想い出の始まり

夕日ゆうや

想い出の始まり

「俺今日、告白するよ」

「お。なんだ。おねしょでもしたのか?」

 クツクツと笑う左良氏川さらしがわ黒土くろと

 俺の友人であり、悪友でもある。小学生以来の友達になるが、こいつは自分のことはあまりしゃべらない。でも面白い奴であるし、俺のノリについてこれる。

 あと真剣なときはけっこう紳士になる。

 そんなところも好きだ。まあ、これを言うと気持ち悪がられるだろうが。

「何言ってんだよ。告白といえば愛の告白だろ」

「あー。はいはい。久野くの利理りりだろ。行ってこい」

 あくびをかみ殺しながら俺の背を押す黒土。

「ああ。行ってくるよ」

 走り出すと、俺はクラスの女子グループの中にいる利理に話しかける。

「屋上にきてくれ。久しぶりにきれっちまったよ」

「ええ~。しょうがないな~」

 ニタニタと笑みを浮かべる利理。

 屋上に上がると、利理がスカートをひるがえす。

「それで? なに?」

「ええっと……」

「話があるから、きたんでしょ?」

 ニタニタと意地悪な笑みを浮かべる利理。

「ええと。俺と一緒に楽しい想い出を作りませんか?」

 これから想い出の始まりを作るんだ。

「えー。それだけじゃ、わかんない~」

 さっぱりした性格の彼女がぶりっこのような事を言う。

「……分かったよ。俺はお前が好きだ。付き合ってくれ!」

「しょうがないな~。わたし、こう見えてもモテるんだよ?」

 暗に否定されたのか?

「わたしも好きだから、付き合ってあげる」

「ほ、ホントか!?」

「うん。一緒に想い出つくっていこうね!」

「ああ。ありがとう!」

 俺は利理の手をとり、喜ぶ。

 そしてギュッと抱擁を楽しむのだった。


 ☆★☆


「あれから10年か~。短かったね」

「ああ。楽しい日々だったよ」

 結婚式間際で、俺と利理はアルバムを見返していた。

 これからも楽しい想い出をつくっていくのだ。

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想い出の始まり 夕日ゆうや @PT03wing

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