第9話(2)ダンジョン料理人(敵視点)
坂田健一。49才。港区のタワーマンションに住むその男は、至高の美食と快楽を追い求めて生きてきた。
金。金。金。金はいくらでもあった。
そして金さえあれば、女も美食もいくらでも手に入る。
坂田はセックスと食事のマリアージュを散々やりつくしてきた。
警察に知られれば逮捕されるようなパーティーも開いてきた。
坂田にとっては、女体盛などスーパーのパック寿司と同等の平凡さ。
そして、人はどんどんと強い刺激を求めるようになる。
坂田は、ついにエロスと美食の究極の形を求めて、ダンジョンへと進出した。
ダンジョンは、金さえあればどうとでもなる。最初からダンジョン外で50階層レベルの装備を買って入った坂田は、ダンジョン内で危険な目にあわなかった。
ダンジョン内で食材を入手するために必要な「食材入手」特性がついた武器は、新宿ダンジョンを牛耳る半グレ集団から金で買った。
億単位の金が必要だったが、それくらい、代々大金持ちの家に生まれ経営者として成功してきた坂田にとって、大した金ではなかった。
モンスターからとれる肉はうまかった。
ダンジョン外では味わったことのない恍惚とした味が味わえた。
一方、ダンジョンでは、食事とあわせるエロスも簡単に手に入る。
ダンジョン内で、女はいくらでも手に入るのだ。
新宿ダンジョンではダンジョン内派遣デリヘルが盛んだ。ダンジョン内では避妊をしなくても感染症や妊娠の危険性はない。危険なプレイでも、死にさえしなければ、外に出れば傷は残らない。
だから、口車に乗せられダンジョン派遣風俗嬢になる女は多かった。だが、実はそのまま帰ってこない女が多いことは、あまり知られていない。
デリヘル嬢以外の探索者の女も、新宿ダンジョンではアイテム交換で簡単に体を売った。
もちろん、そうじゃない女もいるが、力さえあればどうとでもできる。
そして、数々のモンスターの肉と女を堪能している内に、ある日、坂田は気が付いてしまった。
食材が取れるのは、モンスターからだけではない。
人間からもとれるのだ。
それからは、モンスターと美女からとれる肉で至高の肉料理を作ることが、坂田の趣味になった。
犠牲になった女の数はわからない。ダンジョンの行方不明者の一部にすぎないから。
やがて新宿ダンジョンのモンスターの肉を食いつくした坂田は、まだ知らぬ究極の美食を求めて、100階層のボスの間のその先に進むことにした。
通称、裏ダンジョンと呼ばれる高難易度のダンジョン。
鍛えに鍛えた愛用のマグナム銃に麻痺弾をこめ、坂田は新しいダンジョンに足を踏み入れた。
新しいダンジョンに入ってすぐ、坂田は巨大な牙をもつ気色の悪いモンスターに遭遇した。
見たことのないモンスターだ。
坂田は銃弾を何発も何発も撃ちこんだ。攻撃はしっかりと効いた。
倒れたモンスターが消える前に、坂田はその腹に包丁を突きつけた。
モンスターの死体から転がり落ちる肉塊。
坂田は腹から笑い声をあげた。
「ふはは。新しい食材だ。これをどう調理しようか。ああ、今日はあいびき肉のハンバーグが食べたい気分だな。別の肉とあわせよう。女の肉がほしい……」
坂田は、そこで、ダンジョン内をゆっくりと歩いている女の姿を発見した。
若く美しい女だ。
「ふふふふふ。そうだ。今日は、あれの肉とあわせようか」
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