Q5.なぜ適当に育てていたはずの幼女は私にとって予想外の成長を見せているのでしょうか?バグですか?

 あたおか書いてるはずだったのにやけにこの主人公合理的だな(╹◡╹)


 狂人書くのってむずかしいのね(╹◡╹)


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 アリウムちゃんを育て始めて、気がついたらもう数年も経っていた。基本的には適当なエルフを食わせて、あとは修行(笑)をさせているだけの楽な生活。数日に一回くらいの間隔で魔法の手ほどきをするだけなので、偉大な賢者様は不毛の大地で隠居生活を堪能中である。正直飽きた。


 そもそもまともに隠居生活を楽しめるような神経が残っているのであれば、こんな手の込んだ自殺なんてやろうと思わないのである。正直に言うとクッソつまんない。幼女も生理的に受け付け難いはずの肉になれてしまって、何の感慨もなく顔色も変えずに食べているし、なんか勝手に育ってしまったおかげで、私を普通に殺すくらいならもうできそうな仕上がりである。まあ私はなんの警戒もしていなければその辺の村人に殺されるレベルの頑丈さしかないので、あまり参考にならないが。


 しかしまあ、そんなことは置いとくとしても、この生活を続けるのにもそろそろ限界が来ているのもまた確かである。思いの外育ってしまったせいで、火の中以外の環境なら私の手助けがなかったとしても生き延びられるようになってしまったし、始まりの村でできる修業はどれも終わってしまったのである。


 仕込んでいた魔法の基礎も、外の魔術使いがエクセルのマクロに数字いれるだけなのに対してVBAをいじれる程度にはなったし、本当に教えられることがない。



 そして、何よりも困ったことに、アリウムちゃんがどこか今の生活に満足しているように見えるのだ。私と二人不毛の大地でよくわからない修行をしているだけの生活。おいおい、復讐はどうしたんだよ、もっと殺る気を持たなきゃダメだろう?


 というわけでそろそろテコ入れが必要だ。こんな仮初の(私にとって)つまらない平和なんてぶち壊して、この子は広い世界に旅立つべきなのだ。単純にこのままだと情が湧いてしまって殺してくれなくなるのでは無いかということもある。私?殺してもらうために情を持ってるからセーフ。


 このままだと里のみんなよりも私の比重の方が大きくなってしまいそうだから、ちょっと罪悪感とかを掻き立てようか。用意するものは簡単、幻を作り出す魔法、それだけだ。


 アリウムちゃんを呼んで、ししょーししょーとかわいく懐いている幼女の前に、大切なお母さんの幻を見せる。ちなみに数年経っているのにアリウムちゃんの見た目が幼女なことに大した理由はない。ただ成長が遅いだけである。私が遅らせました。長い寿命が必要になるからね。


 目の前の幻に、かたまる幼女。幻だとわかっていても、死に別れた家族との再会はつらいものなのだろう。だいじょうぶ、本物のお母さんは君の中にいるからね。もう糞として出ていってるかもしれないけど。


 そんな幼女に対して私が出す指示は至って簡単。それを切り殺せ。それだけだ。どれだけ辛かったとしても、とにかく斬れ。大丈夫、私で人斬りの経験は積んでいるんだし、今更恐れることはない。


 アレは君にとって大切なものの姿をとることがあるのだと、だから今のうちに練習して、本番では見た目に関わらず躊躇無く取りにいけるようにしないとと伝える。とはいえ、心の方は育てていなかったので、当然のように切れないと。仕方がないから少しずつお母さんの体を腐らせて、腐肉に襲われているような幻に切り替える。あーあ、判断が遅いからせっかく綺麗だったおかあさまが腐っちゃったね。君のせいだよ。


 襲われて、首を絞められてもまだ踏ん切りがつかないようなので、今度は焼死体に首を絞められる幻を見せよう。見つけてあげるよ、君だけのトラウマスイッチ。余談だけど私のトラウマは焼死だ。あれは何度やっても苦しくてつらい。


 結局、アリウムちゃんがお母さんの幻を斬り殺したのは、ほとんど骨だけになったお母さんに首を絞められながら殺してと懇願されてやっとだった。予想以上に時間がかかったね。もっと早くできるものだと思っていたのだけど。


 思わぬ所で大きな課題を見つけたので、最後にここだけ克服させておこうか。外の世界には相手の大切な人の姿で酷いことをしてくる魔物もいるからね。私が作ったんだけど。


 幻のせいで実際には火なんてどこにもなかったのに、首元にやけどを負ってしまったアリウムちゃんを治して、おかわりを沢山プレゼント。ところでかわいい女の子の火傷跡って切なくなるのと同時にちょっと興奮しない?しないか、そうか。


 おかわりのエルフさんたちから、泣き叫びながら逃げようとするアリウムちゃん。それを止めるために地面から生えてくる焼けた腕。うーん、悪趣味な演出だ。私の人間性が疑われそうなので、アリウムちゃんの心の底の恐怖を視覚化していることにしよう。悪いのは私じゃない。


 ゾンビみたいに無限湧きしてくるエルフ達はお母さんの時と同じで、最初は生前の姿、少しずつ腐っていく姿、発火して、苦しんだ末に黒い塊と言った順番で姿を変えていく。目標は出てきて速攻切り殺せること、生前の姿のまま終わらせてあげられることだね。やっぱり、一番綺麗な姿で送り出してあげたいじゃないか。


 傍から見ていると一人で不思議な遊びをしているようにしか見えないアリウムちゃんを放置して、私がしているのは締めの準備。どこまでしたらアリウムちゃんが私に殺意を向けてくれるかがわからないから、もしも萎えちゃった時ように着火剤を用意しておく必要がある。


 というわけで今回協力してくれるのはこちらの少年、アリウムちゃんの幼なじみのミネス君です。同い年でお姫様みたいなアリウムちゃんのことをまだ若いのに意識しちゃって、彼女が叔父のものになることを知ってBSSを食らった若き脳破壊者、実は生きたまま残しておきました。


 他にも何体かエルフは生け捕りにしているけど、今回はこの子を使うのが一番有効だろうね。サイズが小さいから処理もしやすいし、何よりアリウムちゃんと比べると悲しくなるくらい弱い。間違ってもアリウムちゃんに怪我なんてさせられないだろうし、きっといい糧になってくれるだろう。


 追いすがってくるエルフを切れるようになり、恨み言を叫ぶエルフを切れるようになり、逃げるエルフを切れるようになったアリウムちゃん。今のところは全部幻だけど、随分躊躇がなくなってきたものだ。前もって無限に再生する私で上手な人の切り方を練習していた甲斐があったね。逃げるお母さん相手でも泣きながら切りかかれるあたり、師匠は才能を感じました。


 最後の仕上げとして全く状況を理解出来ていない目覚めたてのミネスくんを目の前に放り出して、スパンと首を刎ねさせたらミッションコンプリート。おめでとうっ!ようじょはどうぞくごろしをけいけんしたっ!


 幻を見せていた魔法を解いて、アリウムちゃんの目の前から事切れたエルフの山を消す。それと同時に、緊張が解けて倒れそうになった幼女を優しく抱きとめれば、唯一残った本物の死体には気付かれない。いつものように滝に突っ込んでいる間に、処理を済ませておけば完璧だ。


 本人視点だと化け物の声を聞いて苦しんでいたら突然好きな子の前に放り出されて、わけがわからないまま首を飛ばされてしまった、かわいそうな少年はベーコンに加工して晩御飯に使ってあげよう。結ばれて一つになりたがっていた相手のハジメテをもらって、更には一部になれるんだから喜ぶといい。想像していた形とはだいぶ違うと思うけど、君の夢は叶ったよ。小学生低学年程度の子供が一つになりたいとかハジメテとか考えてたのかは知らないけど。


 ミネスくんが経験した記憶や感情はのちのち使えそうだが、脳みそから抽出しておいて、体は急いでベーコンに変える。子供なせいで可食部が少ないので、屑肉はミンチにしてソーセージにしよう。ミネスくんは食べても強くなれないから、きっといつもより美味しいよ。やったねアリウムちゃん。ちなみに脳みそから抽出するのは何度も臨死した私だからできることだ。死者の尊厳?人道的配慮?……死人には人権なんてないんだよ、知らないの?まあそもそもこの世界での人権なんて私の前ではゴミみたいなものだ。考慮する必要も無い。


 そんなことをしているうちに幼女が綺麗になって帰ってきたので、たっぷり溜め込んでいた新鮮な野菜を使ってミネストローネを作る。ベーコン作成は魔法を使えばすぐにできるから便利だね。困ったら魔法を使っておけば何とかなる。あ、血の匂い消すの忘れてた。バレないかな。……なんか幻の影響が残ってるって誤解してるからヨシッ!


 半泣きになっている幼女をなぐさめて、久しぶりの美味しいご飯でにっこりさせる。うんうん、幼女にはやっぱり、無表情じゃなくて笑顔が似合うね。きっとミネスくんも草葉の陰で喜んでいることだろう。


 そのあとはもうやることがないので保存食をいくつか用意して、適当に理由をつけてアリウムちゃんを追い出しにかかる。おいおい泣くなって。師匠も寂しいけど、君があの化け物を倒すためには私の元で学んでいるだけじゃダメなんだ。大丈夫、たとえ距離が離れていたとしても、私はいつでも君のことを見守っているからね。


 悲しそうにぐずぐずする幼女。うーん、罪悪感高めてこれなら、テコ入れしなかったら本当にいつまでも離れなかったな。私の慧眼に乾杯!


 最後だから昔みたいに一緒に寝たいと甘ったれる幼女と添い寝して、全部終わったらまた一緒にいたいと言われたので、その時に君がそう思えてたらねと応える。当然その時が来れば私はめでたく死んでいるので、アリウムちゃんが夢見る未来なんて絶対に来ない。ごめんね、でも嘘だけは吐いていないから許してね。私は嘘をつくのが嫌いだからね、滅多なことでもない限り嘘はつかない。騙さないといけない時は誤解させるだけだ。君が勝手に勘違いしたんだろう?ってね。日本じゃ詐欺でアウトだな。でも私の死体と一緒にいたければいつまでも一緒にいていいからねっ!


 翌日、幼女が起きるより前にお出かけセットを枕元に置いて、置き書きとマーキングを済ませたらさっさと私はドロンする。これで保護者の仕事から解放されて、のびのびと遠距離から幼女をいじめられる。まあ、これまでと比べるといろいろと直接的な介入はできなくなってしまうだろうが、何でも簡単にできるわけじゃないというのもまたいいものだ。今はひとまず、捨てられた子犬みたいな顔をしている幼女を眺めて楽しむとしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る