第12話 この世界じゃわりとあること

そうして俺は道を歩いていた。


モンテナ大聖堂というものを目指して歩いていたら。


「カーカー」


グチュグチュ。


カラスが一本の木の下でなにかを突っついているような光景が目に入った。


「あー……」


それを見てノエルさんは良くない顔をした。


「見ない方がよろしいかと」

「死体ってこと?」

「えぇ」


そう答えてくるノエルさんを見てから俺はカラスに目を戻すと。


「メダマウメー」

「ナイゾウモウメー」

「オマイラニンゲンガキタゾ。タイサン」

「カーカー」


カラスはバサバサと飛んで行った。


あとに残されたのは確かに死体。

しかも


「あれって……」


タッタッタッ。

駆け寄って死体の横にしゃがみこんだ。


「生田……なのか?」


目はなくなって頬もほとんど食われてとんでもなくグロい姿になっている生田が見つかった。


なんで生田だって分かったかと言うと


(この制服にこの金髪は間違いないよな)


ドサッ。

生田の体が横に倒れた。


「……」


思わず顔が歪んだ。


特に関係があったわけじゃないが、それでも同じ学校のやつがこうなってると思うところはある。


まさか、こいつが一番最初に死ぬことになるとはな。


「知り合いですか?」

「いや、知り合いじゃないけど」


(よくないもん見ちゃったな)


そう呟いて俺は生田に向かって合掌した。

嫌いな奴だったけど、こいつも言ってしまえばエリスの被害者だからな。


「ご愁傷さま」


今まで生死とかそんなこと考えてなかったけど、この世界じゃ普通に人って死ぬんだな。

とつぜん。


そのことで俺の気はいっそう引き締まった。


「ん?」


その時だった。


「なんだこれ」


生田の手に紙が握られていたのが見えた。


カサカサ。

手に握られていたものを取ってみる。


「スマホか」


電源は入ってないがちょうどいいところに指がある。


「借りるぞ指」


まだ指は食われてなくて指紋のロック解除が使えた。


カチャッ。

開くスマホの画面。


そのまま設定アプリを開き生田の指を駆使しながら俺の指紋を登録しといた。

ついでにパスコードなども変更しておく。


いちおう、ね。


指紋だけで十分だろうけど。



「よし」


頷いてポケットにスマホをしまった。

自分のスマホはカバンに入れたままで今は持ってない。


てか


(魔法で焼かれて魔法で水浸しになってまだ動くってスマホってすげぇよな)


そう思いながら俺はさらに生田の体を漁った。



モバイルバッテリー5。

財布。


(モバイルバッテリー持ちすぎだろ。まぁありがたいけど)


色々見つかったのでぜんぶ貰っておくことにする。


日本じゃ盗難とかなんかで違法だろうがここの法律はエリス様らしいので大丈夫だろう。


それらを回収してからノエルさんに目を向けた。


「いこっか」


「はい」


そうして歩きながらスマホを見て見た。

アンテナは立ってない。


残念だ。


そうして歩いているとだんだんとモンテナ大聖堂が近くなってくる。

そしてその国に着いた。


国の中に入って俺はノエルさんに言う。


「お腹すいたな、そろそろ」


ぐ〜。

一気に緊張が解けたせいか腹の虫が鳴った。


そういえば、あの洞窟にいれられてから飲み食いしてない。

極度の緊張でそれらを感じなかった。


でも今はちょっと安心できる環境だから急にその2つが襲いかかってきた。


喉はカラッカラだしお腹もすごく減ってる。


「そうですね。私も蘇り記念になにか食べたいです」


そう言ってアイテムポーチを取りだしたノエルさん。

その中からお金を取り出した。


「よかったー。ちゃんとお金引き継げてます。なにか食べましょうか」

「あ、ありがとうございます」


どうやらおごってくれるらしい。


ありがたい話だ。

それと、そうだな。

この世界のお金もどうにかしなとな。


そう思いながら俺はノエルさんと共に近くの酒場へと向かうことになった。



【メニュー表】


・モンテナチャーハン

・モンテナラーメン



みたいな名前の食事がズラーっと並んでた。


(なんなんだ……このよく分からないご飯は)


まぁいいや。なんでも試しだとは思うけど。


「おすすめとかありますか?」


そう聞いてみるとノエルさんが答えた。


「うん。えーっと。このワイバーン肉を使った焼き鳥。私は好きですよ」


(へー。そういうのもあるんだな)


焼き鳥か。

それなら馴染み深いし、ここは頼んでみようかな。


そうやって給仕に注文を通してから俺に話しかけてくるノエルさん。


「あ、そういえばなんですけど」

「ん?」

「私の事ノエルさんって呼んでますけどノエルでいいですよ。それと話し方も気を使わなくていいですよ」

「え?で、でも」

「あなたは私の命の恩人ですから。ほんとうに気を使わないでください。こっちが気を使っちゃいますから」


そう言われて俺も口を開いた。


「じゃあ俺のこともヨルでいいよ」


そう言うとノエルがうなずいた。


「はい。ではヨルとお呼びします」


そう言われてジーン。

となんか感動してしまった。


「どうかしましたか?」

「あ、いや。女の子に名前呼ばれたの初めてだから」

「女の子?私がですか?」


そう聞かれてうなずいた。


「あー。見た目ではそうなのかもしれませんね」

「見た目?」

「私こう見えて100年以上は生きてますから。割とおばあちゃんですよ?」


カチャン。

驚いて手に持っていたクシを落としてしまった。


「え?ひゃ、100年?」

「はい。死んでた時期も合わせたらもう少し生きて(?)ますけどね。あ、死んでた時期はノーカンでもいいですか?」


(ん、あー。死んでた時期はさすがにノーカンでいいんじゃないんすか?)


頭がよく分からんことになってしまっていた。


【死んでた時期】とかいうパワーワード。


俺は多分もう聞くことはないと思う。




口に合うかどうか心配だったけど食事はおいしかった。


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