第31話 アンチファンからビックファン

 コメント欄にはその動画ニュースをアップした製作者に批判が殺到し、炎上しているのが目に見えた。充血した目が痛むように恐るべき、悪い予感がした。すごく吐き気がした。いくら、とんでもない過ちを犯したかもしれませんが、何か、悪い予感が聞こえてくるのだ。何か、大丈夫か? と私はむしろ、この件で被害を受けた当事者なのに、何かこの不吉なもやもやって何だろう? 

 これから先、不穏な出来事が起こるかもしれない、と私はコメント欄を見ながら思った。炎上させている人たちも傍観者もかつての私。

 そして、新倉蒼さんだってかつての私。どこから、善と悪の境目が曖昧で、どちらの立場も分かる私もいる。だって、私も人生を壊されて、逆に周りを傷つけて、助けられて、滑稽な生き物で、どこか、糸口があるはずだ、と迷い続けている。

 最初は嫌いだった人が何かの拍子にアンチファンから、ビッグファンになるかもしれない。その逆で応援していたファンが離れてしまうかもしれない。コメント欄を見ながら私は今と過去の私の幻影を見かけた。このコメントを書いた人たちは全て、私の心のジグソーパズルの一部なんだと思った。どんな色のジグソーパズルも愛せないけど、気まぐれに嫌いな色も好きな色になるときもあるかもしれない。

 私はスマートフォンを閉じた。その頃になると東京駅に到着し、アナウンスを聞きながら再び、スマートフォンを開けると、悪い予感が当たったように速報ニュースが流れた。



『新倉蒼、都内で自殺未遂。救急車で搬送』



 

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