第30話 これはフィクションではない。

「この話はフィクションじゃないからね。僕が言った話を聞いて、気になったら友里ちゃん、ネットでも検索したら、揉み消された10代作家もたくさんいるよ。でもさ、ネットで発掘してくれた文学好きもいたんだよ。だから、死んだらいけないよね」

 本当だ。死んだらいけないな。まあ、難病になって死んでしまうのはしょうがないけど、それでも、私は寿命を達成したい。

「アイドル的に化けるために文学や作家があるわけじゃないだろう?」

 どこかの某文芸漫画のような台詞の真逆を言う、ミツル。新幹線の車窓が次々と流れ落ちる中、ミツルの熱弁は強い。

「才能って何だろうね」

 私も分からない。才能の有無や才能の意義、才能の理解力、才能の片鱗、才能の時代性、才能の習得……。才能についていくらか考えても、考えても答えが生まれない。生まれないぽっかり空いた空洞の中にどうしようもない空虚感に近い、夢を諦めた、という現実性が出没する。万年一次落ちどころか、最年少作家になったのに零落した私に言える資格なんてないし、

「才能は選ばれし者だけのものではない」

 ミツルは不貞腐れもせず、言いのけた。

「何て言えるのは作家志望じゃない一般ピープルだけさ。ハハハハハ」

 リトルピープルかよ、と私が茶化すとミツルは不服そうに笑う。

「そうだね。僕はキングオブ凡人でもなく、才能無しの一文無しだからね」



 Youtubeで流れた『新倉蒼の陰謀』の動画を動悸がしながら再生する。



『新倉蒼の可笑しな話』



 芥川賞最年少作家の異名を持つ、新倉蒼がついに自殺未遂 デビュー⁉

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