい誘拐犯の男がしびれを切らしたのかさっきから投げて遊んでいたナイフで私を脅しながら犯そうとしてきました。


「おっと、私の仲間があなたの娘さんを犯そうとしていますね。でも、こうなるのも仕方がないですよね。身代金を渡すのが遅いあなたが悪いのですよ?」


『っ――――っ―!――っ―!―っ――!』


 スマホから父の怒号が聞こえた。


「ふが〜!ふふんー!ふがふふんー!」


 助けて、やめてと言うだけなのに口を塞がれている私は何も言えませんでした。苛立ったのか男はナイフを私に突きつけてきました。


「がはは! 生きが良いな! おっと声は出すなよ間違えて刺しちまうかもしれないからな? それにしてもこんな綺麗な中学生とヤれるなんて今日はいい日だな! がははは!」


 そう言いながら男は私の着ていた衣服をナイフで裂きました。


「っ!…………っ」


 私は今まで我慢していた涙を流しました。


「お? こいつ泣いてやがるぞ! おいおい、こいつは最高にソソるねぇ!」


「程々にしておけよ。お前はいっつもヤッた相手を壊すんだからよ。俺も後でやるから壊すな」


 ああ、もういいや。このままだとこの人たちの玩具おもちゃになるだけだ。ならいっそ舌を噛み切って死のう……。お父様とお母様にごめんなさいと謝り舌を噛み切ろうとしたその時。天井から私より少し高い身長のが倉庫の中心に舞い降りた。


「ああ?! なんだお前?! 中二病か?!」


 その男は黒い狐のお面を着けていて。上下どちらも黒のシャツとズボンであった。さながら黒狐くろぎつねといったところか。確かに中二病と言われたらそうとも捉えられる格好だ。


「…………(クイクイ)」


 男の子は一度こちらを見た後に私を犯そうとしている男に何も言わずただ手招きだけをした。挑発をするように。


「っ! やろう俺を挑発してんのか?! いいぜ乗ってやる! 正義感で助けに来たのが間違いだってその体に教えてやる!」


「…………」


 男はナイフを構え黒狐くろぎつねの人に走っていった。


「シッ!」


 男は私の目では霞んで見える速度でナイフを振った。


「……」


 そして対する黒狐の人は私には何をしたのかがいまいち分からないが相手を蹴ったようだ。蹴り飛ばされた男は何歩か後ろによろめきながら下がった。


「ぐっ!……く……何だ今の……」


「おい! 何してる!? 遊んでないでヤッちまえよ!」


「チッ! わーってるよ! 油断しただけだっつーの!」


「……」


 その時にはもう私の涙は止まっていた。黒狐の人が私を助けてくれると確信したからだ。


「弱い……」


「っ! 何だとこの野郎!!!」


 黒狐の人の一言でまたナイフを構え男は向かっていった。


「――ぅらぁ!!!」


「…………」


 一瞬の出来事だった。今度は私の目にも追えた。ナイフを持った男の腕を掴んだ黒狐の人がそらに男を背負投で飛ばして男が地面に叩きつけられ。叩きつけられた男をゴキッという音を立てて倉庫の壁際まで蹴り飛ばした。


「がはっ……が……なんだ…そ…れ……」


 カランカラン――ガクッ――


 男はナイフを手から落とし完全に倒れた。


「ひ、ひぃ!」


 今までほとんど黙って見ていた男がガラスのない窓をよじ登って走って逃げていった。それを黒狐の人は追いかけようとした。でも私はもう二度と会えないような気がしたのでその人を止めた。


「ん〜!ん、ん〜ん!」


 ピタッと足を止めた黒狐の人は私に向かって走ってきた。


「もう大丈夫。君は自由だ」


 私の口に貼られていたガムテープと手足を縛っていた手錠を外しながら黒狐の人はそう言ってくれた。優しい声を聞いたとき私は先程止まったはずの涙がまた出てきた。


「う〜ん、タオルとか持ってないし……まぁ、シャツぐらい大丈夫か」


 そう言うと黒狐の人は着ていたシャツを脱いで衣服をナイフで切られ半裸になっていた私に着させてくださいました。


「じゃあ、俺は逃げたやつを追わないといけないから行くね。警察を呼んでいるからもうすぐしたら来るはずだよ。あ、その服はあげるよ。必要なくなったら捨ててね!」


「あ、待って!」


「ん?」


 伝えなければ。助けてくれたことを!


「助けてくれて、ありがとう!」


「っ……どういたしまして!」


 そう言うと黒狐の人は窓を登って出ていった。


 黒狐の人が走っていった数分後にパトカーのサイレンの音が聞こえた。

 その時の私はやたらと頬が熱かった。そしてその原因が黒狐の人に対する恋心だと気づいた。


「絶対にもう一度あってみせる……!」


 そのあと黒狐の人からもらった服についていた髪の毛から海渡くんの遺伝子が割り出せた。遺伝子を元に探偵を何人か雇って調べてもらいました。

 しかしながら何故だかわからないけど海渡くんの事を探偵に調べてもらっても。住所も名前も含めて情報が一切出てきませんでした。そして親の情報すらも出ませんでした。ただ、唯一わかったことが海渡くんの容姿です。

 私は背丈と髪の色、助けられた時に来ていた服などしか伝えていないそんな状況の中で、何人かの雇った探偵の内の一人が写真を一枚だけですけどそれらしき人物を撮影しました。

 その写真は少しブレていますがあの時と同じデザインの黒の狐の仮面を外している姿の渡海くんらしき人物がしっかりと写っていました。私はその写真を元に更に渡海くんの情報を探しました。渡海くんを見つけた探偵さんはいつの間にか

 写真の撮影に成功した時から二年程月日が過ぎた頃についに私は渡海くんを見つけました! そして更に情報を探っていくと私の進学する高校と渡海くんの進学する高校は同じだということがわかりました。これはもう運命だと感じました。次こそは逃さないという決意も固くなりました。

 そして今の計画が思いつき実行されているのです。そう、渡海くんを私から離れないようにするために……ね。


 ◇


「ふぁ……」


 しょぼしょぼする目を開けながら私は起きた。


「んん〜……いい気分!」


 出会いは夢で見ても普通に思い出しても最高です!


「さてと、今日は計画を先に進めましょうか」


 朝食を取り学校に向かう用意を完璧に終わらせ。


「心は痛みますが私がフラれたという噂を流すのはあなたを手に入れるためですよ海渡くぅん?」


 そう言いながら私は学校に向かう時間になるまであの日もらったシャツに顔を埋めながら匂いを堪能するのであった。














 ――――――――――――――――――――――


玲羅ちゃんの持っているシャツは一応は洗っていますよ?

玲羅ちゃんは海渡くんに対する感覚が人一倍強いので匂いが薄れても嗅げるのです。(暴論)


追記


この話は、いつも現代ファンタジーばかり書いている私が初めて書いたラブコメなので。戦闘が強い主人公が出来上がってしまいました。プロットにこんなに強いなんて書いてないのにね。

主人公をもう少し弱くした方がいい! と思われる方は言ってくれれば改善します。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る