Q7.なぜトラウマは忘れかけたころに私たちの心をエグるのでしょうか?

 のんびり幼女視点書いてたらフラストレーションが溜まったので巻きでいきます。幼女の異世界冒険話とかあたいには需要ないのよ(╹◡╹)


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 最初は邪魔されたことにつんつんしているかのように思えた幼女だったが、様子を見ているにこれはただコミュ障こじらせてるだけだな。同類だからね、私にはよくわかる。塩対応なのではなく、ただどう対応したらいいかわかっていないだけのあれだ。私のようなパンピーがやってもコミュ障乙wwwで終わるのに面のいい幼女がやってるとツンロリかわいい❤️ってなるのは世界の仕様だな。しかたがない。このルッキズムの申し子めっ!


 そんなことを言っている私自身エルフの外見を調整して美形になるように作ったのだからルッキズムにどっぷりなわけだが、今はそんな些細なことはどうでもいいのだ。状況をまとめると面のいい幼女が不審な女騎士に声をかけられる事案が発生しているということである。女騎士、騎士様なのに何故不審人物かって?この方向に向かっても騎士がいるような制度の町は存在しないからだよ。


 しかもこのアマ、よりにもよって汚れた格好で幼女のことを運びやがる。私だってお米さま抱っこしかしたことがないのに、お姫様抱っこだなんてはしたない!そんなゴツゴツした鎧で少女を抱くなんて、それでも騎士か!恥を知れっ!


 やたらとおしゃべりな騎士様が幼女に若干引かれているのを笑いつつ、その話の内容は興味が無いので放置する。おそらく中身のない話なんて聞いていてもしかたがないからね。私は命を玩具にするので忙しいのだ。


 忙しいことを言い訳に愛しいわが子から目を離し続けるという、ネグレクト1歩手前ムーブをかましているうちにいつの間にか街へ到着していた幼女をチラチラ確認しながら、エルフ細胞の培養を続ける。ネグレクトされていた方がアリウムちゃんは幸せになれるとか、そんな悲しい事を言わないでくれよ。なんのために作ったのかが分からなくなるじゃないか。


 さて、作業も一段落ついたので、ここらで幼女が今いる街、賢者街について軽く説明しておこう。街の成り立ちは、かつて魔物の脅威に脅かされていた人たちを守るべく、一人の賢者が大きな結界を作ったことに由来する。賢者様がお作りになったその結界には人々が集まり、そしてやがてひとつの街を築いたわけだ。なんて立派なことをする賢者様なのだろうか、当然それは私である。


 そんな賢者街は元々結界街なんて呼ばれていたのだが、ある時期を境に力を伸ばしてきた賢者教団なる怪しい宗教団体によって支配されるようになっていき、今となっては街民全員が教団の信者という恐ろしい宗教街に成り果てた。とてもこわいね。


 ちなみにこの賢者教団、やったことと外聞はいまいちあれだが、教え自体は案外まともなものだったりする。人間同士で助け合いなさいとか、困っている人を見たら優しくしなさいとか、宗教色を除けばただの互助組織なのだ。その分その宗教色がそれなりに強くて、賢者様は救いの化身だとか、賢者様に感謝を捧げろとか、賢者様が望めば親兄弟でも差し出せとかカルトじみたところがある。最初は賢者に救われた人がお礼の気持ちを忘れないようにって始めたことのはずだったのに、やはり狂気というものはえてして無邪気な信心から生まれるものだ。カルト怖いな。でも素材おもちゃ集めにはとっても便利。滅びと再興を繰り返しているから救いというのもあながち間違いではないしね。


 そんな恐ろしいところに一人放り込まれた幼女はさぞかし心細いだろうけれど、幼女なら大丈夫。おててのマーキングを見せれば、教団員はだいたい言うことを聞いてくれるぞ。どこまで聞いてくれるかは個人の信仰量によるが、パシリとかメッシーくらいの扱いなら喜んでしてくれる。狂信者どもこわっ。


 今回幼女がお世話になっているお家だと信仰量は中の下くらい。なんかやたらと親切にしてくれる人、という程度で済むだろうね。これが上の上なんかに当たった時には悲惨なものだ。ご馳走に出せるものがないから我が子を捌きました!まだ幼いので柔らかく、食べやすいと思います!とか言って笑顔で人肉を食わせにくる。何がこの子も賢者様の糧となれてこの上ない幸福でしょう、だ。笑顔のまま切り落とされた生首なんて食事中に見せるな。


 まったく、人の肉なんて特別な理由がない限り食べるべきではないと言うのに、狂人の思考というのは本当にわからないものだ。幼女の家族?あれは幼女を強くするためだから特別な理由だよ。私のようなまともな人間を狂人と一緒にしないでいただきたい。


 さてさて、幼女がご馳走になっているのはそんな冒涜的な食べ物ではなく、ごく普通の肉が使われた家庭料理らしい。そういえばこの子、身内の肉以外のものを食べるの、何年ぶりだろうね。久しぶりに真っ当な食事を取れたことににっこにこだ。守護りたい、この笑顔。


 素敵な笑顔だが、いつかは曇らせまくることになるんだよなぁと塵クズレベルの罪悪感を抱いて、それは私には必要のないものなのでポイする。やはり人間、自分の感情くらいコントロール出来てなんぼだからね。まだ感情に支配されている子は道徳の授業を受け直してどうぞ。


 幼女が眠りについて、そこから数日はこの世界(街)の常識なんかを教えて貰っているだけなので放置。もう知っていることだけだし、スキップしたい。なんで人生にはスキップボタンがないのだろうか。(世界)リセットボタンは何度でも押せるのにね。


 次多胞体に遭遇したらセーブロード一時停止と一緒に注文しようと心に決めつつ、しばらく垂れ流しにして事実上のスキップをする。数日経つと少しずつ自立を始めようとしているので、この辺りからまた見ようか。


 状況を確認しよう。幼女は街の常識を学んで、そのうえで今のままヒモとして生きることを受け入れなかった。まあ、そんなんで簡単にヒモになってしまう人間性の持ち主なら消していたし、そうならないように育ててきたのだから当然だ。私の幼女ちゃまは復讐心と向上心に溢れているのである。


 その幼女がお金稼ぎの方法として選んだものが、冒険者。異世界モノの定番で、よくあるあれだ。当然私がつくりました。お約束だからね。いい言い方をすれば一攫千金を狙える夢のある職業、悪い言い方は……うん、沈黙って金だよね。


 言い方はさておき、うちの幼女はまだ幼女だからね。過ごした時間的にはもう少女と呼べる年齢のはずだが、私はアンチエイジングに余念がなかった。しっかりロリプニキープである。外見一桁台だからロリという呼称すら本来は正しくないのだが、ならばと正しい呼称をしたところでわかる人はごく一部の変態に限られてしまうので、広義の意味のロリということにしておこうか。


 ロリの話題はともかく、幼女は幼女だからまともな働き口なんて見つけられないのである。なぜって?幼女だから。普通の人が幼女を雇いたいと思うわけないだろ、反省しろ!!


 そうすると幼女の働き口はまともじゃないか、マトモじゃないかの二択になってしまうわけだ。さすがに私も文字通り自分の体を商品とするような教育は施していないため、幼女が取るのはまともじゃない方の働き口、仕事するなら誰でもいいやのヒャッハー組織である。


 そんな組織、どこだと思う?そう、冒険者組合だ。社会不適合者と、社会に適合しない方が稼げる連中の集まり、まともじゃない奴らの寄せ集め、それにプラスしてお小遣い稼ぎ場所でもある冒険者組合だ。


 働けるならゴブリンでも犯罪者でも働かせる、ならず者の受け皿でもある冒険者組合、世界中にあるけど運営は賢者教団がやっている。どのような者にでも働く権利はある、働く権利を奪ってはいけないという賢者様の言葉を理念に運営されているのだ。まったく素晴らしいことを言う私もいたものだな。



 話を戻そう。幼女は冒険者になった。ガキは帰ってママのミルクでも飲んでろよギャハハとか言って脅かした人相の悪いオヤジに、お母様もみんなも死んじゃったからいないんだと言って空気を凍らせてから、美人な受付嬢さんに手続きをしてもらっていた。冒険者組合マニュアルに則って、子供を脅して度胸試しをしただけの善良なオヤジは、仕事をしただけなのに周囲から凍るような目で睨まれてビビっていた。プルプルしちゃっているオヤジ、かわいいね。恨むのならこんな絶対にいらない内容をマニュアルに組み込んだ私を恨むといい。


 オヤジのことはさておき、冒険者になった幼女は皆おなじみの薬草採集に行くわけだ。子供にやさしい冒険者らしく、依頼書にはわかりやすく絵も描かれているし、だれでもできる依頼だ。実際のところ本当に必要になったらみんな自分で取りに行けるので、雑用半分慈善事業半分くらいの依頼。


 しかし、そんな実態を知らない幼女は初めてのお仕事にたいそう緊張しながら向かうわけだ。こういう初めての緊張を解消させるためという側面もある依頼だから、本来ならこのまま何事もなく終わるのだが、そんなに簡単に終わってしまったら私が面白くない。それに、私を殺すという偉業を成し遂げてくれるはずの幼女のはじめてが、そんな普通のものだったらつまらないじゃないか。


 というわけで、私はここで少々介入する。簡単に介入できないとか、おかしなところを見せずに誘導できるかが腕の見せ所とか言ってたやつ誰だよ。うるさいなあ、私はせっかちなんだ。


 ここ数日いろいろして遊んでいたエルフの細胞のなれの果てを一つ培養液から取り出す。まだまだ完成していないけれども、ちょっと失敗してしまったものなのでここで消費しても痛くない個体。若干胎児のような面影を残しつつも、異常に細胞分裂がすすんでしまったせいで、蠢く肉塊にしか見えない赤ん坊。



 わずかに特徴を残した耳が、かろうじてそれがエルフなのだと証明しているそのいたましい生き物は、かわいいかわいいアリウムちゃんの妹である。幼女のお父さんとその辺のエルフの生殖細胞で作ったからね。


 たった今生まれたばかりの赤ん坊をアリウムちゃんの近くに飛ばして、しばらく様子を見る。初めて姉妹がお互いを認識するシーン、感動的だよね。私はこういう安直なお涙頂戴ものに弱いんだ。


 全くかわいげのない産声を上げる妹ちゃんと、突然聞こえだした気味の悪い声にひかれてそちらに近付くお姉ちゃん。恐る恐る様子を見てみたら、そこにいるのは見るもおぞましい姿をした化け物。手になりきらなかった器官を動かしながら周囲に火をまき散らすその姿は、偶然にも幼女の里を滅ぼした魔王みたいだ。どうして私の血を添加するとみんなこんな感じの姿になるのだろうね。永遠の謎である。


 さて、普通なら感動的な出会いに抱擁の一つでもかわすべきなのだろうが、かわいそうなことに幼女はトラウマを刺激されてそれどころではない。残されるのは何も知らない、無邪気な生後数分の赤ん坊だけである。それはもう泣くしかないよね。しょうがないじゃない、赤ちゃんなんだもの。


 きったない鳴き声とともに燃える森、死んでいく虫たち、枯れる草木。自然破壊は順調に進んでいく。近くにいる幼女にも多少影響が出ているようで、様子を見ているうちに耳から血を流し始めた。頑張れ幼女、妹を泣き止ませないとまた自然が失われてしまうぞ!里の跡みたいな不毛の地をみすみす増やしていいのか!!


 幼女がいないいないばあや高い高いをして妹をあやすほっこりとした絵面を求めて待機していると、やっと人の世界に帰ってきた幼女が泣きそうになりながら、憎悪にまみれた表情で妹に切りかかる。


 切られた妹ちゃんはかわいそうに、痛いのかわんわん泣いているが、全くお構いなしだ。かわいい妹ちゃんだろうに、ここまで躊躇なく殺しにかかっているのは生まれもっての素質か、それとも私の教育がよかったからか。後者なら子供の育て方で本出せるな。


 せいぜいが直視できずに逃げて、覚悟をさらに固くする一助になればと思ったのだが、私が見誤っただけでとうに覚悟は堅かったようだ。生まれたばかりの妹ちゃんにはかわいそうなことをしたと思うが、今回はなんだったのかわからない前座になってくれたことに感謝するのみである。もしものことを思って一番の出来損ないにしておいてよかった。ほかの妹たちはもっとちゃんと作ってあげないとね。


 何度切ってもその端から再生していく妹ちゃんの再生能力が限界になるまで頑張った幼女が、ついに動かなくなった体から短剣を抜く。力の使い方も何も知らないまま姉の下に飛ばされた妹が、本能だけの行動でまき散らした火が周囲を覆う中、その中心にいた幼女は当然のように火傷まみれだ。体力をだいぶ使ってしまった幼女にはここから逃げることもままならないのか、動こうとしないね。


 でも大丈夫、ここは森の中でもだいぶ浅い所だ。すぐに異常に気がついた街の人、女騎士さんが助けに来る。そのまま幼女は回収されて、妹ちゃんの遺体も一緒に持っていかれた。きっとコレが何なのかを確かめるために使うんだろうね。何はともあれ、幼女が無事でよかった。

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