第13話 宿
食後に宿屋に向かう。
「ヨルは私と同部屋でもいいですか?」
そう聞いてくるノエル。
「俺は別にいいけど、ってそれ聞くのは俺じゃない?」
同部屋にしようとしているのか知らないけどノエルは聞かれる側だと思うんだよな。
(男として女の子とひとつ屋根の下というのはいい事だろうから、男は気にしないと思うんだよな)
「わ、私は気になりませんよ?」
そう言ってノエルは宿の中に入っていった。
「ここも数十年前から変わってないですねー」
エントランスに入ってそんなことを口にしているノエル。
(ほんとにおばあちゃんなんだな)
そう思いながらノエルの後をついて行く。
彼女はエントランスの受付の列に並んだ。
俺も横に立って待つ。
こういうのってふたりで並ぶ必要ないよなっていうのは思うけど。
俺だけ並ばないというのもイメージが悪いだろうと思って並ぶけどさ。
そうして並んでいたときだった。
俺たちの順番が回ってきてノエルが部屋の料金表を見て口を開いた。
「このファーストルーム借りれますか?」
彼女は一番高いっぽい部屋の話をしていた。
「空いていますがここでよろしいでしょうか?」
「はい!」
ノエルが部屋を借りていた。
それで俺達は部屋に入った。
中はベッドがふたつ会って2人で寝れるような部屋だった。
そうしてベッドにとりあえず座った俺たち。
そこで俺はノエルに質問してみることにした。
「えーっと。詳しいようだから聞きたいんだけど、この世界ってどういう世界なの?」
そう聞くと彼女は説明を始める。
「この世界は異世界グリフォンという世界です」
「グリフォン」
聞いたこともない世界だ。
「そしてこのグリフォンでは戦争が行われています」
「戦争?」
「はい。魔王と呼ばれる存在とそれ以外が戦争を行っているのです。そして人間側ですが、常に戦力不足に悩まされていたのです」
そう言われて察した。
「それでその戦力の補充に使われるのが俺たち異世界人なのか」
「はい。さすがヨルですね。その通りです」
そうして話を続ける彼女。
「現在人間側は大きくわけて4つの大国に9割の人間側住んでいます。ひとつがこのモンテナ大聖堂のあるグリンドル王国、そしてふたつめがあなたが召喚された王国のエルドラ王国、それからシャイニル王国とミンダーラ王国。この4つの大国です」
「ふむ」
「この4つの大国が誰がいちばん最初に魔王を倒せるかで競い合っているのが現状です。ですが災難でしたね」
「なにが?」
「エリスが支配しているエルドラ王国が一番召喚先としてはひどいからです」
そう言われて初日の対応を思い出す。
あれはひどかったな。
開幕
『私が法律です』
だもんな。
あれがこの世界のデフォルトかと思ったがさすがに違うようだ。
だがまぁどのみち俺は自由の身となったわけだ。
「ヨルはこれからどうするつもりなんですか?王国に戻ることを反対していましたが」
そう聞いてくるノエル。
今からそれについて考えようとしていたところだった。
「それについてなんだけどさ。俺は俺でやりたいことがある」
「やりたいこと?」
「あぁ。強くなりたい」
この世界は日本と違って厳しい法律もないようだ。
そしてスキルなんかもある。
つまるところ最終的に頼れるものは自分の強さだと思う。
そうなれば目指すものは見えてくる。
「最強をめざしてみたい。誰にも負けない」
「最強ですか?」
「うん。せっかく【呪詛返し】なんていうスキルがあるわけだしさ、目指してみたいと思う」
長い道のりかもしれない。
でもこの世界だと力は裏切らないと思う。
だから強くなりたい。
そう思った。
それと
「俺が勇者だとバレたらめんどうかもしれない。だから隠そうと思う」
「と言いますと?」
「基本的には目立たないようにいこうと思う」
とは言っても今日の一件で否が応でも目立ったような気もするが……。
まぁそれは置いといてだな。
「呼び方も変えたいと思う。俺のヨルって名前は珍しいでしょ?」
「たしかにあまり聞かない名前ですよねヨルって」
日本でも「夜」なんて名前のやつ他に見た事ないしな。
それは異世界でもそうらしい。
だから少しでもバレないようにして
「俺のことはナイトって呼んでほしい」
「ナイト、ですか?」
「そう。ナイト。名前ももうこっちを名乗ろうと思ってるよ」
安直ではあるけど。
「こっちなら不自然でもないでしょ?」
って聞いてみたが
「そうですね。ナイトっていう名前の人ならたまにいますし、ニックネームでナイトって人もいますので大丈夫だと思います」
って事で俺の名前はナイトになった。
ちなみに俺の夜って名前だけど由来は『夜に生まれたから』それだけの理由で付けられたらしい。
だから俺は両親が好きでは無い。
名前は嫌いじゃないけどね。
よる。
初対面の人も読めて、それでいて絶対忘れられないような名前だから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます