第27話 週刊誌

 その日の夜は興奮気味だった。浩二さんの出会いは私の中でも千載一遇の後押しになった。新幹線の中で新倉蒼の記者会見関連の速報ニュースを見る。もちろん、まだ会見は始まっていないけど、いよいよ始まる記者会見に日本中おろか、世界中が固唾を呑んで見ていた。それも、陰険な目線で。



『新倉蒼の華麗なる高校生活』



 新倉蒼という名前を知らない日本人はいないだろう――。新倉蒼氏(18)は史上最年少の16歳で芥川賞を受賞し、累計330万部(令和×年現在)の史上最高の売り上げの快挙となり、その美貌を生かして、デビュー作の『月虹のアイリス』に初出演、日本アカデミー賞主演賞も受賞、飛ぶ鳥を落とす勢いの彼に盗作疑惑が生じたのは去年の令和×年、新倉蒼氏のデビュー作の盗作は今週の記者会見で何を語るのか――。

 新倉蒼氏の高校は都内の某名門校であるが、盗作疑惑が発覚する前の彼は、学園内ではヒーローであった。

 男子校にも関わらず、熱烈なラブレターやファンレターを渡す生徒が後を絶たたず、校外の女子生徒からのラブレターやファンレターも多かった。10代のイベントにも引っ張りだこで、彼はティーエージーにとっては神であった。

 新倉蒼氏は高級タクシーで通学し、多くの女子学生を引き連れ、パーティーに繰り出し、破廉恥な生活はSNSでも話題沸騰、ティーン雑誌に表紙を飾ったこともあった。成績はトップクラスで進学先はT大学の推薦入試を狙っても余裕で合格できる、と噂されていたのだが、今は閑古鳥が鳴く有り様。

 今でも、ネット上には新倉蒼氏の冤罪を訴えるハッシュタグや主張サイトも数多く存在し、『あおいクン』と呼ばれるファンはとうとう、懇願書まで出す有り様。そのトレンドはTwitter界隈も巻き込み、話が途切れる日はない。

 今週の金曜日、記者会見で彼は何を話すのか――。



 すげえな、この週刊誌記者さんのスキャンダラスかつ、妄想力たくましい文章力。週刊誌の記者って嫌なニュースも報道するけど、性被害の告発をスクープしたときは、週刊誌がなかったらあの被害者の心の傷も有耶無耶にされ、闇から闇へと葬られたんだ。あれを見て、週刊誌記者の醍醐味を目の当たりにして、一見、中傷するような週刊誌もこういった光の一面があるんだ、と思い知った。

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