第3話
「さあ、休憩はこの辺にして、仕事へ戻ろうではないか。国境付近がきな臭い。我らの出番が近いぞ」
豚の鼻はよく利くのです。
「まったくこの国というものは、素晴らしいな。私の故郷と違い実力さえあれば豚にも活躍の門戸が開かれる」
「平民出の自分にも開かれていますからねえ」
「我らは自由だ。自由は素晴らしい。だが自由は義務やら責任の下に保証されるべきものだ」
豚は豚らしくなく非常にまじめなことを言い出しました。黙って耳を傾ける青年に、豚は皮肉気な笑みを浮かべます。何だか少し腹が立つような気分がしましたが、きっと気のせいだろうと、青年は自分に言い聞かせました。
「豚が空を飛ぶなどという馬鹿げたお伽噺が聞ける世の中に、私はしたいのさ」
「ああ、何だか本当に腹が立つなあ」
「……君、本音が口から飛び出しているぞ」
「失礼しました。正直者なもので」
真面目くさった顔を作り敬礼してみせる青年に、豚は肩を竦めました。
「まあいいさ。仕事の時間だ、行こうじゃないか」
扉を指し示し、豚は言います。
「いいか、忘れるな」
とん、と豚は青年の肩を叩きました。
「狼には気をつけろ」
「……新手の暗号ですか」
青年の困惑を清々しく無視し、豚は凛々しい顔で扉に手を掛けました。
「この先が、私たちの道だ」
帝国空軍元帥として偉大なる名を残した豚の話がお伽噺ではなく伝説と呼ばれることになろうとは、豚(本人)にも与り知らぬ先の話なのでした。
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