第11話 エリスとの再会だが

ザッザッ。


歩いてエリスは俺に近寄ってくる。


「どのようにしてこのケガレ洞窟を抜けたのかは分かりませんが、さすがはSランク勇者様ですね」


にこっ。


笑顔を浮かべるエリス。


飛び切りの笑顔。

俺たち以外の誰にも見せたことの無い笑顔だった。


「ダンジョンの踏破おめでとうございます。信じておりましたよ。えぇ。あなたなら必ずやこのダンジョンを踏破すると」


急に俺のキゲンを取ろうとしているエリス。


(何が目的だ?)

「お迎えにあがりましたよ。さぁ、帰りましょう勇者様」


そう言って俺に手を差し伸ばしてくるエリス。


その手を見つめた。


「あなたはSランク勇者としてふさわしい逸材です。さぁ、他の勇者様も待っていますよ」


あいつらのところに帰る、か。


「ないな」


それに俺はすでに死んでる扱いだろ。


「俺はこのまま好きに生きさせてもらう」


ここでエリスと揉め事を起こすのは得策じゃないだろう。


だから黙って俺はノエルさんを連れてこの場所を離れようと思った。


さいわいエリスは俺がどうやってここを抜けたかなんて知らないだろうし


「それにしてもまさかケガレ洞窟で生き残りがいたなんて。勇者様。その女に骨抜きにされてはいけませんよ」


そう言ってエリスはノエルさんを見ていた。


「あそこに向かうのは大罪人ばかりです。その女も大罪人です。勇者様にどんな危害を加えるか分かったものではありません」

「俺をここに送ったあんたがそれ言うの?」


ピキっ。


エリスの顔が引きつっていた。


(口が滑った。にしてもほんとに煽り耐性低いなこの人)


「勇者様。最後のチャンスです。もう一度言います。私と来てください」

「だから、悪いけど行かないよ」


そう言うとエリスの顔から色が消えた。


「分かりました。そう言うのでしたらあなたを殺すことにします」


そして杖を持ち出したエリス。


(だめだこいつ。頭のネジが飛びまくってて話し合いができない)


「その女もろとも焼き殺してさしあげましょう。私ってなんて慈悲深いのでしょうか。愛するふたりをいっしょに焼いてあげるなんて」


【ファイア】

【ファイア】

【ファイア】

【ファイア】

【ファイア】



エリスが何度も何度もファイアを唱える。


そして出来上がったのは直径10メートルくらいの巨大な火の玉。


「私はブチギレておりますよ勇者様。最後のチャンスです。戻ってくる気はありませんか?これを放ったが最後、すべてを焼き付くしますわよ?この魔法は。森1個消えるかもしれません。私はこの世界で一番素晴らしい魔法使いなのです」


「ヨルさん」


手を出そうとしていたノエルだがあんなもの俺のスキル以外でどうにもできないだろう。


(最後にひとつ。煽りを加えておこう。跳ね返した時中途半端な威力でこいつを殺せなかった時が一番やばい)


「エリスさん。そんなちっちゃな火の玉で何をどうするつもり?ケガレ洞窟のモンスター以下だよ?何を殺すつもりでいるの?虫?」


案の定ブチ切れた。


【ライズ】

【ライズ】

【ライズ】


さらに強化魔法を重ねがけしたエリス。


「灰も残らずに死ね。コモン勇者ごときが私に歯向かいやがって。誰の慈悲で生きていられたのかよく考えろ」


そのまま魔法を発動させた。生田の顔を焼いた何倍もの大きさの炎が飛んできた。


勝ちを確信したのか俺に背を向けるエリス。


「地獄の業火に焼かれて死ね。マヌケが。魔法界の王に歯向かいやがって」


俺は迫り来る火の玉に手を伸ばして。


はじき返す!


【呪詛返しに成功しました】


「扱いやすくて助かったよエリスさん。お前は強いんだろうけど実力を過信しすぎたな」


ものすごい勢いで跳ね返る火の玉。


そこでやっとエリスは振り返って、その顔が真っ青になる。


「え?な、なんで?や、やばっ、ど、どうしようこれ。だ、だれかおしえて、こんなの知らな」


それはすぐにエリスの体に当たった。


ボウン!


凄まじい爆発音がして炎の中でエリスが即座に灰になるのが見えた。


「だから足元を掬われるんだよ。自分以外をゴミと見るその傲慢さがアダとなったな。どうだ?コモン勇者に足元を救われた気分は」


それから俺はノエルさんに目を戻した。


「騒ぎになる前に行こう」

「は、はい」


エリスがとんでもない魔法を放ったせいで予想以上の威力になった【ファイア】


それはどんどん森を焼いていくのだった。

そうやって焼かれる森の中を俺はノエルさんと走っていった。


「はぁ……はぁ……」


膝に両手を着いて肩で息をした。


で、改めて思ってた。


(はね返せたぞ……)


自分の手を見てぐっと拳を握りしめた。


エリスの魔法だってはね返せた。


これで確信した。


(俺にはね返せないものは無い)


あとはそうだな。


(この能力について、悟られてはいけない)


この能力は諸刃の剣。


能力について知られてはゴミになるし、知られていない状況なら最強格のスキル。


(慎重に動かないとな)


そうして俺は移動を開始した。

これから向かうべき場所をとりあえずノエルさんに相談してみよう。


「どこへ行けばいいだろうか?」


スっ。

ノエルさんが指を指した。


そこにあったのは


「あれはモンテナ大聖堂というものです」


そうして指さされた場所にあったのは明らかな人工物だった。


なるほど。あそこにいけば人がいる、ということか。


そう思い俺たちは歩き出す。


「とりあえずさ、なにか食べたいよね」


今まで極限の状態だったから気にならなかったけどお腹がすいてる。

あそこにいってなにか食べよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る